18 / 89
再会
しおりを挟む
俺達は、ひたすら魔獣を狩った。そして夜になると、俺は弾に魔素を倒れるまで籠めて、気絶して寝た。そうでもしないと、考えすぎたり焦ったりして寝られないというのもあったし、魔人を相手にするにはありったけの魔術を叩き込む必要がありそうで、強迫観念に囚われるようにそうしていたのだが、皮肉にもそれが、魔力量の増大につながっている。
そうして、探索の最深部に近い所まで到達していた。
「そろそろ日帰りは無理だな」
雑魚は無視して走り抜けるにしても、無理そうだ。
「2人の限界か」
「新しいメンバー募集するか、鳴海?」
「ううーん」
頭が3つある魔術を使う大蛇を倒し、魔石やウロコを拾いながら俺達は相談していた。
協会からは、とうに、人数を増やす事を勧められている。
「とにかく帰るか」
「今日の晩御飯は何だ、鳴海」
「そうめんにするか、簡単だし」
「そうめんは昨日食ったぞ。ほかのにしようぜ」
采真に言われて、俺は気付いた。何を食べたか、あまり記憶にない事に。動くためには食事が必要だとは思うし、ちゃんと食べられてはいる。しかし、味やメニューに興味を払っていなかった。
いつからだろう?これではだめだ。
俺は深呼吸し、采真に言った。
「悪い。俺、余裕が無かったみたいだな。これじゃあそのうち、つまらないミスでもするところだった」
采真はニカッと笑うと、片目をつぶって見せた。
「よし!じゃあ、明日は久々に休むか。それで、ゆっくりと休養をとって、美味いもの食べて、できれば女の子とデートしたいぜ!」
「それはともかく、掃除と洗濯もな、采真」
俺達は肩を竦め、引き返そうと足を出しかけた。その時、悲鳴と怒号と足音が聞こえて来た。
「ん?下か?」
それを肯定するかのように、ジリジリと後退して来た探索者達が下から現れた。ケガをしている者もいる。
何があったかと訊く前に、彼らが対峙していた存在が姿を現した。
「詰まんないなあ。探し物はまだ見つからないのか、見付からないなら見付からないで早く研究の結果を出させろとか言われるし。ああ。気分転換に運動でもしなきゃ、やってられないよ」
嘆息するのは、あいつだった。あの日見た3人の魔人の1人。ヘラヘラした奴だ。
体が熱くなるような、頭が冷たくなるような、どうにも言えない感覚になる。
「でも、こっちのヒトって弱いんだよなあ。暇つぶしにもならないや」
本当に詰まらなさそうに言って、無造作に片手を上げ、火の魔術を放つ。
俺は盾を展開していた。こいつの火の威力は知っている。なので、4つ重ねた。
1つ目はまるで歯が立たずに壊れた。2つ目はひびが見る間に広がって行き、やがて壊れた。3つ目はそれよりもゆっくりとひびが入って行き、壊れた。そして4つ目は、奴が魔術を放ち終えた時も残っていた。
「ん?」
奴がそれを見、俺達を見廻した。
「誰かな?」
その目が、俺を捉えた。そして、輝く。
「あれぇ?君、あの連れ帰ったニンゲンの子供だよね?へえ、生きてたんだ」
「黙れ――!」
俺は氷を連続で2つ撃ち込んだ。
氷が奴の張った盾に当たって砕け散り、冷気とキラキラとしたスターダストが舞う。
奴は攻撃されたとも受け取っていないような涼しい顔で、笑っていた。
「研究が進まないんだ。やっぱり人質は、妻だけでなく子供もいたほうがいいかな。それで片方を、見せしめにしたら本気になるよね。うん、君を連れて行こうかな」
「黙れ、クソ野郎!」
水と火を撃ち込んで爆発を起こさせ、そこに風を加えて叩きつける。
「うわっ!!」
悲鳴が上がったのは、味方からだった。魔人の方は笑い声を上げている。
視界が晴れる前に俺は飛び出して、魔銃剣で炎の大蛇ごと切り裂く。
「うわあっ!」
ヘラヘラしていた魔人が、慌てた声を上げて飛び退る。
