悪役令嬢の流れ弾をくらって貧乏クジを引く――俺達愉快なはみ出し者小隊

JUN

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策略への策略

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 足跡などが残っていないか探しながら歩き、自分の痕跡が残らないように歩く。勿論、音を立てないように、大きく動かないように。
 神経を使って、なかなかに疲れる。
 休憩に入った時、小枝を折らないように気を付けながら座り、ほっと息をついた。
「これ、新人が任される仕事じゃないな」
 言うと、ゼルはヘッと笑った。
「そんな深い事は考えてもねえんじゃ?フィー隊長とルイス副隊長憎しでしょうよ。賭けますかい?」
「冗談じゃねえよな。もし見つかったら殺されるか捕まるかだろ?ベテランがいるからここまで何とかなってるけどさ」
 ルイスが言うのに、ぼんやりとした考えが浮かぶ。
「なあ。本当に上は、俺達が偵察を完遂できると思ってるのかな?」
 全員が俺の顔を見た。
「フィー隊長。自信を無くすのはわかるけど、新人なんてそんなものよ」
 優しくロタが慰めてくれる。
 が、そういう意味じゃない。
「いや、そうじゃなくて。偵察じゃない役目を持たされてるって事は無いかな?小隊を組んで日も浅い上に俺とルイスは新人だ。しかも、実戦形式でしごかれた新人じゃなく、指揮官養成コースの。
 見つかる事を期待されてないか?」
 何とも言えない沈黙が落ちた。
「死んで来いと?そこまで……あんまりだ……!」
 ルイスがガックリと肩を落とすが、ガイが口を開いた。
「フィー隊長は、我々が囮ではないかと?」
「そう。見つかって逃げかえって来る俺達を、奴らが追って来る。それが目当てだったりしないか?つまり、囮」
 全員、しばらく考え込んだ。
「それなら最初から、そういう風に慣れた部隊にやらせればいいんじゃないか?」
「いや、ベテランのクセにって事になるのを恐れたのかも。それなら、普通にバレそうな部隊にやらせりゃいい」
 ガイが言うと、ロタが笑いながら言う。
「失敗を前提としてなんて、失礼ねえ」
「それで死ぬかも知れんのにか?そんな事をするか?」
 ゼルは懐疑的だ。
「あり得るだろうな。嫌がらせと一石二鳥の良い手だ。成功すれば、それはそれでいい」
 悔しそうに褒めるのはマリアだ。
「どうする?何か、ギャフンと言わせてやる方法はないか?」
 ルイスが言い、俺は考えながら言う。
「例えば、追って来た奴らを返り討ちにして大打撃を与えるとか?」
「そんな上手い方法ねえよ。賭けたっていいぜ」
 それで皆、真剣に考え始めた。
「何か考え付けよ、フィー」
「無茶言うなよ。
 あ。川があったな」
 ガイが、ピンと来たように目を輝かせた。

 基地の中でふんぞり返っている高官達は、給仕付きのコース仕立ての昼食を終え、コーヒーで一服していた。
「まだ狼煙は上がらんのか」
「は!まだ奴らは見つかっていないのか、救援信号を上げる間もなく壊滅したのかの、どちらかでしょうな」
「それなりの腕の古参兵も付いている。壊滅はないだろう。
 上がり次第、急襲させるように準備を怠るなよ」
「は!」
 敵と一緒に混乱の中で戦死させたい気は満々だ。しかし、各家や商店への補償や商品代金の未払いが多すぎて、経済的に問題が大きすぎるからと国が一旦立て替えている。それを国に返金していくという形でフィーが返す事になっているので、その「パールメント係」であるミシェル皇太子から、「死なせるなよ」と言われている。
 返済額は国家予算数年分らしいので、一生馬車馬のように働いても、返せるとは思えないが。
 まあ、借金にアップアップするのを見るのも楽しいかも知れん。
 司令官はそう思って、笑いを浮かべた。





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