オーバーゲート

JUN

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内股のガキ大将

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 しばし、俺達は各々考え込んだ。
「マリオの、外での評判や、性格がわかるようなエピソードは?」
「あれでも一応は、イタリアのトップの1人だよ。人気は無い事もない。
 でも、同じ探索者からは、ワンマンとか、偉そうだとか、あまり評判はよくないな」
 カルロスが言うと、リタは吐き捨てるように言う。
「おまけに女好きで、見境も無いわ。飽きたら簡単に捨てるし」
「リタもしつこく絡まれてたな。何としても守るから!」
 采真が真剣に言うと、カルロスも、
「リタも気を付けて。腹が立っても、殴ったりしないようにね」
と言い、リタは嫌そうな顔をしていた。
「他には何か?」
 笑いを堪えて訊く。
「そうだなあ。マリオは昔から、ガキ大将だったな。俺の物は俺の物。お前の物も俺の物、みたいな」
「ジャイアンかよ」
 采真が呆れたように言った。
「あと、イタズラとかしても、逃げるのは上手かったよ。だれかのせいにするし、いじめとかも、ハッキリと命令しないでやらせて、自分は関係ないって言い張るんだ。
 その反対に、手柄は自分のものだったね」
「嫌なやつだな」
「でしょう」
「でも、意外と臆病だな。川を飛び越えるとか、幽霊が出そうな空き家に探検に行っても、先に子分を歩かせたりするんだから」
 カルロスが言って思い出し笑いをし、俺も采真もリタも、想像して笑った。
「ビビるジャイアン……ププッ」
「内股になって虚勢を張るとか?」
「プッ!ククク」
 全員がその姿を想像して、爆笑になった。
「今度顔を見た時、思い出して笑ったらどうしよう」
 俺が言うと、采真が、
「それはまずいだろ。そこは堪えて、堪え、プッ。内股で?」
と笑い、また皆で笑い転げた。
 さんざん笑い、リタは涙を拭いた。
「フフン。マリオ、恐るるに足らず!」
「おう!悪の内股ゴリラの罪を暴いてやろうぜ!」
「ププッ!」
 しまらない。
 俺は深呼吸して、言った。
「証拠がないなら、やっぱりあれしかないな。俺達がなるべく急いでマリオの所まで追いつくようにする。それで、マリオにそういう事をされれば、それを記録しておいて、証拠にできる。
 それがあれば、これまでの事も、チラッと聞いた事なんかを思い出すやつがいるかも知れない。何より、それで信用はガタ落ちだ」
「俺達は、ガンガン進めばいいって事だな、鳴海?」
 采真はやる気をみなぎらせた。
「カルロスは、不審な何かが無いか、資料を当たってみてくれ。俺達が探っているとバレれば警戒されるし、こうして会っているのを知られるのも避けたいな」
 采真がガタッと立ち上がった。
「お、お隣さんだから!」
「ん、まあ、その程度ならな。外ではあいさつ程度にしとけ」
 采真はシュンとしたが、
「終わったら、バーベキューでもしましょうか」
とリタが提案したので、分かり易く顔を輝かせた。
「その時は、ウサギとロブスターも捕って来るぜ!」
「鹿とかイノシシとか牛とかもいいな。うん。刈って来よう」
 言うと、カルロスが苦笑した。
「探索者は凄いね」
 無事にバーベキューができる事を、祈るばかりだ。





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