41 / 89
合流
しおりを挟む
連合国の拠点をまずは目指す事になり、徒歩で向かう。
歩きながら、俺達は色々と観察し、リトリイから説明を受けた。
まず、ここは空気中にも魔素が多く、迷宮内よりもまだ多いかも知れないくらいだ。見かける動物も魔獣だが、大人しくて臆病なものもいる。植物も魔素を含んでいるためか、薬草もそこらへんに生えているが、雑草も無論ある。
迷宮の出口付近は元サコルヌの領土で、隣のイド、その向こうのカルルの三国の生き残りで作る連合国は、イドの辺りにあるそうだ。
一日の長さはほぼ地球と同じくらいとリトリイは言う。
「あと、そうだなあ。あんまり暑くないし、寒くもない」
「温暖という事か」
俺が言うと、采真は、
「常春だな」
と納得したように頷いていた。
そうして警戒しながら歩いていると、前方に人が現れ、こちらを指さした。
それを見たリトリイが、ブンブンと手を振った。
「じいちゃーん!」
そして走ってお互いに近付き、リトリイは拳骨を喰らった。
「勝手に書置きを残して上の世界に行くとか。お前という奴は!」
「ごめんなさい!痛い!反省してます!」
「ああ!?」
俺と采真は、口を挟むに挟めない雰囲気に、ただそれを眺めていた。
ひとしきりグリグリとされて涙を浮かべて、やっと解放されたリトリイは、俺達を紹介するという事をやっと思い出してくれた。
「鳴海、采真。ボクの祖父です。
穴の向こうの世界の人で、世話になった人。魔術士の鳴海と剣士の采真。強いよ」
それで俺達は、互いに挨拶し合った。
「鳴海のご両親が魔人に捕まってて、助けに行きたいんだって。ボク達、協力し合えると思うんだ」
リトリイの祖父は俺と采真を見ていたが、
「とにかく、集落へ行こう。幹部に相談せんとな」
そう言って歩き出し、俺達も後に続いた。
神殿の総本山だったところを中心に都市が造られ、そこにヒトが住んでいた。そしてそこを守るのは神聖結界と神獣で、流石の魔人も魔獣も、この結界は破れないそうだ。
俺と采真は、リトリイとその祖父に連れられてこの神殿に行き、中心人物達と面会した。
都市は3つの国の代表者が運営し、会議と多数決で決められるという。
そこで、俺達の世界の事、俺達が探索者をしている事、俺の親の事、そして、宝玉をどうやら受け継いでしまったらしい事を話した。
代表者達は、興奮していた。
彼らの間でも、イブ達の事は「昔話」となっており、本当かどうかは意見が分かれていたらしい。あそこに穴が開いた事は知っていたが、単なる洞窟だと思っていたようだ。
しかし、魔王やロンドとやり合った時の事を話せば、落胆された。
宝玉とやらに期待しても、魔王を倒せるほどのものではないせいだ。
「一緒に魔人と戦ってくれるのならありがたいが、せいぜい魔人の幹部クラス2人といったところじゃなあ。一気に攻勢に出るというのも危険だな」
代表の1人が言った意見に皆が賛成し、俺達は、
「せっかくだし、言語が通じる魔術はかけておいたらどうだ」
という事で、それだけはして、待機することになった。
確かに、リトリイ達との会話が、よりスムーズな感じにはなった。
だがそれだけだ。
「どうする、鳴海。困ったな」
「まあ、予想の範囲内だ。
良かったじゃないか。これで俺達は、バイリンガルだぞ」
「学校に行ってた時になりたかったぜ」
俺と采真は、通された神殿の一室で頬杖をついて話していた。
リトリイは、家族の所だ。物凄く危険な家出をしたのだ。今頃、無事に帰った事を喜び、そして、叱られているに違いない。
「防戦派が多いんだな」
「ここにいれば、結界と神獣で守られる。無理に国土を取り戻さなくても、という気持ちもわかるよ」
「中には攻撃してやろうというのもいるんだろ?そいつらと会って話すか?」
少し考え、頭を振った。
「いや。中途半端だとやられるだけだろう。それなら、俺達だけで忍び込んで親を探し出した方が安全な気がする」
「行くか」
「ああ」
俺達は、寝ておく事にした。
早朝。俺達は、神殿を出た。
まだ眠る街の中を歩き、結界の外に出る。
「清々しい朝だな!」
「あれが目的地か」
魔王の住む城とやらが、遠くに見える。そこを目指せばいいのだから、迷子になる心配もなさそうだ。
「分かり易くて助かるな、鳴海」
「ああ。
行くか」
「おう!」
歩き出す。
と、背後に気配がひとつ。
「おはようございます。置いてくなんてひどいですよ」
リトリイだ。
「リトリイは残った方がいいだろう。宝玉のありかを確認するという目的は果たしたんだしな」
「そんな事言いますか。
ほら、お弁当ですよ。3人分」
俺と采真は顔を見合わせ、肩を竦めた。
「仕方ないな」
俺達のチームは、まだしばらく続きそうだった。
歩きながら、俺達は色々と観察し、リトリイから説明を受けた。
