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ファーストペンギンの真実

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 食堂でトレイに載せた食事を受け取り、空いた席に着く。
「いただきまあす」
「いただきます」
 真矢と菜子は、食べ始めた。
「うん、美味しい。このカレー、見た目がクリームシチューやけど」
「そうやなあ。異世界いうたら、もっと食べ物とか技術とか文化とか生命体の種類とかが違うかと思ったけど、良かったわ」
「見た目がゴキやったら、いくら味が神戸牛でも無理や」
「その点はラッキーやったなあ」
「まあ、たまにびっくりする事もあるけどな」
「目玉焼きに、しょうゆかソースか論争してたら、塩でものうてまさかのケチャップみたいな」
「この、クリームシチューに見えるカレーとかな」
「でも、まあ、ホワイトカレーもあったし、セーフかな」
「まあセーフやな」
 言い、カレーを食べる。
「でもな、真矢。日本では食べるけど、海外では食べへんいうものもあるやん」
「ああ。食べる所もあるけどタコとか、あとゴボウな。美味しいけど、確かに木の根っこそっくりやわな」
「最初に食べた人、むっちゃチャレンジャーやと思わん?例えば納豆や」
「ああ。あれ、腐ってるとか思わんかったんかな。
 私が感心するんは、ドリアンや」
「ああ。あの臭いはやばいわあ。最初の人の、顔が見たいわ」
 頷きながら、菜子は、おでんのようなものを食べる。
「それ、おでん?」
「まあ、煮込み、かな。味付けはおでん風や」
「へえ。今度、それしよ」
「でも、その最初の人って、ファーストペンギン言うたら聞こえはええけど、要するにゲテモノ食いやったんちゃうんかな」
 言いながら、菜子は、テーブルの上の黄色いチューブを絞り出した。
「もしくは罰ゲームやな」
 菜子はそれを付けて食べ、ちょっと無言になった。
「どないしたん?」
「いや・・・。皆のための毒見というか、尊い犠牲かも知れんで」
「・・・それ、犠牲か、菜子?」
「辛子そっくりやのに、メイプルシロップや!」
「最初の人、間違えたんかも知れんな。こんな風に」
 真矢と菜子は、ざっと無言で食べ、おにぎりを取り出した。
「私はペンギンにならんでもええ!」
「カレーは黄色がええねん!」
「辛子とかメイプルシロップとか容器に書いといて!」
 涙が出そうだった。






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