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お隣訪問
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俺と采真は、部屋で相談していた。
転移石の設置は当面見送ったが、着替えを取りに行くなど、交代で片方が見張りをしながら使う事でしのいでいた。
そのついでに、伯父にアンの噂が耳に入っていないか、訊いていたのだ。
「アンの防具は丁寧で、注文が殺到しても、手を抜く事無く客を待たせてでもしっかりやる会社だったらしい」
采真は頷いて言う。
「そうだよな。それなのに不具合か」
「不具合の内容がわからないから確かな事は言えないという事だったけど、不具合の発生が韓国のみっていうのが、誰か1人の職人が問題なのかもって言ってた。
もし現物を借りられたら、見てもらった方がいいかもな」
「ああ。海棠さんなら間違いないからな!」
ヒソヒソやっているとメイドが夕食だと告げて来たので、俺達は明日以降、情報収集をしてみようとだけ決めた。
翌日、ソユンが筋肉痛だったので、探索はやめ、軽いストレッチと素振りをさせる事にし、俺達は情報収集に行く事にした。
それと、ソユンが近々行けそうな階は、先に見ておいた方がいいだろう。
「行ってきまあす!」
ソユンが残念そうな目で、ダイニングから見送る。
「いいわね」
「下調べしておいた方が安全だろ?ちゃんと、明日も気が抜けないように、ソユンには言わないでおくから。楽しみにしてろよな」
「鳴海って根性悪いって言われるでしょ!?」
采真がゲラゲラ笑い、メイドが口の端をひくつかせる中、俺達は玄関を出た。
と、隣のドアの前で、今日はドユンとハユンが深刻な顔で何か言い合っていた。
「あ」
お互いに気まずい感じで、挨拶をする。
「あの、ソユンが探索を始めたというのは……」
「昨日から始めたぜ」
采真が答えると、ドユンもハユンも顔を曇らせる。
「ドユン。やっぱり私、ちゃんと言うべきだと思うわ」
「ダメだよ。ソユンが俺を嫌いになるくらいじゃないと」
小声で言い合う2人に、俺達も顔を見合わせた。
「やっぱり訳ありか」
「ますます、韓流ドラマじみて来たぜ」
言っていると、背後でドアが開き、執事が出て来て俺達を見た。
「おはようございます。
アン様。少々お尋ねしたい事とお願いがございまして。お時間、よろしいでしょうか」
それに、俺は言葉を足した。
「ちょうどいい。一緒に話を聞こうか。
采真、探索と情報収集は後だ」
「ほーい」
俺達は揃って、ドユンの家に入った。
ソユンの所とは対称の作りのその部屋は、上質で落ち着いた雰囲気の部屋だった。
ソファにはカラフルなクッションが置いてあるが、それはたぶん、女性が持ち込んだものだろう。そしてそばの飾り棚には写真が飾られているが、それを見ると、ドユンとソユンだった。
「前の別れたフィアンセとのツーショットを恋人の前で飾り続けるほど、無神経な男には見えないけどな」
言うと、慌ててすっ飛んで来たドユンが、それを伏せた。
「手遅れって言うんだぜ」
采真がとどめを刺す。
それで、ハユンが言った。
「もう、言った方がいいわよ。せめてソユンにはまだ言わないようにお願いして」
ドユンは決めかねているようだったが、執事が、
「それは、アングループの倒産に巻き込まないようにというご配慮の事でしょうか」
と言い、それでドユンはガックリと頭を垂れた。
采真が元気付けるように、肩をポンと叩く。
「そうです。防具の不具合から始まって、アングループは、倒産も免れないというところに来ています。そこに、ソユンやイグループを巻き込むわけにはいかないのです」
采真が、
「ああ。ドラマの流れだなあ」
と呟く。
「その辺を詳しく聞かせてもらえませんか。どうも腑に落ちない」
俺は言い、それで皆、リビングのテーブルを囲んで車座に座った。
転移石の設置は当面見送ったが、着替えを取りに行くなど、交代で片方が見張りをしながら使う事でしのいでいた。
そのついでに、伯父にアンの噂が耳に入っていないか、訊いていたのだ。
「アンの防具は丁寧で、注文が殺到しても、手を抜く事無く客を待たせてでもしっかりやる会社だったらしい」
采真は頷いて言う。
「そうだよな。それなのに不具合か」
「不具合の内容がわからないから確かな事は言えないという事だったけど、不具合の発生が韓国のみっていうのが、誰か1人の職人が問題なのかもって言ってた。
もし現物を借りられたら、見てもらった方がいいかもな」
「ああ。海棠さんなら間違いないからな!」
ヒソヒソやっているとメイドが夕食だと告げて来たので、俺達は明日以降、情報収集をしてみようとだけ決めた。
翌日、ソユンが筋肉痛だったので、探索はやめ、軽いストレッチと素振りをさせる事にし、俺達は情報収集に行く事にした。
それと、ソユンが近々行けそうな階は、先に見ておいた方がいいだろう。
「行ってきまあす!」
ソユンが残念そうな目で、ダイニングから見送る。
「いいわね」
「下調べしておいた方が安全だろ?ちゃんと、明日も気が抜けないように、ソユンには言わないでおくから。楽しみにしてろよな」
「鳴海って根性悪いって言われるでしょ!?」
采真がゲラゲラ笑い、メイドが口の端をひくつかせる中、俺達は玄関を出た。
と、隣のドアの前で、今日はドユンとハユンが深刻な顔で何か言い合っていた。
「あ」
お互いに気まずい感じで、挨拶をする。
「あの、ソユンが探索を始めたというのは……」
「昨日から始めたぜ」
采真が答えると、ドユンもハユンも顔を曇らせる。
「ドユン。やっぱり私、ちゃんと言うべきだと思うわ」
「ダメだよ。ソユンが俺を嫌いになるくらいじゃないと」
小声で言い合う2人に、俺達も顔を見合わせた。
「やっぱり訳ありか」
「ますます、韓流ドラマじみて来たぜ」
言っていると、背後でドアが開き、執事が出て来て俺達を見た。
「おはようございます。
アン様。少々お尋ねしたい事とお願いがございまして。お時間、よろしいでしょうか」
それに、俺は言葉を足した。
「ちょうどいい。一緒に話を聞こうか。
采真、探索と情報収集は後だ」
「ほーい」
俺達は揃って、ドユンの家に入った。
ソユンの所とは対称の作りのその部屋は、上質で落ち着いた雰囲気の部屋だった。
ソファにはカラフルなクッションが置いてあるが、それはたぶん、女性が持ち込んだものだろう。そしてそばの飾り棚には写真が飾られているが、それを見ると、ドユンとソユンだった。
「前の別れたフィアンセとのツーショットを恋人の前で飾り続けるほど、無神経な男には見えないけどな」
言うと、慌ててすっ飛んで来たドユンが、それを伏せた。
「手遅れって言うんだぜ」
采真がとどめを刺す。
それで、ハユンが言った。
「もう、言った方がいいわよ。せめてソユンにはまだ言わないようにお願いして」
ドユンは決めかねているようだったが、執事が、
「それは、アングループの倒産に巻き込まないようにというご配慮の事でしょうか」
と言い、それでドユンはガックリと頭を垂れた。
采真が元気付けるように、肩をポンと叩く。
「そうです。防具の不具合から始まって、アングループは、倒産も免れないというところに来ています。そこに、ソユンやイグループを巻き込むわけにはいかないのです」
采真が、
「ああ。ドラマの流れだなあ」
と呟く。
「その辺を詳しく聞かせてもらえませんか。どうも腑に落ちない」
俺は言い、それで皆、リビングのテーブルを囲んで車座に座った。
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