57 / 89
カバとバカ
しおりを挟む
翌日から、俺達は本気で、スピード優先で臨んだ。
牛もサイも熊もいた。蜘蛛もカマキリのお化けも蛾もいた。それを、切り、焼き払い、氷漬けにし、吹き飛ばし、とにかくやりまくった。
食材は、2周目で手に入れればいい。
トリュフという、名前しか知らない高級なやつもあったけどな!
しかしその甲斐あって、グングンと進んで行く。
「あとどのくらいだ?」
「確か、30階くらいだったな」
言いながら、カバの首に風の魔術で斬りつけ、そこから采真が刀を入れて首を落とすと、カバは重量感のある地響きを立てて倒れた。
「カバって意外とやるんだな」
「皮も丈夫だし、なかなか強いしな。
それより采真。6人だ」
「おお。やっと役に立つな、鳴海!」
言われて、念の為にレコーダーを買って持ってはいるのだ。
魔石を拾おうとかがんだ――と見せかけて、背後からの火の玉を盾で弾く。
采真は忍び寄って来た槍使いの穂先を弾いて腹を蹴り飛ばした。
「何のマネだ」
目つきの悪い6人組が、各々の得物を手にして俺達を囲んでいた。
その、リーダーらしき男が、舌打ちして吐き捨てる。
「カンがいいやつめ。
随分と景気がいいじゃねえか。先輩にここは譲ってもらおうかと思ってな」
采真は、
「なあんだ。あはははは!ただのカツアゲだぜ、鳴海!」
と笑った。
俺は嘆息した。
「はあ。面倒臭いな。放置したらまずいよな。時間の無駄だってのに」
それで、彼らが怒りだした。
「ガキが、調子にのるなよ!」
「日本の迷宮を踏破しても、人を殺せるのか?魔獣と人は違うぜ、お坊ちゃん」
「戦争はしない国だもんな」
采真は呆れたように言った。
「レコーダーに記録されてるんだぞ?」
それに、俺は肩を竦めた。
「脅してそれを消す気だろ」
「ああ、気」
「そう、気」
男達は、バカにされているとわかったらしい。
「殺して消してやるよ!お前らは魔獣の餌食になったんだ、ヘッ!」
そう言って、かかって来た。
それを、剣と魔銃剣で応酬する。全員を地に叩き伏せるのに、大して時間はかからなかった。
「はあ。アレとはケタ違いだな」
「魔王と比べるのは気の毒すぎるぜ、鳴海。せめて魔人の三将軍だろ。
まあ、レイもロンドももっと強かったけどさあ」
それに、彼らはギョッとしたように顔を上げた――失神していないやつらだけだったが。
「魔王?魔人?」
「え。知らなかったのか?」
彼らは一瞬黙ってから、叫んだ。
「知ってたら襲うか!」
「それはまた卑怯な」
采真が眉を寄せる。
俺は、笑顔を向けた。
「なあ。殺しにかかってきたんだ。反撃されて殺される覚悟はあったんだよな?」
彼らは青い顔で、ガタガタ震え出した。
彼らを拘束し、俺と采真は彼らの前にしゃがみ込んだ。
「なあ。こっちではこんな事がまかり通ってるのか?」
彼らは目をそらしながら、答えた。
「この程度は、まあ」
「ふうん。
じゃあ、情報の無い魔獣の様子見に、誰かをけしかけたりとかは?」
彼らは瞬きを止め、よそを向いた。
「知らねえな」
「ふうん。
じゃあ、仕方ないな。俺達先を急ぐんで」
俺と采真は立ち上がり、彼らはギョッとしたように俺達を見上げた。
「え?俺達は?」
それに、采真が詰まらなさそうに答える。
「は?知らないね。まあ、魔獣が出ないことを祈るとか?」
「采真、向こうから今の奴と同程度の魔獣が近付いて来るぞ」
「ああ。あれはもういいな。行くか」
歩き出しかけた俺達に、彼らが慌てる。
「待てよ!俺達は拘束されてるんだぞ!?」
「知ってるよ。やったの、俺達だし。
だから?」
言うと、そいつは俺を睨んで声を絞り出した。
「……悪魔か!」
「ああ、懐かしい。よく言われた」
「グウッ――!」
魔力を感知するのが鈍い、或いはできない人でもわかるくらい、気配と振動が近付いて来た。
「わかった!マリオ・ルターのグループは、新人をそれ目的で入れるらしい!酔った時にダチが言ったのを聞いただけだから、本当かどうかは知らない!」
「お、おい!消されるぞ!?」
「今魔獣に殺されるよりは生き残る望みがある!」
