ディメンション・アクシデント

JUN

文字の大きさ
上 下
48 / 48

そして、次元震

しおりを挟む
 篁文達は待機当番に当たっているので、大人しく座っていた。
 ラクシーの世界戦争は終結することになり、特殊次元庁の武器も増やせる余裕ができたという。それで、日本も新たに自衛隊員から15人を特殊次元庁に出向させ、5人の班4つで、交代勤務に就く事になったのだ。
「戦争が終わって良かったね」
 紗希がのんびりと言う。
「でも、戦後補償とかは?」
 沢松が訊くと、ヨウゼはにこにことしながら言った。
「まあ、ぼちぼちと。次元移動の研究、開発、所持を、敗戦国側には禁じましてね、平和利用以外に使用したら、国際会議での多数決で、その国を飛ばす事に決定しました」
「飛ばす?どこへ?」
「さあ?どこへ飛ぶかは運任せ。わかりませんねえ」
「……怖……」
 セレエがブルッと震えて肩を抱く。
「それより、テグシナの人達元気かな」
 紗希が呑気に言う。
「しぶといやつらだし、どうにかやってるんじゃないか」
 篁文はそう言い、キヨは顔をしかめた。
「偶然に次元接触するとかないだろうな」
「気にはなるが、また戦いをしかけられるのは遠慮したいであるなあ」
 ドルメが苦笑する。
「そう言えばドルメ、一族の幹部になったんだって?」
 パセが言うと、ドルメは嬉しそうに笑った。
「うむ、そうなのである。面倒は増えるであるが、名誉であるよ」
「そういうパセも、学校を作ったんでしょ」
 紗希が言うと、パセはもじもじとしながら言った。
「うふふ。夢だったのよねえ。誰でも入れる学校。計算や読み書きができれば仕事にもつける。そうしたら犯罪や危険な魔物狩りで子供が命を落とさなくて済む。
 紗希はどうなの。夢は叶いそう?」
「私?私は……どうかなあ」
 紗希は短く嘆息した。
「紗希の夢って?フードファイター志望とか聞いたけど本当に?」
 ショウが真面目に訊くのに、紗希がガクッと肩を落とした。
「違います。記者よ。記者になって――まあ……色々世間の裏側をね、暴いたり」
「そう言えば篁文の夢は何なんだ?」
 キヨが訊く。
「俺は、昔の夢は叶いそうにないから、このままが望みかな」
 皆、「え!?」という顔を向けた。
「叶いそうにないとは、諦めるのであるか?」
「宇宙飛行士になりたかったんだが、目が悪くなって来てな。どうしても不利なんだよ」
 沢松とショウが気の毒そうな顔になる。
「手はないのか?」
 セレエが訊くが、
「サプリも飲んだ。好きな読書もセーブしたし、どんなに流行ってるテレビも我慢したが、だめだった。手術も考えたが、人によって効果の持続時間に差があると聞いて、それもどうかと思ってな。
 でも、いいんだ。宇宙飛行士にならなくてもこうしてここで異次元生物に会えるからな。似たようなものだ」
と篁文は淡々と答える。
「まあ言われてみれば、異次元生物も、宇宙人みたいなものだな」
 沢松が言って、皆、各々納得したらしい。
「そういうセレエはどうなんですか?」
 ヨウゼに訊かれ、セレエはフフンと笑った。
「たくさんの異次元人に会って、色んな異次元世界を訪れたいな!」
「おお。楽しそうですねえ」
 和気あいあいと楽しくしゃべっていると、サイレンが鳴り出す。その途端に、皆の顔は引き締まり、走り出す。
『次元震を感知しました』
「さあて。こんどはどんな異次元世界が現れるやら」
 そして装備を装着し、飛び出して行くのだった。





しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

INNER NAUTS(インナーノーツ) 〜精神と異界の航海者〜

SunYoh
SF
ーー22世紀半ばーー 魂の源とされる精神世界「インナースペース」……その次元から無尽蔵のエネルギーを得ることを可能にした代償に、さまざまな災害や心身への未知の脅威が発生していた。 「インナーノーツ」は、時空を超越する船<アマテラス>を駆り、脅威の解消に「インナースペース」へ挑む。 <第一章 「誘い」> 粗筋 余剰次元活動艇<アマテラス>の最終試験となった有人起動試験は、原因不明のトラブルに見舞われ、中断を余儀なくされたが、同じ頃、「インナーノーツ」が所属する研究機関で保護していた少女「亜夢」にもまた異変が起こっていた……5年もの間、眠り続けていた彼女の深層無意識の中で何かが目覚めようとしている。 「インナースペース」のエネルギーを解放する特異な能力を秘めた亜夢の目覚めは、即ち、「インナースペース」のみならず、物質世界である「現象界(この世)」にも甚大な被害をもたらす可能性がある。 ーー亜夢が目覚める前に、この脅威を解消するーー 「インナーノーツ」は、この使命を胸に<アマテラス>を駆り、未知なる世界「インナースペース」へと旅立つ! そこで彼らを待ち受けていたものとは…… ※この物語はフィクションです。実際の国や団体などとは関係ありません。 ※SFジャンルですが殆ど空想科学です。 ※セルフレイティングに関して、若干抵触する可能性がある表現が含まれます。 ※「小説家になろう」、「ノベルアップ+」でも連載中 ※スピリチュアル系の内容を含みますが、特定の宗教団体等とは一切関係無く、布教、勧誘等を目的とした作品ではありません。

❤️レムールアーナ人の遺産❤️

apusuking
SF
 アランは、神代記の伝説〈宇宙が誕生してから40億年後に始めての知性体が誕生し、更に20億年の時を経てから知性体は宇宙に進出を始める。  神々の申し子で有るレムルアーナ人は、数億年を掛けて宇宙の至る所にレムルアーナ人の文明を築き上げて宇宙は人々で溢れ平和で共存共栄で発展を続ける。  時を経てレムルアーナ文明は予知せぬ謎の種族の襲来を受け、宇宙を二分する戦いとなる。戦争終焉頃にはレムルアーナ人は誕生星系を除いて衰退し滅亡するが、レムルアーナ人は後世の為に科学的資産と数々の奇跡的な遺産を残した。  レムールアーナ人に代わり3大種族が台頭して、やがてレムルアーナ人は伝説となり宇宙に蔓延する。  宇宙の彼方の隠蔽された星系に、レムルアーナ文明の輝かしい遺産が眠る。其の遺産を手にした者は宇宙を征するで有ろ。但し、辿り付くには3つの鍵と7つの試練を乗り越えねばならない。  3つの鍵は心の中に眠り、開けるには心の目を開いて真実を見よ。心の鍵は3つ有り、3つの鍵を開けて真実の鍵が開く〉を知り、其の神代記時代のレムールアーナ人が残した遺産を残した場所が暗示されていると悟るが、闇の勢力の陰謀に巻き込まれゴーストリアンが破壊さ

美少女アンドロイドが空から落ちてきたので家族になりました。

きのせ
SF
通学の途中で、空から落ちて来た美少女。彼女は、宇宙人に作られたアンドロイドだった。そんな彼女と一つ屋根の下で暮らすことになったから、さあ大変。様々な事件に巻き込まれていく事に。最悪のアンドロイド・バトルが開幕する

王子を身籠りました

青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。 王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。 再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

発作ぐらい、ハンデと思ってね

ブレイブ
SF
生まれつき病弱な少女、壊七。彼女は病弱でありながら天才でもある、壊七はエージェント組織、ディザスターに所属しており、ある日、任務帰りに新人エージェントと出会ったが、その新人は独断行動をする問題児であった。壊七は司令官から問題児である新人エージェントの指導を任された

処理中です...