オーバーゲート

JUN

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研究バカの願い

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 エマの家から車で10分くらいで、そこに着いた。中流階級向けの一戸建て、という感じの家で、庭にはガレージもある。
 そこに車を止め、5つの鍵を開けて、中に入る。
 ダイニングキッチンは、半分実験室となっていた。その向こうのリビングは片付いていたが、3つある部屋は、研究室と資料室と工作室らしい。
「そこのリビングにごろ寝になるけど」
「はい。ありがとうございます」
 荷物を置き、その辺の物をちょっと見た。
「義足に疑似神経を通すんですか?」
「わかった!?魔素を神経線維内を流れる電気信号の代わりにして、それをヒトと接続すれば、元の足のように動かせるんじゃないかと思うんだよ」
「成程。
 接続はどういう風に?」
「うん。魔術士の杖の魔術発動の仕組みを流用できないかな?」
「できなくはないかもしれないけど、それだと魔術士しか使用できないかも。
 しかも、動かすのにずっと魔素を使う事になる」
「そうなんだよねえ。
 それと、使用者との接続もね。どうやってつなぐか。脱着不可能でいいのか」
「破損や成長で取り換えないといけなくなった時、大手術になりますね、直接つなぐと」
「だろ?しかも、下手したら、取り換えの度に足を削る事にもなりかねない」
 俺とルイスは考え込んだ。
 そんな俺達を、采真は面白そうに見ていた。
「お前ら、気が合いそうだなあ。というより、ルイスと鳴海の親父さんが気が合いそうだな」
「ああ、確かに。
 ついでに言うと、伯父さんもだな」
 それに、ルイスは小首を傾げた。
「鳴海のお父さんは霜村博士だよね。伯父さんも研究者を?」
「いえ。武具職人です。海棠アームズっていう」
「一流じゃないか!個人経営だから小さくて作品も少ないけど!」
「ありがとうございます。そう言っていただけると伯父も喜びます」
 それに采真が、
「仏頂面だけどな」
と言い、思わず俺と采真は吹き出した。
「ああ。博士にも意見を頂けたらな。というか、できるのであれば弟子入りしたい。
 ボクは家を出てもいいとしても、彼女はどうか……」
 本気で検討し始めた。
「彼女って、エマ?」
 采真がニヤニヤとする。
「そ、そうだよ。
 エマは元は探索者で、魔術士だった。でも、杖が暴発して、下半身が麻痺する大けがを負ってしまったんだ」
 苦しそうな表情で、声を絞り出す。
 俺も采真も、
「好きなんだろ、ひゅーひゅー」
とは言えない雰囲気になった。
「ボクはどうしても、何としても、彼女を歩けるようにしたい。自己満足でも」
 何かあるのだと丸わかりだ。
 でも、深く訊いてはいけない気もする。
「まあ、ご飯にしようか。冷凍とレトルトだけどね」
 ルイスが言ってその話はそれっきりになったが、ルイスが入浴中に、采真がポツンと言った。
「俺、ルイスとエマを応援するぜ!」
「ん?義足の事か?」
「そっちは俺にわからねえよ。
 でも、2人がくっつくのを応援する」
「ルイスはエマが好きかもと思ったけど、エマはわからないぞ?」
「どう見ても好きだろ」
「え。そうだったか?」
「そうだよ。何でわからないの?」
「いや、わからなかったなあ。え、どこで?どこらへんが?」
「ちょっとした声とか、視線とかさあ」
「そうか?ええ?」
「鳴海ちゃん、頭いいのにそっちはダメだよなあ」
「鳴海ちゃん言うな」



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