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有名人
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3年生になって最初の登校。クラス発表を見てクラスを確認すると、「一緒だ」「離れちゃった」と騒ぐ生徒を尻目に、さっさと俺は教室へ入った。
入った途端、去年やその前にもあったのと同じ光景が繰り広げられる。
「霜村と同じクラスか」
「はあ。ついてない」
そんな会話もあれば、
「極悪人の子のくせに、よく堂々と生きてるよな」
「税金で生きてるんだろ」
「ああ、施設に入ってるんだったよな」
という声も聞こえる。
施設の運営は確かに税金だが、お前らが払っているわけではないだろうに、と思いながら、俺は出席番号に従って自分の席に着いた。
窓際で、外を見ていれば視線に困らないところがいい。
まあ、廊下側から順だと、一番廊下側になるので、見るのは廊下になって、場合によっては廊下を歩く生徒に、「何見てるんだよ」と文句を言われる事がある。理不尽だ。
ぼうっと外を見ていると、わっと声が上がった。
「音無!今年は一緒か」
「おう、よろしくな!」
見るからに明るい生徒が、にこにこしながら、クラスメイト達に囲まれていた。
高校生にもなってバカじゃないか、他にする事がよっぽどないのか。俺を取り囲むやつらを、俺は冷めた思いで見ていた。
「たくさん殺しておいて、よく当たり前みたいな顔をして税金で生きてるよな」
「還元しろよ。カラオケ行くから、出せよ」
俺は溜め息をついた。
「俺が殺したわけじゃない。それに施設の運営費は消費税じゃないから、お前らに還元はおかしいだろ」
「屁理屈こねやがって」
カッとして、殴り、蹴って来る。じっと我慢して、終わるのを待つ。急所を外す訓練だと思えばいい。その内こいつらの方が、飽きるか疲れるかして、終わる。
するとその時は、誰かが来るらしい物音がして、彼らは逃げ出した。「こいつにはやってもいい」とは言うが、それが本当は通じない事くらいは理解しているらしい。
来たのは音無だった。
逃げるように走り去ったグループを見送り、次に俺を見てギョッとしたらしい。
「どうしたんだ!?ケンカか!?いじめか!?」
俺は制服の汚れをはたきながら、
「正当な権利らしいぞ」
と答える。
音無は納得できないという顔をしていたが、俺は構わず歩き出した。こんな詰まらない事で潰す時間はない。
棒を構え、架空の敵に向かって、振り下ろし、斬る。何度も何度も。夢中で一通り繰り返し、やっと意識が現実に戻った時、俺は驚いた。
「何でここにいる」
音無が、じっと俺を見ていた。
「凄ェな!」
「は?」
「剣道じゃねえな。何?」
「……銃剣」
「へえ。俺剣道部なんだけど、部のレギュラー選手と比べても凄いんじゃねえの?」
「さあ。クラブの人は知らないしな。でも、探索者は、もっと強い人ばっかりだ」
「探索者!?霜村、探索者なのか!いいなあ」
俺は肩を竦めた。
「何であいつらにやり返さないんだよ。お前の方がずっと強いのに」
「長引くんだよ。中学の時に抵抗したら、次は酷くなったし、人数も増えたし、陰湿になっていった。抵抗せずにさせておけば、向こうも飽きるらしい」
「これまでもあったのかよ?」
「無いと思うのか?俺は極悪人の悪魔の子らしいぞ」
俺は音無にそう言いおいて、歩き出した。
それから音無は暇なのか、ちょくちょく俺の練習を見に来た。
入った途端、去年やその前にもあったのと同じ光景が繰り広げられる。
「霜村と同じクラスか」
「はあ。ついてない」
そんな会話もあれば、
「極悪人の子のくせに、よく堂々と生きてるよな」
「税金で生きてるんだろ」
「ああ、施設に入ってるんだったよな」
という声も聞こえる。
施設の運営は確かに税金だが、お前らが払っているわけではないだろうに、と思いながら、俺は出席番号に従って自分の席に着いた。
窓際で、外を見ていれば視線に困らないところがいい。
まあ、廊下側から順だと、一番廊下側になるので、見るのは廊下になって、場合によっては廊下を歩く生徒に、「何見てるんだよ」と文句を言われる事がある。理不尽だ。
ぼうっと外を見ていると、わっと声が上がった。
「音無!今年は一緒か」
「おう、よろしくな!」
見るからに明るい生徒が、にこにこしながら、クラスメイト達に囲まれていた。
高校生にもなってバカじゃないか、他にする事がよっぽどないのか。俺を取り囲むやつらを、俺は冷めた思いで見ていた。
「たくさん殺しておいて、よく当たり前みたいな顔をして税金で生きてるよな」
「還元しろよ。カラオケ行くから、出せよ」
俺は溜め息をついた。
「俺が殺したわけじゃない。それに施設の運営費は消費税じゃないから、お前らに還元はおかしいだろ」
「屁理屈こねやがって」
カッとして、殴り、蹴って来る。じっと我慢して、終わるのを待つ。急所を外す訓練だと思えばいい。その内こいつらの方が、飽きるか疲れるかして、終わる。
するとその時は、誰かが来るらしい物音がして、彼らは逃げ出した。「こいつにはやってもいい」とは言うが、それが本当は通じない事くらいは理解しているらしい。
来たのは音無だった。
逃げるように走り去ったグループを見送り、次に俺を見てギョッとしたらしい。
「どうしたんだ!?ケンカか!?いじめか!?」
俺は制服の汚れをはたきながら、
「正当な権利らしいぞ」
と答える。
音無は納得できないという顔をしていたが、俺は構わず歩き出した。こんな詰まらない事で潰す時間はない。
棒を構え、架空の敵に向かって、振り下ろし、斬る。何度も何度も。夢中で一通り繰り返し、やっと意識が現実に戻った時、俺は驚いた。
「何でここにいる」
音無が、じっと俺を見ていた。
「凄ェな!」
「は?」
「剣道じゃねえな。何?」
「……銃剣」
「へえ。俺剣道部なんだけど、部のレギュラー選手と比べても凄いんじゃねえの?」
「さあ。クラブの人は知らないしな。でも、探索者は、もっと強い人ばっかりだ」
「探索者!?霜村、探索者なのか!いいなあ」
俺は肩を竦めた。
「何であいつらにやり返さないんだよ。お前の方がずっと強いのに」
「長引くんだよ。中学の時に抵抗したら、次は酷くなったし、人数も増えたし、陰湿になっていった。抵抗せずにさせておけば、向こうも飽きるらしい」
「これまでもあったのかよ?」
「無いと思うのか?俺は極悪人の悪魔の子らしいぞ」
俺は音無にそう言いおいて、歩き出した。
それから音無は暇なのか、ちょくちょく俺の練習を見に来た。
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