まず、ここは空気中にも魔素が多く、迷宮内よりもまだ多いかも知れないくらいだ。見かける動物も魔獣だが、大人しくて臆病なものもいる。植物も魔素を含んでいるためか、薬草もそこらへんに生えているが、雑草も無論ある。
迷宮の出口付近は元サコルヌの領土で、隣のイド、その向こうのカルルの三国の生き残りで作る連合国は、イドの辺りにあるそうだ。
一日の長さはほぼ地球と同じくらいとリトリイは言う。
「あと、そうだなあ。あんまり暑くないし、寒くもない」
「温暖という事か」
俺が言うと、采真は、
「常春だな」
と納得したように頷いていた。
そうして警戒しながら歩いていると、前方に人が現れ、こちらを指さした。
それを見たリトリイが、ブンブンと手を振った。
「じいちゃーん!」
そして走ってお互いに近付き、リトリイは拳骨を喰らった。
「勝手に書置きを残して上の世界に行くとか。お前という奴は!」
「ごめんなさい!痛い!反省してます!」
「ああ!?」
俺と采真は、口を挟むに挟めない雰囲気に、ただそれを眺めていた。
ひとしきりグリグリとされて涙を浮かべて、やっと解放されたリトリイは、俺達を紹介するという事をやっと思い出してくれた。
「鳴海、采真。ボクの祖父です。
穴の向こうの世界の人で、世話になった人。魔術士の鳴海と剣士の采真。強いよ」
それで俺達は、互いに挨拶し合った。
「鳴海のご両親が魔人に捕まってて、助けに行きたいんだって。ボク達、協力し合えると思うんだ」
リトリイの祖父は俺と采真を見ていたが、
「とにかく、集落へ行こう。幹部に相談せんとな」
そう言って歩き出し、俺達も後に続いた。
神殿の総本山だったところを中心に都市が造られ、そこにヒトが住んでいた。そしてそこを守るのは神聖結界と神獣で、流石の魔人も魔獣も、この結界は破れないそうだ。
俺と采真は、リトリイとその祖父に連れられてこの神殿に行き、中心人物達と面会した。
都市は3つの国の代表者が運営し、会議と多数決で決められるという。
そこで、俺達の世界の事、俺達が探索者をしている事、俺の親の事、そして、宝玉をどうやら受け継いでしまったらしい事を話した。
代表者達は、興奮していた。
彼らの間でも、イブ達の事は「昔話」となっており、本当かどうかは意見が分かれていたらしい。あそこに穴が開いた事は知っていたが、単なる洞窟だと思っていたようだ。
しかし、魔王やロンドとやり合った時の事を話せば、落胆された。
宝玉とやらに期待しても、魔王を倒せるほどのものではないせいだ。
「一緒に魔人と戦ってくれるのならありがたいが、せいぜい魔人の幹部クラス2人といったところじゃなあ。一気に攻勢に出るというのも危険だな」
代表の1人が言った意見に皆が賛成し、俺達は、
「せっかくだし、言語が通じる魔術はかけておいたらどうだ」
という事で、それだけはして、待機することになった。
確かに、リトリイ達との会話が、よりスムーズな感じにはなった。
だがそれだけだ。
「どうする、鳴海。困ったな」
「まあ、予想の範囲内だ。
良かったじゃないか。これで俺達は、バイリンガルだぞ」
「学校に行ってた時になりたかったぜ」
俺と采真は、通された神殿の一室で頬杖をついて話していた。
リトリイは、家族の所だ。物凄く危険な家出をしたのだ。今頃、無事に帰った事を喜び、そして、叱られているに違いない。
「防戦派が多いんだな」
「ここにいれば、結界と神獣で守られる。無理に国土を取り戻さなくても、という気持ちもわかるよ」
「中には攻撃してやろうというのもいるんだろ?そいつらと会って話すか?」
少し考え、頭を振った。
「いや。中途半端だとやられるだけだろう。それなら、俺達だけで忍び込んで親を探し出した方が安全な気がする」
「行くか」
「ああ」
俺達は、寝ておく事にした。
早朝。俺達は、神殿を出た。
まだ眠る街の中を歩き、結界の外に出る。
「清々しい朝だな!」
「あれが目的地か」
魔王の住む城とやらが、遠くに見える。そこを目指せばいいのだから、迷子になる心配もなさそうだ。
「分かり易くて助かるな、鳴海」
「ああ。
行くか」
「おう!」
歩き出す。
と、背後に気配がひとつ。
「おはようございます。置いてくなんてひどいですよ」
リトリイだ。
「リトリイは残った方がいいだろう。宝玉のありかを確認するという目的は果たしたんだしな」
「そんな事言いますか。
ほら、お弁当ですよ。3人分」
俺と采真は顔を見合わせ、肩を竦めた。
「仕方ないな」
俺達のチームは、まだしばらく続きそうだった。
0
お気に入りに追加
11
あなたにおすすめの小説
第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。
黒ハット
ファンタジー
前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
積みかけアラフォーOL、公爵令嬢に転生したのでやりたいことをやって好きに生きる!
