オーバーゲート

JUN

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最深部探索組3チーム

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 休憩中だという彼らに混じって、俺達も休憩する事にした。
 今日のおやつは、たい焼きだ。
「美味!俺はカスタードが一番だぜ」
「俺はやっぱり粒あんだな。飽きが来ない安定の美味しさだろう?」
「あんこな!あんこもいいなあ」
 視線を感じる。
「ええっと、これはたい焼きと言って――」
「食い物の説明は求めてねえよ」
 マイクが睨みながら言うが、視線がたい焼きに……まあ、いいか。
「たい焼き。日本に行った時に食べた事があるな」
 ハリーのチームの1人が言うと、もう1人がうんうんと頷き、
「俺は、たこ焼き。
 たこ焼きにはたこが入ってたけど、それにはたいの身が入っているのか?」
と、興味津々な目を向けて来る。
「いや、形がタイなだけですよ。中味はあんことかチョコレート、カスタードクリーム、色々あります。あと、タピオカ粉を使って焼いた、白いたい焼きっていうのもありますね」
 それで彼らは、
「たいは形だけか」
「イカ焼きはイカの丸焼きだったよな、確か」
「いや、大阪では、平べったくて薄い生地に刻んだいかが入っている食べ物だった」
などと言い始めた。
 日本の食べ物にここまで関心を持ってもらえて、何か嬉しい。
 と、マイクが深々と溜め息をつき、ハリーが苦笑した。
「そろそろ行くぞお前ら!」
「ういっす」
 マイク達は立ち上がり、次へと進んで行った。
「10分したら俺達も行く」
「はい!」
 ハリー達も表情を引き締め、準備にかかった。

 そして、俺達の順が回って来た。
 マイクは戻って来ていないので、この階層を抜けたのだろう。
 しかし、ハリー達は後退して来た。軽いケガをしたメンバーがいたようで、今日はこのままおしまいにするらしい。
「行くか」
「おう!」
 俺達は次の階に足を踏み入れた。
 暗く、曲がりくねった洞窟のような通路が続く。そこに所々脇道や窪みがあり、そこから魔獣が飛び出して来たりする。
 オオカミの群れにぶつかり、倒した後だった。
「機動力や連携して来るところはちょっと鬱陶しいけど、何か楽だったな」
「通路が狭いから、前後を注意するだけでいいからな」
「あ、そうか。そう言えばそうだな!」
「その分、武器を振り回すと仲間に当たりかねないけど」
「どっちが楽なんだろうなあ」
 言いながら、牙を切り取り、魔石を拾う。
 その時、魔力がこちらに放射されて来た。
 それを即無効化すると、別人からも来たので、それも無効化し、盾を展開する。
 と、向こうからマイクが現れた。
「ああ、悪い悪い。魔獣と間違えたわ」
 采真がムッとし、堪えた。
「へえ?」
 マイク達は涼しい顔で踵を返し、奥へ歩いて行った。
「鳴海、どうする?」
「報告したところで、どうにもならないだろうな。
 でも、あいつらと一緒になるのは危険かもな。タイミングをずらすか」
「そうだな。魔獣以外に人間にも気を付けるなんて、ストレスたまるぜ」
 俺達は戻り、エレベーターで上へ戻った。
 そして協会へ行くと、買取の順番待ちをしていたらしいハリーが、こちらを見てホッとしたような顔をした。
 やはり、あれはマイクに気を付けろという警告だったらしい。
「大丈夫だったようだな」
「はい。
 そちらも、ケガは?」
「大丈夫だ。どうするか決めたのか」
 俺達は少し考えた。
「録画しておこうかと思うのと、できれば、向こうとは違う時間帯に行った方がいいかとも」
「そうだよな。あんな誤射、あるわけがねえもん」
 采真は口を尖らせた。
「それでも、後から来られると一緒だ。気を付ける事だ。2人なんだからな」
「はい。ありがとうございます」
 それでハリー達の順番が来て、ハリー達はカウンターへと歩いて行った。
 その時、マイク達がロビーに入って来た。
 ケガをして、回復させたという感じだ。
 3チームが視線を絡ませ、ピリピリとした空気が漂う。それに、居合わせた探索者達が、首を竦めるようにして落ち着かなさそうにしている。
「最深階に3グループが揃ったか」
 誰かが小声で言うのがやけに響き、マイクの眉がキュッと寄る。
 そして、この男も不機嫌そうに溜め息をついた。
 支部長のビルだ。
「そうか」
 ビルが、「おもしろくない」という感情も露わに言った。
 そして、ロビー入り口にも、カイトがいた。こちらは秘書とボディーガードらしき男を連れて、涼しい顔で、にこにことしている。
「鳴海。何か、面倒臭い予感がするぜ」
「俺もだ。もう今日は、焼肉食べて寝よう」
 ゲートのこちら側には、うんざりする事が多すぎる。


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