オーバーゲート

JUN

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緊張の邂逅

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 翌日、ルイスに安心できる不動産屋へ連れて行ってもらい、首尾よく俺達は、マンションの1室を借りる事ができた。
 そこに転移石を設置する。
 今回は、グレイというタイプの宇宙人の人形だ。25センチほどの高さのプラスチックでできたもので、100円均一で買って来た。
 それから、探索に赴いた。
 出て来る魔獣は、最初のうちは他と一緒だ。それに内部も、長い洞窟という感じで、まだ今のところはそう目新しさはない。
 なので、変化の出始める辺りまではさっさと進む事にして、狩って来た。
「明日はどんな奴が出るかな、鳴海ちゃん」
「美味しい奴がいいな。けど鳴海ちゃんはやめろ」
 言いながらエレベーターで1階入り口に戻ると、隣のエレベーターでグループが戻って来たので何となくお互いを見た。
 ガタイのいい探索者6人組で、剣や杖や盾などの違いはあるし、ウェアの色も違うが、皆同じメーカーの装備品を身に着けていた。そして中の1人は、防水の大きなリュックを背負っていた。討伐証明部位や魔石なんかを入れているんだろう。
 そして一様に、疲れた顔をしていた。
「あ。霜村鳴海と音無采真」
 中の1人がポツンと呟くと、リーダーらしい男が、足を止めて俺達をジロジロと見た。
「本当に子供なんだな」
 失礼なやつだ。まあ、確かに未成年だけどな。
「あ、ハリー・ポーリング!元アメリカ陸軍の人で、同じ陸軍出身者とチームを組んでる!」
 有名な、アメリカトップ探索者グループの1つだ。人気も高い。
 特にリーダーの彼は、どんな時も冷静で冷酷な笑わない男と言われ、整った顔と共に、ファンが多い。
「采真、さんを付けろ。
 失礼しました。つい、テレビや雑誌で見る憧れの探索者と偶然会えたので」
 采真が改めて頭を下げ、自己紹介しかけた時、背後のエレベーターで新たなグループが戻って来た。
 こちらは5人組で、やはり疲れ切った顔をしているが、俺達とハリーのチームを見ると、威嚇して来た。
「おうおう。ファンのガキにサインでもしてやってんのか?余裕だなあ、おい。
 って、お前らか。チッ」
 俺達を知っているのか、リーダーが舌打ちをした。
 マイク・ヒューイット。彼も仲間達も、ピアスやタトゥーをし、赤や青や緑や紫に髪を染め、一見するとチンピラかファッションで探索をしている人に見える。
 しかしこちらも、アメリカトップ探索者グループだ。こちらもまた、ファンが多い。
 言わばアメリカの探索者ファンの多くは、端正なハリーかワイルドなマイクかのどちらかのファンだ。
「おお!鳴海、アメリカの二大カリスマが睨み合っている緊張の瞬間だぞ」
「写真撮ったら、欲しがる人、多そうだな」
 俺達はワクワクしながら、次はどっちがどう言うのか、どうやって別れるのか、それとも一緒に協会へ行く流れか、と考えていた。
 すると、2人が同時に俺達を見た。
「何、通りすがりの無関係なやつみたいな顔してんだよ。ああ?」
「え。無関係ですよね?」
 俺は驚いて言った。
「君達を今のトップ探索者に、誰でも名前を上げるだろうな。その若さで、踏破1つではなく3つだからな。運や偶然と思う奴はいない。
 君達は自分達の事をわかっていないようだな。くれぐれも、周囲に気を配る事だ」
 マイクに続いてハリーまでもが、眉間に縦じわを刻み込みながら言うので、俺と采真は顔を見合わせた。
「その割に彼女ができないのは何でだ鳴海」
「俺に訊くな」
 マイクはチッと舌打ちし、グループを引き連れて歩き出した。
 それに続いて、ハリー達も歩き出す。
 それを見ていたゲートの外のファンやその辺の探索者達が、こそこそと、
「緊張!」
「一発触発だな」
「トップ3グループが顔を突き合わせるとは……」
「分かり易くマイクは威嚇してたけど、ハリーも内心では焦ってるだろう?」
「さあ、日本のコンビはどう出る?」
 俺と采真は、こそこそと言い合った。
「俺達も協会へ行きたいのに、タイミングに困るな」
「このまま付いて行っていいのか?ロビーに入った途端、注目を浴びそうだぜ」
「知らん顔してよう。それで、遅れて30分後くらいに行こう。
 ああ、でも、どんなのを狩って来たか見たいしなあ」
 それで俺達も、なるべく目立たないように付いて行ったのだ。
 が、翌日の新聞には、3グループが入り口で睨み合うような写真が掲載されていたのだった。





 
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