ぽらいと
ファンタジー
アラフォー、バツ2派遣OLが公爵令嬢に転生したので、やりたいことを好きなようにやって過ごす、というほのぼの系の話。
悪役等は一切出てこない、優しい世界のお話です。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
俺しか使えない『アイテムボックス』がバグってる
十本スイ
ファンタジー
俗にいう神様転生とやらを経験することになった主人公――札月沖長。ただしよくあるような最強でチートな能力をもらい、異世界ではしゃぐつもりなど到底なかった沖長は、丈夫な身体と便利なアイテムボックスだけを望んだ。しかしこの二つ、神がどういう解釈をしていたのか、特にアイテムボックスについてはバグっているのではと思うほどの能力を有していた。これはこれで便利に使えばいいかと思っていたが、どうも自分だけが転生者ではなく、一緒に同世界へ転生した者たちがいるようで……。しかもそいつらは自分が主人公で、沖長をイレギュラーだの踏み台だなどと言ってくる。これは異世界ではなく現代ファンタジーの世界に転生することになった男が、その世界の真実を知りながらもマイペースに生きる物語である。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
ペット(老猫)と異世界転生
童貞騎士
ファンタジー
老いた飼猫と暮らす独りの会社員が神の手違いで…なんて事はなく災害に巻き込まれてこの世を去る。そして天界で神様と会い、世知辛い神様事情を聞かされて、なんとなく飼猫と共に異世界転生。使命もなく、ノルマの無い異世界転生に平凡を望む彼はほのぼののんびりと異世界を飼猫と共に楽しんでいく。なお、ペットの猫が龍とタメ張れる程のバケモノになっていることは知らない模様。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
最弱スレイヤーがその身に神を宿しました。〜神社で徳を積んでたら神の力使えるようになったんだが〜
カツラノエース
ファンタジー
「スレイヤー」それは世界に突如出現した「災害獣」を討伐する職業。曽木かんたはそんなスレイヤーの最底辺である
E級スレイヤーだった。だがある日、神社で神の力を手に入れる!その力を手に入れた曽木かんたはB級スレイヤーとの模擬戦で圧勝し、皆に注目される存在になっていく!
底辺であったスレイヤーが、神の力を手にして、無双していく下克上ローファンタジー!!
小説家になろう、カクヨムにも掲載。
ちっちゃくなった俺の異世界攻略
鮨海
ファンタジー
あるとき神の采配により異世界へ行くことを決意した高校生の大輝は……ちっちゃくなってしまっていた!
精霊と神様からの贈り物、そして大輝の力が試される異世界の大冒険?が幕を開ける!
グランディア様、読まないでくださいっ!〜仮死状態となった令嬢、婚約者の王子にすぐ隣で声に出して日記を読まれる〜
月
恋愛
第三王子、グランディアの婚約者であるティナ。
婚約式が終わってから、殿下との溝は深まるばかり。
そんな時、突然聖女が宮殿に住み始める。
不安になったティナは王妃様に相談するも、「私に任せなさい」とだけ言われなぜかお茶をすすめられる。
お茶を飲んだその日の夜、意識が戻ると仮死状態!?
死んだと思われたティナの日記を、横で読み始めたグランディア。
しかもわざわざ声に出して。
恥ずかしさのあまり、本当に死にそうなティナ。
けれど、グランディアの気持ちが少しずつ分かり……?
※この小説は他サイトでも公開しております。
婚約破棄してたった今処刑した悪役令嬢が前世の幼馴染兼恋人だと気づいてしまった。
風和ふわ
恋愛
タイトル通り。連載の気分転換に執筆しました。
※なろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ、pixivに投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる