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計画と計算外
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探索用の装備に身を固めたそれなりに探索を勧めている自衛隊員6人と、探索をしていない一般装備の自衛隊員4人と一緒に、カエルの所へ跳ぶ。
「おお……!」
「ここが異世界か」
感動しているらしき彼らをおいて、俺達は警戒を怠らない。
「来るぞ、やつらが」
言うと、隊員達はサッと緊張を取り戻した。
「来る、というと」
「来た!クリームシチュー!照り焼き!柚子胡椒チキン!」
奴らが来る。
「唐揚げ!焼き鳥!チキン南蛮!」
ここはあの、凶暴なニワトリのテリトリーだ。
「チキンカツ!チキンカレー!親子丼!」
すなわち、俺達の狩場の1つだ。
俺達はトリに躍りかかって行った。
それで、思い出した。テストをするんだった。
「間引いて数は減らしました。チームでかかってみて下さい」
誤魔化したら、上手く行った。
隊員達は、片方は魔術もありでの戦い方で。もう片方は一般装備中心での戦い方。
それを、危険になったら助けに入らなくてはいけないので、俺達は後ろから見守っていた。
「魔術を使って来ない魔獣なら、普通の隊員でも問題なさそうだな」
「ああ。じゃあ、牛みたいなやつならどうかな、鳴海」
采真が言って、ニヤリと笑う。
「そりゃあ、確かめないとまずいな」
「ああ、まずい」
「あれは魔術も使って来ますしね」
リトリイも言ってニヤリとし、俺達は仕留めたトリをゴミ袋に入れてバッグに突っ込み、
「次は魔術を使って来るタイプの魔獣を確認しましょう」
と笑顔で皆を、牛もどきの出た、村だった所に連れて行った。
そして、用意して来た日本人形を設置していると、来た。
「ステーキが来たぜ!」
「ローストビーフ!」
「ビーフシチュー!」
ついつい叫んで、叩きつけて来る風を防ぎ、火で焼き、切った。
それをバッグに入れていると、恐る恐る隊員に訊かれた。
「あの、叫ぶのは関係ないですよね?」
「いやあ、食いたくて、つい!」
采真が爽やかに答えた。
「あ、やりましょう!ほら!」
同じように、隊員達にやらせてみる。
ライフルなどは心許ないのと、魔術を防ぐ魔術士がいれば何とかなるのがわかった。
ここはイノシシもどきも出る。今後が楽しみだ。
「魔獣は、迷宮でトレーニングすれば対処できそうですね」
真面目な顔を作って、そう言う。
「はい。問題は魔人ですかね」
「そのためにも、同盟が組めれば心強い。結界に行きましょう」
俺達は、人の集まる結界を目指した。
案内人の手引きで結界内に入り、指導者には首相からの親書を渡す。同盟のお誘いと、そのための会談の申し込みらしい。
3日後に返事を聞きに来る事になっているが、取り敢えず、指導者達が親書を読んで、軽く話をする間、待つ事になった。
その間に、結界のそばに、預かって来たこけしを設置する。『日本国』と入った、妙に高そうなやつだ。
「こけしかあ」
「廃墟の村の日本人形もホラーだけど、荒野のこけしも、意味ありげだな」
采真が楽しそうに言う。
「采真はホラー好きだよな」
「好きだぜェ」
「ボクは、『四谷怪談』をテレビで見て、とても怖かったです」
リトリイは思い出したのか、青い顔をしてブルッと体を震わせた。
「俺は、イブの幽霊にハグされた時、びっくりした」
「ああ、あれな。ミイラもそこにあったしな」
采真も神妙な顔で頷いた。
その時、嫌な感じがして、俺はそちらへ目を向けた。
瞬時に気が引き締まる。
「結界内に入って!早く!」
隊員に言い、俺は皆とそれの間に入り、盾を重ねて展開した。
「何――うわあ!?」
そこへ火も氷も雷も風も、色んな攻撃が集中し、爆音を轟かせ、砂煙を上げる。
「行って!庇う余裕がない!」
砂煙が晴れる前に、こちらからお返しの攻撃を撃ち込む。
それが晴れた時に見えたのは、いつかの魔王とただ1人残った幹部のケト、それと魔人兵達と獣人兵達だった。
「――!」
「行ってください!」
「くっ!」
隊員達が結界に滑り込む。
「ラスボス登場だぜ、鳴海」
「計算外だな、全く」
「人生なるようにしかならないってね!」
「鳴海も采真も、呑気に何言ってるんですか、もう!」
リトリイが嘆息する。
