81 / 89
追いつく
しおりを挟む
俺達はせっせと探索を続けた。
ここは、体を横にして通らないといけないような細い通路や、落ちたら死ぬような断崖もある。そこで襲って来るのが、コウモリの魔獣だったり、ジャンプ力が凄いカコミスルやオオカミの魔獣だったりして、なかなか刺激的だ。
今通り抜けようとしている所もそんなところで、細い通路の片側が切り立った崖の壁で、そこからは、崖を自由に駆け回る事の出来る魔獣が飛び掛かって来る。
そしてもう片側は同じく崖で、足を踏み外せば下の川へ落ちる。
「じゃあ、行くか」
「おう!いつでもOKだぜ!」
それで、俺達は飛び出した。
崖の上から降りて来て飛び掛かって来る魔獣は、早い目早い目に、魔術で跳ね飛ばし、切り飛ばす。そして前から飛び掛かって来る魔獣は、采真が斬り飛ばして突き進む。
得意不得意のあるチームメンバーでも、相手によってカバーし合えば何とかなる、という類の所ではなく、個人がそこそこできなければ渡り切れないという場所のようだ。
渡り切ってから足を止め、振り返る。
「回収は無理だな」
「ああ、欲を出したら死ぬぜ」
「次に進もう」
崖の上や通路の上からこちらを見て唸っている彼らを見て、俺達は前を向いた。
「俺、子供の頃犬を飼いたかったんだ。あいつら、エサやったら、懐くかな、鳴海」
「無理じゃないか。『お手』とか言って手を差し出したら噛まれそうだぞ」
「まあ、そうかな」
采真は少し残念そうだ。
道はそこで広がり、しゃがみ込んで休憩する探索者がいた。
「お疲れーっす」
「お先にー」
一応挨拶をして、先に行く。
と、小部屋になっていた。
入った途端、背後でゴゴゴと音がして、通路が岩で塞がれる。
「ここがこの階のラストみたいだな、鳴海!」
「らしいな。どこから何が出て来るか」
部屋の向こうに岩山があり、床は一面、凹凸のある岩肌だ。
その岩山の天辺に、大きな角のある羊のような魔獣が現れた。そして、上空から、殺気が迫る。
剣と魔銃剣を振れば、切られたペリカンが落下し、ジタバタもがいてから動かなくなった。
上を見ると、天井がペリカンの魔獣でいっぱいだった。
「こいつら、丸呑みしてくちばしの下の袋の所で溶かすらしいぞ」
「うわあ。でも、逃げられないのか」
「その液が麻痺を引き起こすらしい。
暑くても、泳ごうとか考えるなよ。あと、服が溶けてラッキーとかいうのも無いからな」
「男2人じゃなあ」
采真が本気で残念そうに言って、それで俺達は前へ出た。
俺はペリカンの魔獣を燃やし、風でバランスを崩させて引きずり落とし、切る。采真は、手の届く距離に入ったやつを、片っ端から斬って行く。
それほどかからずに、ペリカンはいなくなった。
後は、1体だけだ。
「でっかい角!」
「あれが凶器だぞ。それと、脚力と蹄も凄いと思う」
「わかったぜ!」
「来た!」
ボスは、ドドドと岩山を駆け下りると、ピョーンと飛んだ。
そのボスに、滞空中に風を浴びせ、火を浴びせる。
「風はバランスを崩す程度で、火には弱いか」
「ジンギスカンになるからじゃねえ?」
その言い分に腹を立てたのかどうかは知らないが、頭を低くして、走って突っ込んで来る。そのスピードの速い事!
パッと左右に分かれて避けると、毛に焦げ目をつけた俺が憎いのか、俺をロックオンして追って来る。
角を魔銃剣で受け、抑え込むと、采真が走り込んできて、首を落とすように斬りつけた。
嫌がるように頭を振りたがり、足を踏み鳴らし、采真を蹴ろうと躍起になる。
「切れ味が悪いぜ!」
言って、剣を目に突き立てると、ボスは激しく抵抗するように動き回ろうとする。そして、角を一旦下げ、思い切り振り上げた。
「うわっ!」
それで俺は、空中に放り上げられる。
「鳴海!?」
が、そこから、火を数発撃ち込む。
「うわ、丸焼きだぜ」
着地した俺とボスの間に、既に入っている采真が言う。
炎をまとったボスが、踊るように飛び跳ねている。
が、すぐに倒れて僅かな痙攣をするのみとなった。
大きな角と魔石をボディバッグに入れて部屋を出る。
「何か今の匂いで、焼肉食いたくなったぜ」
「焼肉か。いいな。
あ、でも、ローストビーフもその内食べたい」
「ああ、あれもいいなあ。ローストビーフサンドとか。前に鳴海の母ちゃんが作ってくれたやつ」
「美味かったよな」
言いながら角を曲がり、ギョッと足を止める。
そこで、ハリーのチームとマイクのチームが両方休憩中だったらしく、各々飲み物や軽食を持って、こちらを見ていた。
「うおっ!?」
「えっと、お疲れ様です」
その視線にややたじろぎながら、俺達はそこに近付いた。
マイクがチッと舌打ちをし、顔を歪めて言う。
「もう追いついて来やがったのかよ」
仲間の1人は呆れたように、
「アレの後で、焼肉とかローストビーフとか。余裕だな」
と言うので、采真が笑って言った。
「いやあ、焼いたらいい匂いがしたもんで」
それに、ハリーが肩を竦めて言う。
「ここが現在の最深部だ。おめでとう。とうとうトップに並んだな。流石に早い」
ああ、この2チームがいるって事は、そうだな。
面倒臭いな。
同じ事を考えたらしい采真と顔を見合わせ、俺達は苦笑を浮かべた。
ここは、体を横にして通らないといけないような細い通路や、落ちたら死ぬような断崖もある。そこで襲って来るのが、コウモリの魔獣だったり、ジャンプ力が凄いカコミスルやオオカミの魔獣だったりして、なかなか刺激的だ。
今通り抜けようとしている所もそんなところで、細い通路の片側が切り立った崖の壁で、そこからは、崖を自由に駆け回る事の出来る魔獣が飛び掛かって来る。
そしてもう片側は同じく崖で、足を踏み外せば下の川へ落ちる。
「じゃあ、行くか」
「おう!いつでもOKだぜ!」
それで、俺達は飛び出した。
崖の上から降りて来て飛び掛かって来る魔獣は、早い目早い目に、魔術で跳ね飛ばし、切り飛ばす。そして前から飛び掛かって来る魔獣は、采真が斬り飛ばして突き進む。
得意不得意のあるチームメンバーでも、相手によってカバーし合えば何とかなる、という類の所ではなく、個人がそこそこできなければ渡り切れないという場所のようだ。
渡り切ってから足を止め、振り返る。
「回収は無理だな」
「ああ、欲を出したら死ぬぜ」
「次に進もう」
崖の上や通路の上からこちらを見て唸っている彼らを見て、俺達は前を向いた。
「俺、子供の頃犬を飼いたかったんだ。あいつら、エサやったら、懐くかな、鳴海」
「無理じゃないか。『お手』とか言って手を差し出したら噛まれそうだぞ」
「まあ、そうかな」
采真は少し残念そうだ。
道はそこで広がり、しゃがみ込んで休憩する探索者がいた。
「お疲れーっす」
「お先にー」
一応挨拶をして、先に行く。
と、小部屋になっていた。
入った途端、背後でゴゴゴと音がして、通路が岩で塞がれる。
「ここがこの階のラストみたいだな、鳴海!」
「らしいな。どこから何が出て来るか」
部屋の向こうに岩山があり、床は一面、凹凸のある岩肌だ。
その岩山の天辺に、大きな角のある羊のような魔獣が現れた。そして、上空から、殺気が迫る。
剣と魔銃剣を振れば、切られたペリカンが落下し、ジタバタもがいてから動かなくなった。
上を見ると、天井がペリカンの魔獣でいっぱいだった。
「こいつら、丸呑みしてくちばしの下の袋の所で溶かすらしいぞ」
「うわあ。でも、逃げられないのか」
「その液が麻痺を引き起こすらしい。
暑くても、泳ごうとか考えるなよ。あと、服が溶けてラッキーとかいうのも無いからな」
「男2人じゃなあ」
采真が本気で残念そうに言って、それで俺達は前へ出た。
俺はペリカンの魔獣を燃やし、風でバランスを崩させて引きずり落とし、切る。采真は、手の届く距離に入ったやつを、片っ端から斬って行く。
それほどかからずに、ペリカンはいなくなった。
後は、1体だけだ。
「でっかい角!」
「あれが凶器だぞ。それと、脚力と蹄も凄いと思う」
「わかったぜ!」
「来た!」
ボスは、ドドドと岩山を駆け下りると、ピョーンと飛んだ。
そのボスに、滞空中に風を浴びせ、火を浴びせる。
「風はバランスを崩す程度で、火には弱いか」
「ジンギスカンになるからじゃねえ?」
その言い分に腹を立てたのかどうかは知らないが、頭を低くして、走って突っ込んで来る。そのスピードの速い事!
パッと左右に分かれて避けると、毛に焦げ目をつけた俺が憎いのか、俺をロックオンして追って来る。
角を魔銃剣で受け、抑え込むと、采真が走り込んできて、首を落とすように斬りつけた。
嫌がるように頭を振りたがり、足を踏み鳴らし、采真を蹴ろうと躍起になる。
「切れ味が悪いぜ!」
言って、剣を目に突き立てると、ボスは激しく抵抗するように動き回ろうとする。そして、角を一旦下げ、思い切り振り上げた。
「うわっ!」
それで俺は、空中に放り上げられる。
「鳴海!?」
が、そこから、火を数発撃ち込む。
「うわ、丸焼きだぜ」
着地した俺とボスの間に、既に入っている采真が言う。
炎をまとったボスが、踊るように飛び跳ねている。
が、すぐに倒れて僅かな痙攣をするのみとなった。
大きな角と魔石をボディバッグに入れて部屋を出る。
「何か今の匂いで、焼肉食いたくなったぜ」
「焼肉か。いいな。
あ、でも、ローストビーフもその内食べたい」
「ああ、あれもいいなあ。ローストビーフサンドとか。前に鳴海の母ちゃんが作ってくれたやつ」
「美味かったよな」
言いながら角を曲がり、ギョッと足を止める。
そこで、ハリーのチームとマイクのチームが両方休憩中だったらしく、各々飲み物や軽食を持って、こちらを見ていた。
「うおっ!?」
「えっと、お疲れ様です」
その視線にややたじろぎながら、俺達はそこに近付いた。
マイクがチッと舌打ちをし、顔を歪めて言う。
「もう追いついて来やがったのかよ」
仲間の1人は呆れたように、
「アレの後で、焼肉とかローストビーフとか。余裕だな」
と言うので、采真が笑って言った。
「いやあ、焼いたらいい匂いがしたもんで」
それに、ハリーが肩を竦めて言う。
「ここが現在の最深部だ。おめでとう。とうとうトップに並んだな。流石に早い」
ああ、この2チームがいるって事は、そうだな。
面倒臭いな。
同じ事を考えたらしい采真と顔を見合わせ、俺達は苦笑を浮かべた。
0
お気に入りに追加
11
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
異世界でお取り寄せ生活
マーチ・メイ
ファンタジー
異世界の魔力不足を補うため、年に数人が魔法を貰い渡り人として渡っていく、そんな世界である日、日本で普通に働いていた橋沼桜が選ばれた。
突然のことに驚く桜だったが、魔法を貰えると知りすぐさま快諾。
貰った魔法は、昔食べて美味しかったチョコレートをまた食べたいがためのお取り寄せ魔法。
意気揚々と異世界へ旅立ち、そして桜の異世界生活が始まる。
貰った魔法を満喫しつつ、異世界で知り合った人達と緩く、のんびりと異世界生活を楽しんでいたら、取り寄せ魔法でとんでもないことが起こり……!?
そんな感じの話です。
のんびり緩い話が好きな人向け、恋愛要素は皆無です。
※小説家になろう、カクヨムでも同時掲載しております。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/horror.png?id=d742d2f035dd0b8efefe)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
悪役令嬢に転生したので、ゲームを無視して自由に生きる。私にしか使えない植物を操る魔法で、食べ物の心配は無いのでスローライフを満喫します。
向原 行人
ファンタジー
死にかけた拍子に前世の記憶が蘇り……どハマりしていた恋愛ゲーム『ときめきメイト』の世界に居ると気付く。
それだけならまだしも、私の名前がルーシーって、思いっきり悪役令嬢じゃない!
しかもルーシーは魔法学園卒業後に、誰とも結ばれる事なく、辺境に飛ばされて孤独な上に苦労する事が分かっている。
……あ、だったら、辺境に飛ばされた後、苦労せずに生きていけるスキルを学園に居る内に習得しておけば良いじゃない。
魔法学園で起こる恋愛イベントを全て無視して、生きていく為のスキルを習得して……と思ったら、いきなりゲームに無かった魔法が使えるようになってしまった。
木から木へと瞬間移動出来るようになったので、学園に通いながら、辺境に飛ばされた後のスローライフの練習をしていたんだけど……自由なスローライフが楽し過ぎるっ!