肩に魔銃剣で付けた傷が斜めに走っていた。
「生意気だな、弱いニンゲンのくせに!よくもやってくれたね!」
笑顔のまま、目付きだけが鋭くなる。
「この場で殺して死体を持ち帰ってやる!」
魔術と魔術が激突し、合間に、俺の魔銃剣と奴の剣とがお互いを斬りつけ合う。
周囲の誰も、手出しができないようだった。強力な魔術もそれを連発する事も、見た事が無いだろう。
なので、動けたのは、采真だけだった。
弾が切れた瞬間、俺とスイッチしてヤツに躍りかかって行く。その間に、俺は呼吸を整え、観察した。
「采真!」
「ほい!」
采真が後ろにひょいと引いたその空間に、続けさまに風の刃を撃ち込む。采真を追撃しようとしていたヤツはそれをモロにくらって、派手に吹っ飛んだ。
「やったか!?」
誰かが言う。
「いや」
「来るぞ」
土煙の中、ヤツは起き上がった。
そうして、探索の最深部に近い所まで到達していた。
「そろそろ日帰りは無理だな」
雑魚は無視して走り抜けるにしても、無理そうだ。
「2人の限界か」
「新しいメンバー募集するか、鳴海?」
「ううーん」
頭が3つある魔術を使う大蛇を倒し、魔石やウロコを拾いながら俺達は相談していた。
協会からは、とうに、人数を増やす事を勧められている。
「とにかく帰るか」
「今日の晩御飯は何だ、鳴海」
「そうめんにするか、簡単だし」
「そうめんは昨日食ったぞ。ほかのにしようぜ」
采真に言われて、俺は気付いた。何を食べたか、あまり記憶にない事に。動くためには食事が必要だとは思うし、ちゃんと食べられてはいる。しかし、味やメニューに興味を払っていなかった。
いつからだろう?これではだめだ。
俺は深呼吸し、采真に言った。
「悪い。俺、余裕が無かったみたいだな。これじゃあそのうち、つまらないミスでもするところだった」
采真はニカッと笑うと、片目をつぶって見せた。
「よし!じゃあ、明日は久々に休むか。それで、ゆっくりと休養をとって、美味いもの食べて、できれば女の子とデートしたいぜ!」
「それはともかく、掃除と洗濯もな、采真」
俺達は肩を竦め、引き返そうと足を出しかけた。その時、悲鳴と怒号と足音が聞こえて来た。
「ん?下か?」
それを肯定するかのように、ジリジリと後退して来た探索者達が下から現れた。ケガをしている者もいる。
何があったかと訊く前に、彼らが対峙していた存在が姿を現した。
「詰まんないなあ。探し物はまだ見つからないのか、見付からないなら見付からないで早く研究の結果を出させろとか言われるし。ああ。気分転換に運動でもしなきゃ、やってられないよ」
嘆息するのは、あいつだった。あの日見た3人の魔人の1人。ヘラヘラした奴だ。
体が熱くなるような、頭が冷たくなるような、どうにも言えない感覚になる。
「でも、こっちのヒトって弱いんだよなあ。暇つぶしにもならないや」
本当に詰まらなさそうに言って、無造作に片手を上げ、火の魔術を放つ。
俺は盾を展開していた。こいつの火の威力は知っている。なので、4つ重ねた。
1つ目はまるで歯が立たずに壊れた。2つ目はひびが見る間に広がって行き、やがて壊れた。3つ目はそれよりもゆっくりとひびが入って行き、壊れた。そして4つ目は、奴が魔術を放ち終えた時も残っていた。
「ん?」
奴がそれを見、俺達を見廻した。
「誰かな?」
その目が、俺を捉えた。そして、輝く。
「あれぇ?君、あの連れ帰ったニンゲンの子供だよね?へえ、生きてたんだ」
「黙れ――!」
俺は氷を連続で2つ撃ち込んだ。
氷が奴の張った盾に当たって砕け散り、冷気とキラキラとしたスターダストが舞う。
奴は攻撃されたとも受け取っていないような涼しい顔で、笑っていた。
「研究が進まないんだ。やっぱり人質は、妻だけでなく子供もいたほうがいいかな。それで片方を、見せしめにしたら本気になるよね。うん、君を連れて行こうかな」
「黙れ、クソ野郎!」
水と火を撃ち込んで爆発を起こさせ、そこに風を加えて叩きつける。
「うわっ!!」
悲鳴が上がったのは、味方からだった。魔人の方は笑い声を上げている。
視界が晴れる前に俺は飛び出して、魔銃剣で炎の大蛇ごと切り裂く。
「うわあっ!」
ヘラヘラしていた魔人が、慌てた声を上げて飛び退る。
肩に魔銃剣で付けた傷が斜めに走っていた。
「生意気だな、弱いニンゲンのくせに!よくもやってくれたね!」
笑顔のまま、目付きだけが鋭くなる。
「この場で殺して死体を持ち帰ってやる!」
魔術と魔術が激突し、合間に、俺の魔銃剣と奴の剣とがお互いを斬りつけ合う。
周囲の誰も、手出しができないようだった。強力な魔術もそれを連発する事も、見た事が無いだろう。
なので、動けたのは、采真だけだった。
弾が切れた瞬間、俺とスイッチしてヤツに躍りかかって行く。その間に、俺は呼吸を整え、観察した。
「采真!」
「ほい!」
采真が後ろにひょいと引いたその空間に、続けさまに風の刃を撃ち込む。采真を追撃しようとしていたヤツはそれをモロにくらって、派手に吹っ飛んだ。
「やったか!?」
誰かが言う。
「いや」
「来るぞ」
土煙の中、ヤツは起き上がった。
0
お気に入りに追加
11
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
【完結】義姉上が悪役令嬢だと!?ふざけるな!姉を貶めたお前達を絶対に許さない!!
つくも茄子
ファンタジー
義姉は王家とこの国に殺された。
冤罪に末に毒杯だ。公爵令嬢である義姉上に対してこの仕打ち。笑顔の王太子夫妻が憎い。嘘の供述をした連中を許さない。我が子可愛さに隠蔽した国王。実の娘を信じなかった義父。
全ての復讐を終えたミゲルは義姉の墓前で報告をした直後に世界が歪む。目を覚ますとそこには亡くなった義姉の姿があった。過去に巻き戻った事を知ったミゲルは今度こそ義姉を守るために行動する。
巻き戻った世界は同じようで違う。その違いは吉とでるか凶とでるか……。
レベルを上げて通販で殴る~囮にされて落とし穴に落とされたが大幅レベルアップしてざまぁする。危険な封印ダンジョンも俺にかかればちょろいもんさ~
喰寝丸太
ファンタジー
異世界に転移した山田(やまだ) 無二(むに)はポーターの仕事をして早6年。
おっさんになってからも、冒険者になれずくすぶっていた。
ある日、モンスター無限増殖装置を誤って作動させたパーティは無二を囮にして逃げ出す。
落とし穴にも落とされ絶体絶命の無二。
機転を利かせ助かるも、そこはダンジョンボスの扉の前。
覚悟を決めてボスに挑む無二。
通販能力でからくも勝利する。
そして、ダンジョンコアの魔力を吸出し大幅レベルアップ。
アンデッドには聖水代わりに殺菌剤、光魔法代わりに紫外線ライト。
霧のモンスターには掃除機が大活躍。
異世界モンスターを現代製品の通販で殴る快進撃が始まった。
カクヨム、小説家になろう、アルファポリスに掲載しております。
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
転生ヒロインは不倫が嫌いなので地道な道を選らぶ
karon
ファンタジー
デビュタントドレスを見た瞬間アメリアはかつて好きだった乙女ゲーム「薔薇の言の葉」の世界に転生したことを悟った。
しかし、攻略対象に張り付いた自分より身分の高い悪役令嬢と戦う危険性を考え、攻略対象完全無視でモブとくっつくことを決心、しかし、アメリアの思惑は思わぬ方向に横滑りし。
自重をやめた転生者は、異世界を楽しむ
饕餮
ファンタジー
書籍発売中!
詳しくは近況ノートをご覧ください。
桐渕 有里沙ことアリサは16歳。天使のせいで異世界に転生した元日本人。
お詫びにとたくさんのスキルと、とても珍しい黒いにゃんこスライムをもらい、にゃんすらを相棒にしてその世界を旅することに。
途中で魔馬と魔鳥を助けて懐かれ、従魔契約をし、旅を続ける。
自重しないでものを作ったり、テンプレに出会ったり……。
旅を続けるうちにとある村にたどり着き、スキルを使って村の一番奥に家を建てた。
訳アリの住人たちが住む村と、そこでの暮らしはアリサに合っていたようで、人間嫌いのアリサは徐々に心を開いていく。
リュミエール世界をのんびりと冒険したり旅をしたりダンジョンに潜ったりする、スローライフ。かもしれないお話。
★最初は旅しかしていませんが、その道中でもいろいろ作ります。
★本人は自重しません。
★たまに残酷表現がありますので、苦手な方はご注意ください。
表紙は巴月のんさんに依頼し、有償で作っていただきました。
黒い猫耳の丸いものは作中に出てくる神獣・にゃんすらことにゃんこスライムです。
★カクヨムでも連載しています。カクヨム先行。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
婚約破棄されたので森の奥でカフェを開いてスローライフ
あげは
ファンタジー
「私は、ユミエラとの婚約を破棄する!」
学院卒業記念パーティーで、婚約者である王太子アルフリードに突然婚約破棄された、ユミエラ・フォン・アマリリス公爵令嬢。
家族にも愛されていなかったユミエラは、王太子に婚約破棄されたことで利用価値がなくなったとされ家を勘当されてしまう。
しかし、ユミエラに特に気にした様子はなく、むしろ喜んでいた。
これまでの生活に嫌気が差していたユミエラは、元孤児で転生者の侍女ミシェルだけを連れ、その日のうちに家を出て人のいない森の奥に向かい、森の中でカフェを開くらしい。
「さあ、ミシェル! 念願のスローライフよ! 張り切っていきましょう!」
王都を出るとなぜか国を守護している神獣が待ち構えていた。
どうやら国を捨てユミエラについてくるらしい。
こうしてユミエラは、転生者と神獣という何とも不思議なお供を連れ、優雅なスローライフを楽しむのであった。
一方、ユミエラを追放し、神獣にも見捨てられた王国は、愚かな王太子のせいで混乱に陥るのだった――。
なろう・カクヨムにも投稿
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
【完結】僻地がいざなう聖女の末裔
入魚ひえん
ファンタジー
聖女の末裔であるセレルは父母が他界した後、義母妹と暮らしていたが、日々は彼女たちの豊かな生活を支えるための道具作りに費やされていた。
唯一の味方だと思っていた幼馴染も、繁盛している道具屋の支配人の地位を得るため、妹と結婚すると婚約破棄を言い渡し、セレルを惑いの森に追放する。死を覚悟したその時、血まみれの男が現れた。
「触るな……」
長いまつげに縁どられた瞳が、牙をむく狂犬のようにぎらつく。
息をのむほどの美貌だった。
繊細な女性のように薄い色素の美形で、身につけているものはひどく傷ついていたが、よく見ると王族や高位の貴族のような格式のあるものを着ている。
セレルは面食らったが素知らぬ顔をした。
「触るな? 触るよ。だいじょうぶ。私、あなたのこと治すから」
「無理だ。俺はもう助からない」
「でもあなたはここまでやってきた。どうして?」
「うるさい」
「助かりたかったんでしょ」
「うるさい、触るな」
*
閲覧ありがとうございます、完結しました!
シリアスとコメディ混在のファンタジーです。恋愛要素あり。
お試しいただけると嬉しいです!
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
俺の娘、チョロインじゃん!
ちゃんこ
ファンタジー
俺、そこそこイケてる男爵(32) 可愛い俺の娘はヒロイン……あれ?
乙女ゲーム? 悪役令嬢? ざまぁ? 何、この情報……?
男爵令嬢が王太子と婚約なんて、あり得なくね?
アホな俺の娘が高位貴族令息たちと仲良しこよしなんて、あり得なくね?
ざまぁされること必至じゃね?
でも、学園入学は来年だ。まだ間に合う。そうだ、隣国に移住しよう……問題ないな、うん!
「おのれぇぇ! 公爵令嬢たる我が娘を断罪するとは! 許さぬぞーっ!」
余裕ぶっこいてたら、おヒゲが素敵な公爵(41)が突進してきた!
え? え? 公爵もゲーム情報キャッチしたの? ぎゃぁぁぁ!
【ヒロインの父親】vs.【悪役令嬢の父親】の戦いが始まる?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる