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後始末
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小隊の皆は、戻った俺に冷静に言った。
「あれはないぜ、フィー」
「砂で目つぶしって……俺なら怒りますね」
「誰だって怒るぜ。賭けたっていい」
「いいじゃないですか!戦場ではある事ですよ!それで怒る兵士はいません!」
「まあね。フィー隊長らしいと言えばらしいかもしれませんわね」
「ちょっと待てよ。お前ら俺の事どう思ってるの?ねえ?」
どうにか勝ったというのに、しかも命からがらだったというのに、酷い。
イリシャは笑いながら近付いて来て、俺に、
「今から弟殿がロウガンの王だな!」
と言った。
そう言えばそんな事を言っていたような気も……。
「ああ、いや、俺はロスウェルの人間だから」
「おめでとう!即位式は派手にやるか!わはははは!」
「聞けよ!」
その向こうで、クラレスが金切り声を上げてグラスを地面に叩きつけているのが見えた。
「冗談じゃないわ!何でよ!王妃だとずっと好きな事できると思ったのに!
あ。あんたの姉だから関係ないか」
と、俺を見てニンマリと笑う。冗談じゃないのは俺のセリフだ!
「だから、俺はロスウェルの――あ」
思い付いてポンと手を打つ俺に、皆が注目する。
「あ?」
ルイスがキョトンとして訊く。
「命令すればいいか。これからロウガンは民主国家になり、議会制をとるって」
背後の一般人達が、キョトンとする。
俺は官僚に向かって笑いながら、肩をポンと叩いた。
「その辺はよろしく。餅は餅屋ってね」
泣きながら喜んでいた官僚は、白目を剥いて失神した。
1ヶ月後には、ロウガンは民主国家に生まれ変わり、力では何も解決できないようになった。代表者の選挙も行われ、国際的にもそれを宣言した。
そして俺達は、ミシェルの前でハリスの紅茶を飲んでいた。
ああ、久しぶりな上に問題が解決して、実に美味しい。
「無事に済んで良かったよ。てんてこ舞いだったうちの役人たちには申し訳なかったけどね」
ミシェルが溜め息をついて言った。
「本当にフィーは、何と言うか……」
「俺のせいじゃないよね。こじつけみたいにパールメント案件って振って来るのが問題でしょう?」
それにミシェルは苦笑を浮かべた。
「まあね。領土問題は解決したし、ロウガンの民主化で、まあ、変な人が選挙で国家元首に選ばれない限りは大丈夫そうだし。うん。上手く収めたよ。そこはね」
言い、澄ました顔で紅茶を飲むイリシャを見る。
「何で彼がここにいるのかがわからないんだけど」
俺も真面目な顔で言う。
「俺もわからない」
するとイリシャは笑った。
「お前の近くにいると退屈しなさそうだからな!亡命して、軍に入った!独立小隊に入りたいと言えば、1発OKだったぞ!」
それに、ゼルがボソリと言った。
「そりゃあこの隊は問題児の寄せ集めだからな。嫌だって言ってもこの隊になったろうよ。賭けたっていいぜ」
ガイが、また苦労が増えたと言いたげに溜め息をついた。
「でも、クラレスが修道院に戻ったとはねえ」
ルイスが言うと、ローゼンが頷いて言う。
「ロウガンに残っても、民衆は憎しみを向けて来るだけだし、ただの無職で即生活に困るしな。大人しくロスウェルの兵に捕まったよ」
「もう逃がさないようにしてくれないと」
「その点は気を付けるように言ってあるよ。
とにかく、お疲れ様だったね、皆」
これで皆は、ほっと緊張感を解いた。
「で、フィー。次の案件なんだけど」
「はあ!?」
素早く、ハリスがカップを遠ざけた。
「領地の事も放ったらかしなんですけど!?」
「まあまあ」
「まあまあじゃねえよ!」
「わはははは!やっぱり俺の目に狂いは無かった!」
「……フィー。不憫なやつだな、本当に」
そしてまた、悪徳令嬢クラレスの流れ弾が、飛んで来た。
「あれはないぜ、フィー」
「砂で目つぶしって……俺なら怒りますね」
「誰だって怒るぜ。賭けたっていい」
「いいじゃないですか!戦場ではある事ですよ!それで怒る兵士はいません!」
「まあね。フィー隊長らしいと言えばらしいかもしれませんわね」
「ちょっと待てよ。お前ら俺の事どう思ってるの?ねえ?」
どうにか勝ったというのに、しかも命からがらだったというのに、酷い。
イリシャは笑いながら近付いて来て、俺に、
「今から弟殿がロウガンの王だな!」
と言った。
そう言えばそんな事を言っていたような気も……。
「ああ、いや、俺はロスウェルの人間だから」
「おめでとう!即位式は派手にやるか!わはははは!」
「聞けよ!」
その向こうで、クラレスが金切り声を上げてグラスを地面に叩きつけているのが見えた。
「冗談じゃないわ!何でよ!王妃だとずっと好きな事できると思ったのに!
あ。あんたの姉だから関係ないか」
と、俺を見てニンマリと笑う。冗談じゃないのは俺のセリフだ!
「だから、俺はロスウェルの――あ」
思い付いてポンと手を打つ俺に、皆が注目する。
「あ?」
ルイスがキョトンとして訊く。
「命令すればいいか。これからロウガンは民主国家になり、議会制をとるって」
背後の一般人達が、キョトンとする。
俺は官僚に向かって笑いながら、肩をポンと叩いた。
「その辺はよろしく。餅は餅屋ってね」
泣きながら喜んでいた官僚は、白目を剥いて失神した。
1ヶ月後には、ロウガンは民主国家に生まれ変わり、力では何も解決できないようになった。代表者の選挙も行われ、国際的にもそれを宣言した。
そして俺達は、ミシェルの前でハリスの紅茶を飲んでいた。
ああ、久しぶりな上に問題が解決して、実に美味しい。
「無事に済んで良かったよ。てんてこ舞いだったうちの役人たちには申し訳なかったけどね」
ミシェルが溜め息をついて言った。
「本当にフィーは、何と言うか……」
「俺のせいじゃないよね。こじつけみたいにパールメント案件って振って来るのが問題でしょう?」
それにミシェルは苦笑を浮かべた。
「まあね。領土問題は解決したし、ロウガンの民主化で、まあ、変な人が選挙で国家元首に選ばれない限りは大丈夫そうだし。うん。上手く収めたよ。そこはね」
言い、澄ました顔で紅茶を飲むイリシャを見る。
「何で彼がここにいるのかがわからないんだけど」
俺も真面目な顔で言う。
「俺もわからない」
するとイリシャは笑った。
「お前の近くにいると退屈しなさそうだからな!亡命して、軍に入った!独立小隊に入りたいと言えば、1発OKだったぞ!」
それに、ゼルがボソリと言った。
「そりゃあこの隊は問題児の寄せ集めだからな。嫌だって言ってもこの隊になったろうよ。賭けたっていいぜ」
ガイが、また苦労が増えたと言いたげに溜め息をついた。
「でも、クラレスが修道院に戻ったとはねえ」
ルイスが言うと、ローゼンが頷いて言う。
「ロウガンに残っても、民衆は憎しみを向けて来るだけだし、ただの無職で即生活に困るしな。大人しくロスウェルの兵に捕まったよ」
「もう逃がさないようにしてくれないと」
「その点は気を付けるように言ってあるよ。
とにかく、お疲れ様だったね、皆」
これで皆は、ほっと緊張感を解いた。
「で、フィー。次の案件なんだけど」
「はあ!?」
素早く、ハリスがカップを遠ざけた。
「領地の事も放ったらかしなんですけど!?」
「まあまあ」
「まあまあじゃねえよ!」
「わはははは!やっぱり俺の目に狂いは無かった!」
「……フィー。不憫なやつだな、本当に」
そしてまた、悪徳令嬢クラレスの流れ弾が、飛んで来た。
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