悪役令嬢の流れ弾をくらって貧乏クジを引く――俺達愉快なはみ出し者小隊

JUN

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問題アリの領地

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 城に呼ばれて国王陛下から正式に領地を任され、ほろりと涙が出そうになった。
 決してうれし涙ではない。
 従軍期間が残っている事もあるし、領民が疲弊しきっている事もあるので、税金は、俺が従軍期間を終える年まで免除となった。
 とは言え、その後はどうしようかと、今から頭が痛い。
「国に治める税はかなり安いんだろ?」
 気楽にルイスが言うが、なぜ安いか考えろ。
「取れないのがわかっているから安いんだ」
「あ、そうだったな」
 領主館の執務室で、俺は溜め息を連発していた。
 まずは領地へ行き、準備を整えろ、という配慮だ。小隊の皆は、護衛兼サポートという名目だ。
「農産物は、領民が食べるだけで精一杯ですかね」
 ガイが思い出しながら言った。
「何か特産物はないのか?」
 ルイスが言いながらも、なかったな、という顔をしている。
「レジャー施設はどうです、フィー隊長」
 ゼルが提案する。
「レジャー施設?」
「大掛かりなカジノですよ!酒場と娼館も作って置けば、ガッポガッポ客は金を落としてくれやすぜ」
「あまりにも僻地すぎないか?」
 ルイスが言って、ガイも頷き、俺は嘆息した。
 領主館の中を見回って来たリタとマリアが戻って来て、開口一番言った。
「この前はやたらと立派だったのに、まるで別の建物みたいになってますのね」
「あはは。最低限のものだけ残して、売れるものは全部売ったからね!」
「質実剛健でいいと思います、フィー隊長!」
「客も来そうにないし、まあ、応接室と念のための客室1室さえちゃんとしていればいいだろう」
「これからフィーはここに泊まるんだろ?寝具は?」
「屋根があるだけいいじゃないか。演習中と思えば楽勝だ。テントを張る手間が省ける」
「留守中の領地の管理は誰に任せるんですか。代官を募集したのに、誰も応募してきませんでしたからね」
「近所の自治会長に持ち回りで頼もうかと思って」
「……大丈夫か?」
「どうせ今は徴税もないし、各々が生活を立て直すのが一番だろ。やる事無いだろ」
「いや、あるよ。あるだろ。きっとあるはずだぜ、フィー」
 ルイスが言うが、数年の猶予期間のうちは、生活の安定をはかればいいだろ。
 でも、その後はどうしよう。
「まあ、農地改革を相談しようと思って、ハンスに声はかけてあるからな。ありがたい事に引き受けてくれたよ」
 ハンス・エリンザ。今の陛下の甥にあたるが、農地改革に人生をかける気のいいやつだ。
「まあ、明日からは領内を回って、視察と領主就任のあいさつをするから、その間に何かないか考えるよ」
 そして俺達は、寝袋を並べて執務室で寝た。

 どこへ行っても、
「新しく領主になったサフィール・レ・パールメントです」
と言えば、警戒されるか諦めきった顔で返事をされるかがほとんどだ。
 盗賊団のメンバーも、元領民は村に戻り、傭兵や領兵もここで働く事を懲役としている。
「治安はどうなんだろう」
「どこも貧乏すぎて、襲っても無駄だとわかってるから、意外といい」
 ここを知る傭兵が案内役についていて、教えてくれた。
「泥棒さえも寄り付かないって……」
 悲しくなるな。
「作物を育てるのは向いてないらしいが、まあ、税金が免除なら、2年ほどで暮らしは楽になるでしょうよ、農家も」
「そうしたら、商人か。何かないかな」
 言いながら馬車に乗り込む。
「そう言えば、この馬車あんまり揺れないのね」
 ロタが不思議そうに言う。
「ああ。尻が割れそうになるもんなのによ。流石は、領主様の馬車ってか」
 ゼルの言葉に俺は笑い出した。
「これは俺が改造したからだよ。言っただろ。学校でそういう研究室に所属してたって」
 その途端、皆が一斉に俺を見た。
「儲け話があるじゃねえか!」
「え?こんなものが?」
「貴族だって商人だって欲しがりますぜ!」
「ここに買いに来させる。そして、泊まらせる。
 宿屋だ!娼館だ!」
「適当な土産物が何かあれば、軽い気持ちで買って帰るんじゃないですか、フィー隊長」
「では土産物の開発と宿屋の整備と改造する技術者の養成ですね!」
「何とかなる、かな?」
 落ち込んでいるばかりではなく、光が差し込み始めた。ような気がした。
 プロジェクトは動き出した。

 が、新たな問題が持ち上がるのだが、それはまだ、誰も知らない事だったのである。



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