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ドキドキ
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俺と采真は、探索終了後、ルイスとエマと一緒に食事をしていた。
エマから、妨害を受けてるそうだけど大丈夫か、と連絡が来て、食事がてら、あった事を説明したのだ。
「そんな事が?なんというか、せこいな」
ルイスが呆れた。エマも呆れ果て、肩を竦めた。
「まるで子供ね。
それ、本部に訴えたらどうかしら」
探索者協会は各迷宮のそばにあるが、それを統括する本部がスイスにある。
「未成年者の保護とか尤もらしい事を言いそうだけど、メーカーに、所属してる探索者に意見を訊かせた時点でおかしいよな」
「ビル、焦り過ぎだぜ」
俺達は言いながら笑ったが、ルイスとエマは真剣な顔で言った。
「気をつけた方がいいぞ。自分の所とスポンサー契約しているチームが初踏破すれば、売れ行きが大きく変わる。ブライトンがこれで妨害を諦めたとは思えない」
「それに、マイクのチームは悪い噂が多いわ。それも、デマなんかじゃなく、本当の事みたいよ」
魔獣と間違えたとかいう言い訳で誤射された事を思い出す。
「気を付けます」
「そうだな。あいつは油断ならないぜ」
「ハリーだって、全くのいい人って信用し過ぎるなよ。一応軍は除隊してるが、つながってるという話も聞く。アメリカの威信にかけて何とかしろとか言われたら、わからないぞ」
ルイスが心配そうに言うと、エマも頷く。
「そうよ。あそこは何かあっても捜査の手が入らない所よ。ああ」
「エマ」
事故を思い出したように頭を振るエマを、そっとルイスが気遣って肩を叩く。
「おお。わかったぞ」
「だろ?」
見つめ合うエマとルイスは、ハッとしたように咳払いし、取り繕った。
「ええっと、何かな?」
「何でもない。でも、あれだな」
「ああ。このケーキ、食べても食べても減らないのはどうしてだ?」
アメリカのケーキはバカでかすぎた。
そのルイスとエマの忠告は、ありがたく頭の隅に置いて、俺達は探索に望んだ。
3チームが、抜きつ抜かれつという感じで進んでいる。
「ピョンピョンピョンピョンと!元気過ぎるだろ、お前ら!」
言いながら采真も、ピョンピョンと飛びながらピューマの亜種のような魔獣を斬り捨てて行く。
相手は風の刃を放って来るが、上手く采真はかわすし、俺が火を放てばよく燃える。
終わって、采真に言う。
「器用だな。空中で三段跳びか?」
「へへへ。カッコいいかと思って。
な、カッコいい?どう?」
「カッコいい、カッコいい。わあ、采真君素敵ー」
「照れるぜ、鳴海ちゃん。
なんでここに女の子がいないんだろうなあ」
ぶつぶつ言いながらも、魔石をボディバッグに放り込み、次に進む。
「わ。何だ、これ」
細い通路の両側が切り立った崖になっていて、下まで20メートルかそこらはある。そして前方はその通路が途切れ、向こう側の通路までの20メートル程の間に、転々と岩が点在している。
この小さな足場とも言えない程度の岩の頭を、跳んで、渡るしかなさそうだ。
「あの、片足がやっと乗るくらいの面積しかない岩を、跳び伝って行くのか?」
「だな。ロープとかがあれば、もう少し安全に行けるだろうけど?」
「行こうぜ!」
「わかった。
こういう時のドキドキが、恋だと錯覚を起こすらしいぞ」
「つくづく、何でここにかわいい女の子がいねえの?」
采真は言いながらも、岩を跳び始めた。
俺もその後を追う。
と、俺達は真ん中あたりで止まる羽目になった。
「マイクだぜ」
前方に、ニヤニヤとしたマイクが姿を現したのだ。隣にいるチームメイトは、杖をこちらに向けている。魔術士らしい。
背後を見れば、そこにも隠れていたらしいマイクのチームメイトの魔術士が、杖をこちらに向けて立っていた。
「鳴海。このドキドキは錯覚じゃないよな」
「ああ。間違いなく、ピンチのドキドキだな」
逃げ場がなかった。
エマから、妨害を受けてるそうだけど大丈夫か、と連絡が来て、食事がてら、あった事を説明したのだ。
「そんな事が?なんというか、せこいな」
ルイスが呆れた。エマも呆れ果て、肩を竦めた。
「まるで子供ね。
それ、本部に訴えたらどうかしら」
探索者協会は各迷宮のそばにあるが、それを統括する本部がスイスにある。
「未成年者の保護とか尤もらしい事を言いそうだけど、メーカーに、所属してる探索者に意見を訊かせた時点でおかしいよな」
「ビル、焦り過ぎだぜ」
俺達は言いながら笑ったが、ルイスとエマは真剣な顔で言った。
「気をつけた方がいいぞ。自分の所とスポンサー契約しているチームが初踏破すれば、売れ行きが大きく変わる。ブライトンがこれで妨害を諦めたとは思えない」
「それに、マイクのチームは悪い噂が多いわ。それも、デマなんかじゃなく、本当の事みたいよ」
魔獣と間違えたとかいう言い訳で誤射された事を思い出す。
「気を付けます」
「そうだな。あいつは油断ならないぜ」
「ハリーだって、全くのいい人って信用し過ぎるなよ。一応軍は除隊してるが、つながってるという話も聞く。アメリカの威信にかけて何とかしろとか言われたら、わからないぞ」
ルイスが心配そうに言うと、エマも頷く。
「そうよ。あそこは何かあっても捜査の手が入らない所よ。ああ」
「エマ」
事故を思い出したように頭を振るエマを、そっとルイスが気遣って肩を叩く。
「おお。わかったぞ」
「だろ?」
見つめ合うエマとルイスは、ハッとしたように咳払いし、取り繕った。
「ええっと、何かな?」
「何でもない。でも、あれだな」
「ああ。このケーキ、食べても食べても減らないのはどうしてだ?」
アメリカのケーキはバカでかすぎた。
そのルイスとエマの忠告は、ありがたく頭の隅に置いて、俺達は探索に望んだ。
3チームが、抜きつ抜かれつという感じで進んでいる。
「ピョンピョンピョンピョンと!元気過ぎるだろ、お前ら!」
言いながら采真も、ピョンピョンと飛びながらピューマの亜種のような魔獣を斬り捨てて行く。
相手は風の刃を放って来るが、上手く采真はかわすし、俺が火を放てばよく燃える。
終わって、采真に言う。
「器用だな。空中で三段跳びか?」
「へへへ。カッコいいかと思って。
な、カッコいい?どう?」
「カッコいい、カッコいい。わあ、采真君素敵ー」
「照れるぜ、鳴海ちゃん。
なんでここに女の子がいないんだろうなあ」
ぶつぶつ言いながらも、魔石をボディバッグに放り込み、次に進む。
「わ。何だ、これ」
細い通路の両側が切り立った崖になっていて、下まで20メートルかそこらはある。そして前方はその通路が途切れ、向こう側の通路までの20メートル程の間に、転々と岩が点在している。
この小さな足場とも言えない程度の岩の頭を、跳んで、渡るしかなさそうだ。
「あの、片足がやっと乗るくらいの面積しかない岩を、跳び伝って行くのか?」
「だな。ロープとかがあれば、もう少し安全に行けるだろうけど?」
「行こうぜ!」
「わかった。
こういう時のドキドキが、恋だと錯覚を起こすらしいぞ」
「つくづく、何でここにかわいい女の子がいねえの?」
采真は言いながらも、岩を跳び始めた。
俺もその後を追う。
と、俺達は真ん中あたりで止まる羽目になった。
「マイクだぜ」
前方に、ニヤニヤとしたマイクが姿を現したのだ。隣にいるチームメイトは、杖をこちらに向けている。魔術士らしい。
背後を見れば、そこにも隠れていたらしいマイクのチームメイトの魔術士が、杖をこちらに向けて立っていた。
「鳴海。このドキドキは錯覚じゃないよな」
「ああ。間違いなく、ピンチのドキドキだな」
逃げ場がなかった。
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