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悲しい真実
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納屋に閉じこもり、隙間から外を窺いつつ、交代で仮眠を取った。
この納屋は、税金を集めている建物の斜め向かいにあった。ちょうどいいので、頼み込んで、貸してもらっている。
「なあ、フィー。ローズを疑ってるのか」
ルイスが訊くが、俺は見張り当番なので、ルイスの顔を見る事ができない。なので、どんな表情をしているのかわからなかった。
「ローズというか、商隊を、だな」
それで俺は、そのままの体勢で、理由を説明した。
「明け方に1人で、危険と予測されているのにそちらに素手で近付いて行くのはやっぱり不自然だ。
それに、人質に取られたローズを追って行ったというけど、念入りに蹄の痕を踏み荒らして追跡の邪魔をしたようにしか見えない。
あと、商隊なら、祭りに合わせて来るのが普通で、祭りの前に町に来て出て行くのは、タイミングがおかしい。
それと、商隊の商品が軽そうな生活品の割に、馬車がいやに頑丈で、重いんだよ。轍が深すぎる」
ルイスは
「はあ?轍?そんなもん見てたのかよ」
と呆れたように言った。
「勿論だ。揺れの少ない馬車を考えていたせいか、気になるんだよ」
ルイスはちょっと笑って、頭を振った。
「それと、ここに商隊が来た。余程儲かる筈のほかの町に行かず、徴収がまだで、軍隊が近くにいない、このノフォークスに」
ルイスは頭をガリガリと掻いて、はあ、と溜め息をついた。
「可愛い子だったのになあ。俺も女運が悪い。フィーのがうつったのかな――いや、フィーは運が全体的に悪いな、うん」
「おい」
ルイスは声を潜めながら笑った。
と、税金を置いてある建物に、誰かが近付いて来た。
「ローズとリリーだ」
それで皆が、緊張する。
人通りの途絶えた未明の暗がりの中、彼女らは建物の扉に近付くと、しゃがみ込んで何かをしていた。恐らく、ピッキングだろう。
やがて2人は立ち上がり、道端に立った。
そのまま少し待つと、町の入り口の方から30騎ばかりが近付いて来て、ローズとリリーのところで馬を降りると、建物の中へと入って行った。
「よし、行こう」
「はい」
俺達は外に出ると、建物を封鎖するように扉の前に立った。
「何で!?」
誰かがそう言って息を呑んだ。
「そこまでだ!大人しく縛につけ!」
「くそう!」
そこから乱闘になった。
が、ガイやルイス、ロタ、マリア、ゼルの敵ではない。多少強い者がいても、彼らはバカみたいに強いからだ。
俺は普通よりちょっとましくらいだ。たぶん。
馬で乗りつけて来た集団と、襲って来た商隊のメンバー達を無力化した。
そしてルイスは、硬い表情のローズと向き合った。
「外れていて欲しかったのに……」
「騙したんですね」
ローズのそばでは、リリーがこちらを思い切り睨みつけている。
町の住人達も何事かと起き出し、外に出て来た。
「残念だよ」
ルイスが肩を落とすが、ガイ、ロタ、マリア、ゼルは、手順通りに武器を取り上げ、拘束して行く。
「何よ!あたしたちだってしたくてしてるんじゃないわよ!全部領主が――いえ、パールメントが悪いのよ!!」
その叫びに、ルイスの心情を気遣っていた俺は、それどころじゃなくなって目を見開いた。
「何、それ!?」
ここでもまさかのパールメントか!?どこまで、どこまで――!
膝から崩れそうになった俺に、ショックを受けていた筈のルイスまでもが、
「大丈夫か?」
と気遣ってくれた。
「詳しくは、連行してから聞こう。聞くのが怖いけど……」
俺は力なく笑い、脳裏に浮かんだ高笑いをするクラレスを恨んだ。
この納屋は、税金を集めている建物の斜め向かいにあった。ちょうどいいので、頼み込んで、貸してもらっている。
「なあ、フィー。ローズを疑ってるのか」
ルイスが訊くが、俺は見張り当番なので、ルイスの顔を見る事ができない。なので、どんな表情をしているのかわからなかった。
「ローズというか、商隊を、だな」
それで俺は、そのままの体勢で、理由を説明した。
「明け方に1人で、危険と予測されているのにそちらに素手で近付いて行くのはやっぱり不自然だ。
それに、人質に取られたローズを追って行ったというけど、念入りに蹄の痕を踏み荒らして追跡の邪魔をしたようにしか見えない。
あと、商隊なら、祭りに合わせて来るのが普通で、祭りの前に町に来て出て行くのは、タイミングがおかしい。
それと、商隊の商品が軽そうな生活品の割に、馬車がいやに頑丈で、重いんだよ。轍が深すぎる」
ルイスは
「はあ?轍?そんなもん見てたのかよ」
と呆れたように言った。
「勿論だ。揺れの少ない馬車を考えていたせいか、気になるんだよ」
ルイスはちょっと笑って、頭を振った。
「それと、ここに商隊が来た。余程儲かる筈のほかの町に行かず、徴収がまだで、軍隊が近くにいない、このノフォークスに」
ルイスは頭をガリガリと掻いて、はあ、と溜め息をついた。
「可愛い子だったのになあ。俺も女運が悪い。フィーのがうつったのかな――いや、フィーは運が全体的に悪いな、うん」
「おい」
ルイスは声を潜めながら笑った。
と、税金を置いてある建物に、誰かが近付いて来た。
「ローズとリリーだ」
それで皆が、緊張する。
人通りの途絶えた未明の暗がりの中、彼女らは建物の扉に近付くと、しゃがみ込んで何かをしていた。恐らく、ピッキングだろう。
やがて2人は立ち上がり、道端に立った。
そのまま少し待つと、町の入り口の方から30騎ばかりが近付いて来て、ローズとリリーのところで馬を降りると、建物の中へと入って行った。
「よし、行こう」
「はい」
俺達は外に出ると、建物を封鎖するように扉の前に立った。
「何で!?」
誰かがそう言って息を呑んだ。
「そこまでだ!大人しく縛につけ!」
「くそう!」
そこから乱闘になった。
が、ガイやルイス、ロタ、マリア、ゼルの敵ではない。多少強い者がいても、彼らはバカみたいに強いからだ。
俺は普通よりちょっとましくらいだ。たぶん。
馬で乗りつけて来た集団と、襲って来た商隊のメンバー達を無力化した。
そしてルイスは、硬い表情のローズと向き合った。
「外れていて欲しかったのに……」
「騙したんですね」
ローズのそばでは、リリーがこちらを思い切り睨みつけている。
町の住人達も何事かと起き出し、外に出て来た。
「残念だよ」
ルイスが肩を落とすが、ガイ、ロタ、マリア、ゼルは、手順通りに武器を取り上げ、拘束して行く。
「何よ!あたしたちだってしたくてしてるんじゃないわよ!全部領主が――いえ、パールメントが悪いのよ!!」
その叫びに、ルイスの心情を気遣っていた俺は、それどころじゃなくなって目を見開いた。
「何、それ!?」
ここでもまさかのパールメントか!?どこまで、どこまで――!
膝から崩れそうになった俺に、ショックを受けていた筈のルイスまでもが、
「大丈夫か?」
と気遣ってくれた。
「詳しくは、連行してから聞こう。聞くのが怖いけど……」
俺は力なく笑い、脳裏に浮かんだ高笑いをするクラレスを恨んだ。
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