オーバーゲート

JUN

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やはりこうなる

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 目を開くと、支部の医務室だった。
「お、気が付いたか鳴海!」
 采真がそばにいた。
「ええっと?」
「魔王が死んだら魔人達は降伏して、後は向こうで話し合いするんじゃねえかな。
 俺達は取り敢えず回復魔術でケガの手当てをしてもらったんだけど、鳴海は魔力の枯渇で目を覚まさなかったから、運んで来たぜ。
 あと、脳神経に負荷がどうのこうの言ってた」
「いや、そこが知りたい。後遺症とかないのかどうか」
「ええ?専門用語はわからねえしなあ。親父さんに聞いてくれ」
「わかった。
 ん?リトリイは?」
「リトリイか……」
 采真は暗い顔をした。
「まさか」
 俺はドキンとした。
「家出を繰り返したんで、親に叱られて泣きべそかいてた」
「あ……そう……」
 医師の診断を受け、支部長室へ行くように言われた。

 そして、これである。
「正座!?」
「また!?」
「やれ!勝手に突っ込むなと言ったはずだよな!?ああ!?」
 支部長はカンカンになって怒り、報告に来ていたらしき自衛隊の隊長やこの前集まっていたらしき大物の皆様は苦笑を浮かべていた。
「だって、そうでもしないと、なあ、鳴海」
「やられてましたよ、支部長」
「うるさい!同盟を締結してからやればよかったものを!」
「支部長。そういう政治的な嫌らしいやつはわかるけどさあ」
「文句は魔王に言って下さい。死んだけど」
「ああ言えばこう言う!」
 支部長は肩を落とし、誰かが噴き出した。
「まあまあ。それでも向こうの人族とはこの日本が同盟を締結させたし、迷宮の初踏破も日本、魔王の討伐も日本。日本有利には違いないですからね」
 政治家がにこにこしている。
 それに、支部長は少しホッとした顔をのぞかせた。敢えて正座させて怒って見せて、皆の怒りを軽くするというやりかただな。
 と思ったら、支部長が言った。
「良かったな。
 というわけで、これは協会のお仕置きだ。正座!」
 くそっ。やっぱりこうなるのか!?

 俺達のした事はニュースになった。
 そして向こうの世界も、元の領土に戻ったらしい。そして日本人形のところは、日本の大使館になるそうだ。
「どうする、鳴海」
 迷宮は踏破した。世界征服とかいう前時代的な野望を抱くやつもいない。
「向こうの世界をまわるか?」
「俺はそれでもいいけどよ。鳴海、専門の勉強とか興味あるんじゃねえの?本当は」
 采真がチラッとこっちを見て、口を尖らせて言う。
 いや、あのな?それ、かわいい女の子がしたらいいけど、お前がしてもなあ。
 俺は全身から力が抜ける思いで嘆息した。
「興味はあるが、俺は実戦派だ。実地で行く」
「ん?じゃあ」
「頼むぞ、相棒」
「おう!」
 俺達はグーを付き合わせた。

 向こうの国と正式に国交を結び、リトリイは日本の文化を広め、料理を広める為の仕事をしたいらしい。
 そして俺達は、他の迷宮に挑む。まずは、イタリアだ。
 なぜイタリアかと言うと、采真が、本場のピザを食べたいと言ったからだ。
「行って来る」
 言えば、母がにこにことして言う。
「夕ご飯までに帰って来る?」
「それは無理だよ。向こうでアパートでも借りて、そこに転移石を設置して来ないと」
 そう。俺達は一度向こうへ行った後、いつでも帰れるように企んだのだ。
 だって、便利だし、日本食も食べたいし、毎週見ている番組もあるし。
「気を付けるんだぞ」
 父も、キッチンの研究室から出て来て言った。
 この元開かずのキッチンは、便利らしく、父の研究室になったのだ。
「うん」
「すぐに追いついてやるからな!」
 隣の柏木は鼻息が荒い。
「私もピザ食べたい!テイクアウトして来て」
 里依紗さんは、運動を再開し、お腹が空くそうだ。
「了解です!」
「じゃあ、行ってきます!」




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