魔王は憎々し気に俺達を見て、
「とどめを刺しておかなかったのが失敗だったが、安心しろ。今日は刺してやる」
と口の端を吊り上げた。
「おお……!」
「ここが異世界か」
感動しているらしき彼らをおいて、俺達は警戒を怠らない。
「来るぞ、やつらが」
言うと、隊員達はサッと緊張を取り戻した。
「来る、というと」
「来た!クリームシチュー!照り焼き!柚子胡椒チキン!」
奴らが来る。
「唐揚げ!焼き鳥!チキン南蛮!」
ここはあの、凶暴なニワトリのテリトリーだ。
「チキンカツ!チキンカレー!親子丼!」
すなわち、俺達の狩場の1つだ。
俺達はトリに躍りかかって行った。
それで、思い出した。テストをするんだった。
「間引いて数は減らしました。チームでかかってみて下さい」
誤魔化したら、上手く行った。
隊員達は、片方は魔術もありでの戦い方で。もう片方は一般装備中心での戦い方。
それを、危険になったら助けに入らなくてはいけないので、俺達は後ろから見守っていた。
「魔術を使って来ない魔獣なら、普通の隊員でも問題なさそうだな」
「ああ。じゃあ、牛みたいなやつならどうかな、鳴海」
采真が言って、ニヤリと笑う。
「そりゃあ、確かめないとまずいな」
「ああ、まずい」
「あれは魔術も使って来ますしね」
リトリイも言ってニヤリとし、俺達は仕留めたトリをゴミ袋に入れてバッグに突っ込み、
「次は魔術を使って来るタイプの魔獣を確認しましょう」
と笑顔で皆を、牛もどきの出た、村だった所に連れて行った。
そして、用意して来た日本人形を設置していると、来た。
「ステーキが来たぜ!」
「ローストビーフ!」
「ビーフシチュー!」
ついつい叫んで、叩きつけて来る風を防ぎ、火で焼き、切った。
それをバッグに入れていると、恐る恐る隊員に訊かれた。
「あの、叫ぶのは関係ないですよね?」
「いやあ、食いたくて、つい!」
采真が爽やかに答えた。
「あ、やりましょう!ほら!」
同じように、隊員達にやらせてみる。
ライフルなどは心許ないのと、魔術を防ぐ魔術士がいれば何とかなるのがわかった。
ここはイノシシもどきも出る。今後が楽しみだ。
「魔獣は、迷宮でトレーニングすれば対処できそうですね」
真面目な顔を作って、そう言う。
「はい。問題は魔人ですかね」
「そのためにも、同盟が組めれば心強い。結界に行きましょう」
俺達は、人の集まる結界を目指した。
案内人の手引きで結界内に入り、指導者には首相からの親書を渡す。同盟のお誘いと、そのための会談の申し込みらしい。
3日後に返事を聞きに来る事になっているが、取り敢えず、指導者達が親書を読んで、軽く話をする間、待つ事になった。
その間に、結界のそばに、預かって来たこけしを設置する。『日本国』と入った、妙に高そうなやつだ。
「こけしかあ」
「廃墟の村の日本人形もホラーだけど、荒野のこけしも、意味ありげだな」
采真が楽しそうに言う。
「采真はホラー好きだよな」
「好きだぜェ」
「ボクは、『四谷怪談』をテレビで見て、とても怖かったです」
リトリイは思い出したのか、青い顔をしてブルッと体を震わせた。
「俺は、イブの幽霊にハグされた時、びっくりした」
「ああ、あれな。ミイラもそこにあったしな」
采真も神妙な顔で頷いた。
その時、嫌な感じがして、俺はそちらへ目を向けた。
瞬時に気が引き締まる。
「結界内に入って!早く!」
隊員に言い、俺は皆とそれの間に入り、盾を重ねて展開した。
「何――うわあ!?」
そこへ火も氷も雷も風も、色んな攻撃が集中し、爆音を轟かせ、砂煙を上げる。
「行って!庇う余裕がない!」
砂煙が晴れる前に、こちらからお返しの攻撃を撃ち込む。
それが晴れた時に見えたのは、いつかの魔王とただ1人残った幹部のケト、それと魔人兵達と獣人兵達だった。
「――!」
「行ってください!」
「くっ!」
隊員達が結界に滑り込む。
「ラスボス登場だぜ、鳴海」
「計算外だな、全く」
「人生なるようにしかならないってね!」
「鳴海も采真も、呑気に何言ってるんですか、もう!」
リトリイが嘆息する。
魔王は憎々し気に俺達を見て、
「とどめを刺しておかなかったのが失敗だったが、安心しろ。今日は刺してやる」
と口の端を吊り上げた。
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