「でも、協会の上の方も黙認してるって――!」
内輪揉めし始めた彼らだったが、俺と采真は、ニンマリとした。
そして、姿を現したカバに向かって行った。
「お前らは守ってやる」
「ご褒美だ!」
風と剣で、2分で片付けた。
牛もサイも熊もいた。蜘蛛もカマキリのお化けも蛾もいた。それを、切り、焼き払い、氷漬けにし、吹き飛ばし、とにかくやりまくった。
食材は、2周目で手に入れればいい。
トリュフという、名前しか知らない高級なやつもあったけどな!
しかしその甲斐あって、グングンと進んで行く。
「あとどのくらいだ?」
「確か、30階くらいだったな」
言いながら、カバの首に風の魔術で斬りつけ、そこから采真が刀を入れて首を落とすと、カバは重量感のある地響きを立てて倒れた。
「カバって意外とやるんだな」
「皮も丈夫だし、なかなか強いしな。
それより采真。6人だ」
「おお。やっと役に立つな、鳴海!」
言われて、念の為にレコーダーを買って持ってはいるのだ。
魔石を拾おうとかがんだ――と見せかけて、背後からの火の玉を盾で弾く。
采真は忍び寄って来た槍使いの穂先を弾いて腹を蹴り飛ばした。
「何のマネだ」
目つきの悪い6人組が、各々の得物を手にして俺達を囲んでいた。
その、リーダーらしき男が、舌打ちして吐き捨てる。
「カンがいいやつめ。
随分と景気がいいじゃねえか。先輩にここは譲ってもらおうかと思ってな」
采真は、
「なあんだ。あはははは!ただのカツアゲだぜ、鳴海!」
と笑った。
俺は嘆息した。
「はあ。面倒臭いな。放置したらまずいよな。時間の無駄だってのに」
それで、彼らが怒りだした。
「ガキが、調子にのるなよ!」
「日本の迷宮を踏破しても、人を殺せるのか?魔獣と人は違うぜ、お坊ちゃん」
「戦争はしない国だもんな」
采真は呆れたように言った。
「レコーダーに記録されてるんだぞ?」
それに、俺は肩を竦めた。
「脅してそれを消す気だろ」
「ああ、気」
「そう、気」
男達は、バカにされているとわかったらしい。
「殺して消してやるよ!お前らは魔獣の餌食になったんだ、ヘッ!」
そう言って、かかって来た。
それを、剣と魔銃剣で応酬する。全員を地に叩き伏せるのに、大して時間はかからなかった。
「はあ。アレとはケタ違いだな」
「魔王と比べるのは気の毒すぎるぜ、鳴海。せめて魔人の三将軍だろ。
まあ、レイもロンドももっと強かったけどさあ」
それに、彼らはギョッとしたように顔を上げた――失神していないやつらだけだったが。
「魔王?魔人?」
「え。知らなかったのか?」
彼らは一瞬黙ってから、叫んだ。
「知ってたら襲うか!」
「それはまた卑怯な」
采真が眉を寄せる。
俺は、笑顔を向けた。
「なあ。殺しにかかってきたんだ。反撃されて殺される覚悟はあったんだよな?」
彼らは青い顔で、ガタガタ震え出した。
彼らを拘束し、俺と采真は彼らの前にしゃがみ込んだ。
「なあ。こっちではこんな事がまかり通ってるのか?」
彼らは目をそらしながら、答えた。
「この程度は、まあ」
「ふうん。
じゃあ、情報の無い魔獣の様子見に、誰かをけしかけたりとかは?」
彼らは瞬きを止め、よそを向いた。
「知らねえな」
「ふうん。
じゃあ、仕方ないな。俺達先を急ぐんで」
俺と采真は立ち上がり、彼らはギョッとしたように俺達を見上げた。
「え?俺達は?」
それに、采真が詰まらなさそうに答える。
「は?知らないね。まあ、魔獣が出ないことを祈るとか?」
「采真、向こうから今の奴と同程度の魔獣が近付いて来るぞ」
「ああ。あれはもういいな。行くか」
歩き出しかけた俺達に、彼らが慌てる。
「待てよ!俺達は拘束されてるんだぞ!?」
「知ってるよ。やったの、俺達だし。
だから?」
言うと、そいつは俺を睨んで声を絞り出した。
「……悪魔か!」
「ああ、懐かしい。よく言われた」
「グウッ――!」
魔力を感知するのが鈍い、或いはできない人でもわかるくらい、気配と振動が近付いて来た。
「わかった!マリオ・ルターのグループは、新人をそれ目的で入れるらしい!酔った時にダチが言ったのを聞いただけだから、本当かどうかは知らない!」
「お、おい!消されるぞ!?」
「今魔獣に殺されるよりは生き残る望みがある!」
「でも、協会の上の方も黙認してるって――!」
内輪揉めし始めた彼らだったが、俺と采真は、ニンマリとした。
そして、姿を現したカバに向かって行った。
「お前らは守ってやる」
「ご褒美だ!」
風と剣で、2分で片付けた。
0
お気に入りに追加
11
あなたにおすすめの小説
ひ弱な竜人 ~周りより弱い身体に転生して、たまに面倒くさい事にも出会うけど家族・仲間・植物に囲まれて二度目の人生を楽しんでます~
白黒 キリン
ファンタジー
前世で重度の病人だった少年が、普人と変わらないくらい貧弱な身体に生まれた竜人族の少年ヤーウェルトとして転生する。ひたすらにマイペースに前世で諦めていたささやかな幸せを噛み締め、面倒くさい奴に絡まれたら鋼の精神力と図太い神経と植物の力を借りて圧倒し、面倒事に巻き込まれたら頼れる家族や仲間と植物の力を借りて撃破して、時に周囲を振り回しながら生きていく。
タイトルロゴは美風慶伍 様作で副題無し版です。
小説家になろうでも公開しています。
https://ncode.syosetu.com/n5715cb/
カクヨムでも公開してします。
https://kakuyomu.jp/works/1177354054887026500
●現状あれこれ
・2021/02/21 完結
・2020/12/16 累計1000000ポイント達成
・2020/12/15 300話達成
・2020/10/05 お気に入り700達成
・2020/09/02 累計ポイント900000達成
・2020/04/26 累計ポイント800000達成
・2019/11/16 累計ポイント700000達成
・2019/10/12 200話達成
・2019/08/25 お気に入り登録者数600達成
・2019/06/08 累計ポイント600000達成
・2019/04/20 累計ポイント550000達成
・2019/02/14 累計ポイント500000達成
・2019/02/04 ブックマーク500達成
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
(完結)魔王討伐後にパーティー追放されたFランク魔法剣士は、超レア能力【全スキル】を覚えてゲスすぎる勇者達をザマアしつつ世界を救います
しまうま弁当
ファンタジー
魔王討伐直後にクリードは勇者ライオスからパーティーから出て行けといわれるのだった。クリードはパーティー内ではつねにFランクと呼ばれ戦闘にも参加させてもらえず場美雑言は当たり前でクリードはもう勇者パーティーから出て行きたいと常々考えていたので、いい機会だと思って出て行く事にした。だがラストダンジョンから脱出に必要なリアーの羽はライオス達は分けてくれなかったので、仕方なく一階層づつ上っていく事を決めたのだった。だがなぜか後ろから勇者パーティー内で唯一のヒロインであるミリーが追いかけてきて一緒に脱出しようと言ってくれたのだった。切羽詰まっていると感じたクリードはミリーと一緒に脱出を図ろうとするが、後ろから追いかけてきたメンバーに石にされてしまったのだった。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
【完結】転生少女は異世界でお店を始めたい
梅丸
ファンタジー
せっかく40代目前にして夢だった喫茶店オープンに漕ぎ着けたと言うのに事故に遭い呆気なく命を落としてしまった私。女神様が管理する異世界に転生させてもらい夢を実現するために奮闘するのだが、この世界には無いものが多すぎる! 創造魔法と言う女神様から授かった恩寵と前世の料理レシピを駆使して色々作りながら頑張る私だった。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
俺の娘、チョロインじゃん!
ちゃんこ
ファンタジー
俺、そこそこイケてる男爵(32) 可愛い俺の娘はヒロイン……あれ?
乙女ゲーム? 悪役令嬢? ざまぁ? 何、この情報……?
男爵令嬢が王太子と婚約なんて、あり得なくね?
アホな俺の娘が高位貴族令息たちと仲良しこよしなんて、あり得なくね?
ざまぁされること必至じゃね?
でも、学園入学は来年だ。まだ間に合う。そうだ、隣国に移住しよう……問題ないな、うん!
「おのれぇぇ! 公爵令嬢たる我が娘を断罪するとは! 許さぬぞーっ!」
余裕ぶっこいてたら、おヒゲが素敵な公爵(41)が突進してきた!
え? え? 公爵もゲーム情報キャッチしたの? ぎゃぁぁぁ!
【ヒロインの父親】vs.【悪役令嬢の父親】の戦いが始まる?
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
積みかけアラフォーOL、公爵令嬢に転生したのでやりたいことをやって好きに生きる!
ぽらいと
ファンタジー
アラフォー、バツ2派遣OLが公爵令嬢に転生したので、やりたいことを好きなようにやって過ごす、というほのぼの系の話。
悪役等は一切出てこない、優しい世界のお話です。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
アワセワザ! ~異世界乳幼女と父は、二人で強く生きていく~
eggy
ファンタジー
もと魔狩人《まかりびと》ライナルトは大雪の中、乳飲み子を抱いて村に入った。
村では魔獣や獣に被害を受けることが多く、村人たちが生活と育児に協力する代わりとして、害獣狩りを依頼される。
ライナルトは村人たちの威力の低い攻撃魔法と協力して大剣を振るうことで、害獣狩りに挑む。
しかし年々増加、凶暴化してくる害獣に、低威力の魔法では対処しきれなくなってくる。
まだ赤ん坊の娘イェッタは何処からか降りてくる『知識』に従い、魔法の威力増加、複数合わせた使用法を工夫して、父親を援助しようと考えた。
幼い娘と父親が力を合わせて害獣や強敵に挑む、冒険ファンタジー。
「カクヨム」「小説家になろう」にも掲載しています。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
【完結】平凡な魔法使いですが、国一番の騎士に溺愛されています
空月
ファンタジー
この世界には『善い魔法使い』と『悪い魔法使い』がいる。
『悪い魔法使い』の根絶を掲げるシュターメイア王国の魔法使いフィオラ・クローチェは、ある日魔法の暴発で幼少時の姿になってしまう。こんな姿では仕事もできない――というわけで有給休暇を得たフィオラだったが、一番の友人を自称するルカ=セト騎士団長に、何故かなにくれとなく世話をされることに。
「……おまえがこんなに子ども好きだとは思わなかった」
「いや、俺は子どもが好きなんじゃないよ。君が好きだから、子どもの君もかわいく思うし好きなだけだ」
そんなことを大真面目に言う国一番の騎士に溺愛される、平々凡々な魔法使いのフィオラが、元の姿に戻るまでと、それから。
◆三部完結しました。お付き合いありがとうございました。(2024/4/4)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる