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キラー鳥
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キラー鳥。トンビが魔獣化したものだ。ワニをバリバリと食う大きな鳥で、ヒトを積極的に襲うとは聞いていない。卵を大切にし、キラー鳥の卵やヒナが大好きな竜が来ると、狂ったように反撃する。
キラー鳥にしても、元がワニの竜にしても、全てに言える事だが、魔獣化した時点で、生態も運動能力も別物になる。
キラー鳥は、びっしりと歯の生えたくちばしを開けて、船に向かって威嚇した。
「キエエエエ!」
運び屋は、青い顔でキラー鳥を見ていた。
「船内に入っていてください!」
言って、キラー鳥に向けて火の魔術を放つ。
キラー鳥はそれを翼の先に受け、体制を崩した。
「す、すまん!」
言って、慌てて中に入る。
「鳴海!残念だけど、剣が届かないぜ!」
「追っ払えばそれでいい!」
言いながら、再度向かって来るキラー鳥に火の魔術を撃つ。それを躱されるが、予想通りだ。撃っておいた先にキラー鳥が避けた事で、攻撃が当たる。
「ギャアアア!!」
キラー鳥は怒ったような声を上げて高度を取る。
そして再度攻撃を仕掛けようと高度を落として来たが、俺の張った盾にぶつかり、あえなく失敗。諦めたのか、取り敢えず船から離れて行った。
「行ったか?」
「何だったんだあ?船がエサに見えたとか?」
「見えないだろ?」
首をひねったもののわからない。
そのうちに船は島に着き、俺達は船長に感謝されながら船を降りた。
港と言っても、コンクリートの船着き場があって、小さい建物があって、それだけだ。そしてそこに、島民が2人、迎えに来ていた。
片方は30歳前後の女、もう片方は40台半ばの男だった。
「栗林霧江さんですか」
運び屋の男が、女に近付く。
「はい」
「連絡しました、永井です。失礼ですが」
女は免許証を見せた。それで運び屋は納得し、続けた。
「栗林桐吾様からの依頼で参りました。箱と、こちらが栗林様の遺骨です。栗林様は大けがをして病院へ担ぎ込まれ、この箱を届けるように依頼して欲しいと看護師に遺言し、亡くなったそうです」
栗林さんは20センチ四方の立方体と白木の箱を受け取り、
「兄さん」
と一言呟いて鼻をすすり上げると、運び屋の差し出す伝票にサインした。
一緒にいた男の方が鼻をひとつ啜り上げ、俺達の方へ来た。
「探索者の方ですか」
「はい。霜村と申します」
「音無です」
「遠い所ありがとうございます。井川です。村へ案内しますんで」
そうして、運び屋はそのまま船に乗り、俺達4人は車で村へ向かった。
島は一つの山になっており、その中腹に、島唯一の村があった。
その中心なのか、広場になっている所に村長達がおり、物珍しそうに子供が見ているほか、年配者達がいた。
「遠い所、ありがとうございました」
90歳近いのではないかというくらいの村長がそう言う。
「早速ですが、魔獣の詳しい話をお伺いしたいのですが」
そう切り出すと、村長は笑い、
「今日の所はもうお休みください。詳しくは明日に」
と言うと、聞こえないふりをして踵を返して行ってしまう。
そして俺達は、促されて集会所みたいな所に連れて行かれた。
夕食は、ご飯、切り干し大根、さつま芋と人参とレンコンの天ぷら、明日葉のお浸し、梅干し。
「何と言うか、体に良さそうだな」
采真が言う。
「ここの人は、ベジタリアンなのかもしれないな」
味は薄いような何か足りないような微妙な感じだ。
俺達は盛り上がりに欠けたまま食事を食べ終え、暇なので外を見た。
「あ。さっきの栗林さんの家、あそこだぜ」
采真が言い、俺も外を見た。
斜め向かいの家に島民達がバラバラと入って行く。
「ああ。お兄さんの通夜かな」
見ていると、中から村長が出て来た。なぜか、例の箱を大事そうに抱えている。
「村長宛ての荷物だったのかな?」
俺は言いながら、何か見落としているような、落ち着かない気分になって来た。
「暇だなあ。テレビも無いぜ」
「あ?ああ」
俺は言い知れぬ不安に、もっと夜が更けてから、村の中を調べてみる事にした。
キラー鳥にしても、元がワニの竜にしても、全てに言える事だが、魔獣化した時点で、生態も運動能力も別物になる。
キラー鳥は、びっしりと歯の生えたくちばしを開けて、船に向かって威嚇した。
「キエエエエ!」
運び屋は、青い顔でキラー鳥を見ていた。
「船内に入っていてください!」
言って、キラー鳥に向けて火の魔術を放つ。
キラー鳥はそれを翼の先に受け、体制を崩した。
「す、すまん!」
言って、慌てて中に入る。
「鳴海!残念だけど、剣が届かないぜ!」
「追っ払えばそれでいい!」
言いながら、再度向かって来るキラー鳥に火の魔術を撃つ。それを躱されるが、予想通りだ。撃っておいた先にキラー鳥が避けた事で、攻撃が当たる。
「ギャアアア!!」
キラー鳥は怒ったような声を上げて高度を取る。
そして再度攻撃を仕掛けようと高度を落として来たが、俺の張った盾にぶつかり、あえなく失敗。諦めたのか、取り敢えず船から離れて行った。
「行ったか?」
「何だったんだあ?船がエサに見えたとか?」
「見えないだろ?」
首をひねったもののわからない。
そのうちに船は島に着き、俺達は船長に感謝されながら船を降りた。
港と言っても、コンクリートの船着き場があって、小さい建物があって、それだけだ。そしてそこに、島民が2人、迎えに来ていた。
片方は30歳前後の女、もう片方は40台半ばの男だった。
「栗林霧江さんですか」
運び屋の男が、女に近付く。
「はい」
「連絡しました、永井です。失礼ですが」
女は免許証を見せた。それで運び屋は納得し、続けた。
「栗林桐吾様からの依頼で参りました。箱と、こちらが栗林様の遺骨です。栗林様は大けがをして病院へ担ぎ込まれ、この箱を届けるように依頼して欲しいと看護師に遺言し、亡くなったそうです」
栗林さんは20センチ四方の立方体と白木の箱を受け取り、
「兄さん」
と一言呟いて鼻をすすり上げると、運び屋の差し出す伝票にサインした。
一緒にいた男の方が鼻をひとつ啜り上げ、俺達の方へ来た。
「探索者の方ですか」
「はい。霜村と申します」
「音無です」
「遠い所ありがとうございます。井川です。村へ案内しますんで」
そうして、運び屋はそのまま船に乗り、俺達4人は車で村へ向かった。
島は一つの山になっており、その中腹に、島唯一の村があった。
その中心なのか、広場になっている所に村長達がおり、物珍しそうに子供が見ているほか、年配者達がいた。
「遠い所、ありがとうございました」
90歳近いのではないかというくらいの村長がそう言う。
「早速ですが、魔獣の詳しい話をお伺いしたいのですが」
そう切り出すと、村長は笑い、
「今日の所はもうお休みください。詳しくは明日に」
と言うと、聞こえないふりをして踵を返して行ってしまう。
そして俺達は、促されて集会所みたいな所に連れて行かれた。
夕食は、ご飯、切り干し大根、さつま芋と人参とレンコンの天ぷら、明日葉のお浸し、梅干し。
「何と言うか、体に良さそうだな」
采真が言う。
「ここの人は、ベジタリアンなのかもしれないな」
味は薄いような何か足りないような微妙な感じだ。
俺達は盛り上がりに欠けたまま食事を食べ終え、暇なので外を見た。
「あ。さっきの栗林さんの家、あそこだぜ」
采真が言い、俺も外を見た。
斜め向かいの家に島民達がバラバラと入って行く。
「ああ。お兄さんの通夜かな」
見ていると、中から村長が出て来た。なぜか、例の箱を大事そうに抱えている。
「村長宛ての荷物だったのかな?」
俺は言いながら、何か見落としているような、落ち着かない気分になって来た。
「暇だなあ。テレビも無いぜ」
「あ?ああ」
俺は言い知れぬ不安に、もっと夜が更けてから、村の中を調べてみる事にした。
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