ディメンション・アクシデント

JUN

文字の大きさ
上 下
43 / 48

侵略宣言するヒト種

しおりを挟む
 侵入者は、ダイガの兵士達だった。
 人数は8人で、次元トンネルを警備しているアクシルの兵士にとってはそう強敵ではない。何せ、昏倒させる雄叫びをあげるわけではない。
 そちらはアクシル兵に任せ、特殊次元庁は次元の揺らぎに注目する。
「竜?いや、大トカゲであるか?」
 子馬ほどはある大きさで、トカゲという名前をつけるには、いくら頭に大をつけたとしても大きすぎるだろうと地球人達は思ったが、ドルメとパセにはなじみがある動物だ。
「淡泊で美味いであるよ」
「皮が防具とかになるのよねえ、あたしのところでは」
「ふうん。地球ではハンドバッグだな」
「どこでも利用されているであるか」
「これはどうかわからないけどね」
 言っている間に、それとは別の影も見えて来る。
「ヒト?」
 こちらを見て、指さし、何か言い合いながら、警戒しているようだ。
 どうも、大トカゲは彼らと戦っていたらしいと、その状況から察せられた。
 大トカゲは、いきなり背後に篁文達が現れて戸惑ったようで、鋭い歯が並んだ大きな口を開け、カチカチという威嚇音らしき音を立て始める。
 と、横手で大きな音がした。
「何だ!?」
 思わずそちらを全員が見た。人が3人くらい並んで通れるくらいの穴が壁に開いて、その向こう側の空間が覗いている。
「別の次元世界!?こんな風になってるの!?」
 パセが素っ頓狂な声を上げて、忙しく耳を動かす。
「来るぞ!」
「気を抜くな!」
 篁文とショウが注意を促し、次元の向こうの異世界生物に向き直る。
 大トカゲは驚くほどのスピードで這い出し、壁に開いた穴に潜り込んで行く。
「早っ!」
 キヨが声を上げた。
 そして、続いてヒトがゆっくりとこちら側に出て来た。
 緊張感が辺りを覆う。
 その中で、何か榴弾型の物がヒュウウと音を立ててひしゃげた金属塊のある次元ポイントに飛んで行き、見えない何かにぶつかったかのようにひしゃげ、激しい振動を引き起こして消えた。
 篁文達も異世界人達も、眩暈を堪え、戻るのを待つ。
 そこで改めて、彼らに接触を試みた。手近な人に翻訳機を差し出し、自分の耳を示す。彼は中央にいたボスっぽい人に伺うような目を向けた。30前くらいの男だ。
 彼は篁文に近付いて来ると、翻訳機を受け取り、篁文の耳を見て、同じように自分の耳に装着した。
「こんにちは」
「!驚いたな」
「俺達は、ラクシー人と地球人……まあ、色んな次元の人間です。あなた方は?」
 彼はこちらを見廻した。
「我々はテグシナ人。俺はロイナス」
「俺は篁文です。よろしく。
 俺達は、友好的な存在と戦うつもりはありません。このまま帰るのであれば、手出しはしません」
 ロイナスは、篁文達をもう1度値踏みするような目で眺め、ニヤリと笑った。
「俺達の惑星は滅びかけている。世界は熱に焼かれ、辛うじて生き残ったのはこの集団だけだ」
 篁文達が、視線を見交わす。
「新しい土地を探している。お前達の惑星を頂くとちょうどいい」
 ロイナスの背後の20人余りが、槍や剣を構え直した。
 篁文達も、武器を構え直す。
 篁文は、スッと銃を大トカゲに向け、撃った。大トカゲは膨張し、体液を撒き散らして破裂した。
 息を呑むテグシナ人達に向かって、再度告げる。
「はいそうですかとは言えませんので。お帰り頂けるとお互いの為にいいと思いますが」
 大トカゲの遺体を呆然と見ていたロイナスは、篁文に目を戻して歯を剥き出しにした。
「面白い。力こそすべて。それが我らテグシナの生き方。お前らを皆殺しにして、ここをいただく事に変わりはないわ!
 どうせこのままでは滅ぶのみ。ならば、同じ事」
 緊張が満ちる。
「我らを舐めない事だな」
 ロイナス達はそう言って、一旦テグシナ側に帰った。
 この時、皆が思った。これで彼らの意志に関わらず、次元が離れればおしまいだ、と。
 しかしそうはならなかったのである。


しおりを挟む
ツギクルバナー
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

王子を身籠りました

青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。 王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。 再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。 そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて 「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」 もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね? 3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。 4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。 1章が書籍になりました。

断る――――前にもそう言ったはずだ

鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」  結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。  周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。  けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。  他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。 (わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)  そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。  ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。  そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?

【完結】月よりきれい

悠井すみれ
歴史・時代
 職人の若者・清吾は、吉原に売られた幼馴染を探している。登楼もせずに見世の内情を探ったことで袋叩きにあった彼は、美貌に加えて慈悲深いと評判の花魁・唐織に助けられる。  清吾の事情を聞いた唐織は、彼女の情人の振りをして吉原に入り込めば良い、と提案する。客の嫉妬を煽って通わせるため、形ばかりの恋人を置くのは唐織にとっても好都合なのだという。  純心な清吾にとっては、唐織の計算高さは遠い世界のもの──その、はずだった。 嘘を重ねる花魁と、幼馴染を探す一途な若者の交流と愛憎。愛よりも真実よりも美しいものとは。 第9回歴史・時代小説大賞参加作品です。楽しんでいただけましたら投票お願いいたします。 表紙画像はぱくたそ(www.pakutaso.com)より。かんたん表紙メーカー(https://sscard.monokakitools.net/covermaker.html)で作成しました。

命を狙われたお飾り妃の最後の願い

幌あきら
恋愛
【異世界恋愛・ざまぁ系・ハピエン】 重要な式典の真っ最中、いきなりシャンデリアが落ちた――。狙われたのは王妃イベリナ。 イベリナ妃の命を狙ったのは、国王の愛人ジャスミンだった。 短め連載・完結まで予約済みです。設定ゆるいです。 『ベビ待ち』の女性の心情がでてきます。『逆マタハラ』などの表現もあります。苦手な方はお控えください、すみません。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

【完結】辺境伯令嬢は新聞で婚約破棄を知った

五色ひわ
恋愛
 辺境伯令嬢としてのんびり領地で暮らしてきたアメリアは、カフェで見せられた新聞で自身の婚約破棄を知った。アメリアは真実を確かめるため、3年ぶりに王都へと旅立った。 ※本編34話、番外編『皇太子殿下の苦悩』31+1話、おまけ4話

処理中です...