※第○話:主人公視点
挿話○:タイトルに書かれたキャラの視点
となります。
平凡冒険者のスローライフ
上田なごむ
ファンタジー
26歳独身動物好きの主人公大和希は、神様によって魔物・魔法・獣人等ファンタジーな世界観の異世界に転移させられる。
平凡な能力値、野望など抱いていない彼は、冒険者としてスローライフを目標に日々を過ごしていく。
果たして、彼を待ち受ける出会いや試練は如何なるものか……
ファンタジー世界に向き合う、平凡な冒険者の物語。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
偽物の侯爵子息は平民落ちのうえに国外追放を言い渡されたので自由に生きる。え?帰ってきてくれ?それは無理というもの
つくも茄子
ファンタジー
サビオ・パッツィーニは、魔術師の家系である名門侯爵家の次男に生まれながら魔力鑑定で『魔力無し』の判定を受けてしまう。魔力がない代わりにずば抜けて優れた頭脳を持つサビオに家族は温かく見守っていた。そんなある日、サビオが侯爵家の人間でない事が判明した。妖精の取り換えっ子だと神官は告げる。本物は家族によく似た天使のような美少年。こうしてサビオは「王家と侯爵家を謀った罪人」として国外追放されてしまった。
隣国でギルド登録したサビオは「黒曜」というギルド名で第二の人生を歩んでいく。
外れギフト魔石抜き取りの奇跡!〜スライムからの黄金ルート!婚約破棄されましたのでもうお貴族様は嫌です〜
KeyBow
ファンタジー
この世界では、数千年前に突如現れた魔物が人々の生活に脅威をもたらしている。中世を舞台にした典型的なファンタジー世界で、冒険者たちは剣と魔法を駆使してこれらの魔物と戦い、生計を立てている。
人々は15歳の誕生日に神々から加護を授かり、特別なギフトを受け取る。しかし、主人公ロイは【魔石操作】という、死んだ魔物から魔石を抜き取るという外れギフトを授かる。このギフトのために、彼は婚約者に見放され、父親に家を追放される。
運命に翻弄されながらも、ロイは冒険者ギルドの解体所部門で働き始める。そこで彼は、生きている魔物から魔石を抜き取る能力を発見し、これまでの外れギフトが実は隠された力を秘めていたことを知る。
ロイはこの新たな力を使い、自分の運命を切り開くことができるのか?外れギフトを当りギフトに変え、チートスキルを手に入れた彼の物語が始まる。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
男爵家の厄介者は賢者と呼ばれる
暇野無学
ファンタジー
魔法もスキルも授からなかったが、他人の魔法は俺のもの。な~んちゃって。
授けの儀で授かったのは魔法やスキルじゃなかった。神父様には読めなかったが、俺には馴染みの文字だが魔法とは違う。転移した世界は優しくない世界、殺される前に授かったものを利用して逃げ出す算段をする。魔法でないものを利用して魔法を使い熟し、やがては無敵の魔法使いになる。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
称号チートで異世界ハッピーライフ!~お願いしたスキルよりも女神様からもらった称号がチートすぎて無双状態です~
しらかめこう
ファンタジー
「これ、スキルよりも称号の方がチートじゃね?」
病により急死した主人公、突然現れた女神によって異世界へと転生することに?!
女神から様々なスキルを授かったが、それよりも想像以上の効果があったチート称号によって超ハイスピードで強くなっていく。
そして気づいた時にはすでに世界最強になっていた!?
そんな主人公の新しい人生が平穏であるはずもなく、行く先々で様々な面倒ごとに巻き込まれてしまう...?!
しかし、この世界で出会った友や愛するヒロインたちとの幸せで平穏な生活を手に入れるためにどんな無理難題がやってこようと最強の力で無双する!主人公たちが平穏なハッピーエンドに辿り着くまでの壮大な物語。
異世界転生の王道を行く最強無双劇!!!
ときにのんびり!そしてシリアス。楽しい異世界ライフのスタートだ!!
小説家になろう、カクヨム等、各種投稿サイトにて連載中。毎週金・土・日の18時ごろに最新話を投稿予定!!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる