ディメンション・アクシデント

JUN

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新世紀と帰って来た殺し屋改め秘密工作員

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 アクシルと日本が、間に次元接触空間を挟んで接続してしまった。大ニュースどころの騒ぎではない。
 しかし、それに対処する部隊として、アクシルの特殊次元対策課を特殊次元庁と改め、共同運営機関とする事が決定した。
 そのどさくさ紛れに、プラットホームも設置して、日本は、アクシル、デルザとも国交を結んだ。
 他の国もその技術力に興味を示したが、どちらも、あまり積極的ではなかった。とある大統領との会談やザイネやダイガの様子から、交流は限定的に、段階を追って広げて行くべきと判断されたらしい。
 それでもネットに上がった篁文達の動画は恐ろしい数の再生数になり、篁文は「ジャパニーズ・ニンジャ」とか言われていたし、パセは驚愕の猫耳娘として人気になった。
「紗希も、フードファイターとしてデビューするいい機会じゃないか」
「まだ言うか!」
 それに皆は笑っていた。
 ドルメもパセも特殊次元庁に勤める事になっているし、セレエもルルカと共に研究職として就職する。篁文と紗希は高校卒業までは学校に戻るが、アルバイトで参加する事になっていた。
 ドルメもパセも、基本は自国にいるので、もう影響を受けて危険な事態になる事も無いという。
「しかし、篁文も思い切った事をするなあ」
「男には、格好をつけなければいけない時があるである」
 ドルメはセレエの言葉に頷いて言うと、篁文の背中をバンバンと叩いた。
「学校はどうなんだ?」
「ああ。相変わらずといったところかな。拡散した動画のせいで、余計に怖がられているみたいだ」
 紗希は篁文の答えるのを聞いて複雑な顔をする。
 遠巻きにしているのは同じだが、実は違う。「殺し屋だと思っていたけど、本当は特殊工作員だった」「凄い」「カッコいい」というわけで、女子は誰が手を出すのかとお互いに牽制し合い、加えて紗希やパセやルルカとはどういう関係かと探っている最中で、男子は陰でリスペクトして、話しかけるのも恐れ多いと言っている。
「お前も不憫なやつだな」
 セレエが、篁文に同情の目を向けた。
「ご両親もいい方でしたねえ」
 ヨウゼは思い出しながら言った。
 篁文が戻った時、父親は
「よくやった」
と肩を叩いた。母親は、10キロも痩せていたが、ラッキーと笑っていた。
 ただ、父親はこうも言った。
「紗希ちゃんと約束したんだって?男なら約束は守らんとなあ」
 紗希が約束を持ち出すのが恐ろしい篁文だった。フードファイター志望者に付き合う自信は無い、と。
 しかし篁文は、ただ、
「わかった」
と答えるだけだった。
 なにはともあれ、前よりは安心だ。
「これからもよろしくお願いしますよ」
 皆は思い思いの飲み物のグラスを掲げ、
「乾杯!」
と声を上げた。





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