31 / 48
大激震
しおりを挟む
アクシルも戦争と無関係ではいられない。確実な次元移送のノウハウを奪取する事を狙ってか、その手段を叩き潰しておこうというつもりか、特殊次元対策課と研究所は攻撃目標になった。
いつかの朝、トレーニング帰りにトラックで押しかけて来た集団は見かけたが、今度は堂々とザイネの軍服を着ていた。
アクシルの軍人達が応戦しているが、その間にも次元震は確認される。
篁文は1人で脱出し、走って近くのパトカーに合流して、現場に向かった。
接触次元から出て来たのは敵意満々のイノシシのような敵性生物で、撃ち、切る。辺りは、血と飛び散った肉片、転がった原型のわかる死体、中途半端に体が無くなっている死体でいっぱいだ。
しかもそこへザイネの小隊が現れ、武器を奪取しようと攻撃してくる。
こういう時こそ雄叫びを上げてマヒさせるサル型がいればいいのに、上手く行かないものだ。
ザイネの攻撃が檻を作るロボットを直撃し、檻が切れた。
「うわ、何だ!?」
「撃て、撃て!」
イノシシはザイネの兵士に向かって行った。
ザイネ兵は自動小銃を撃つが、それで仕留められるなら特殊次元対策課はできていない。篁文はウンザリする思いで片っ端から銃で撃って行った。
イノシシが膨張し、破裂する。
それを近くにいたザイネ兵はもろに浴びる事になる。
「う……うわああ!」
腰を抜かす者もいれば、吐く者もいるし、失神する者もいた。
残った者は気圧されたように篁文を見た。
「し、死神……」
篁文は無表情の下で、殺し屋から死神になったか、と呑気に考えていた。
「う、殺せ!撃て!」
指揮官が裏返った声を張り上げるのに、銃を向ける。
全員が蒼白になった。
が、勿論スタンモードだ。発射音の後、爆散するでもなく痙攣して倒れる指揮官を凝視する兵達を、なるべく古参と思われる者から倒していく。
指揮できる者がいなくなったところでアクシルの軍が連絡を受けて現れ、彼らは全員捕縛されて行った。
「俺も人に銃を向けてしまったな」
篁文は小さく嘆息して、対策課に戻って行った。
ヨウゼはいつも通りに戻って来た篁文に安堵の息をついて、それから腹立たし気に言った。
「この行いは、戦後問題になりますよ。いえ、します」
「大丈夫?」
「俺は平気ですよ。でも、今後も邪魔をされるのは困りますね。取り敢えず、ロボットの修理はできますか」
「問題ないわ。予備もあるしね」
やれやれとコーヒーを啜った時、視界がぶれるほどの何かが起こった。
次元震の検出を感知して狂ったように警報機が鳴り響く。
「何だ、一体」
覚えのある独特の眩暈だ。
「これは、地球からアクシルへ来た時の眩暈に似ています」
篁文もヨウゼもルルカも膝をついている。この対策課に起こっている事なのかと思ったが、廊下でも悲鳴がしていた。
「大変だわ!」
端末をいじっていたルルカが、血相を変えている。
「ダイガに次元移送の次元震が見られたのでミンサも報復のために次元移送で爆弾を発射――でいいのかしらね。そう、速報が出ているわ。
それがもしかしたら、どこかでぶつかるか何かしたのかしら。それに、次元接触も起こっていたら?」
3人はお互いに黙っ考えた。
「途中でぶつかるものなのかね?」
「わからないわ。わかっている事の方が少ないのが次元よ」
「よくわからないまま使うのは良くないですよ。取扱説明書はよく読んでから」
「面倒じゃないの。よっぽどじゃないとわかるもの」
「ルルカ、勘で使うと思わぬ事故が起こりますよ」
「い、今はそういう事を言ってる場合じゃないでしょ!」
そう文句を言うルルカとヨウゼは、篁文よりも顔色が悪い。副脳のあるラクシー人の方が、こういうものに弱いのかも知れないと篁文は思った。
「とにかく、次元震の現場に行きます」
篁文が立ち上がると、ヨウゼとルルカは止めた。
「何もわからなくて危険すぎるわ!」
「これ以上の危険を、篁文に背負わせることは反対だ。やめなさい」
「ありがとうございます。でも、このままだと、気になるじゃないですか」
篁文は部屋を出て分析室に行くと、倒れた職員の間から次元震の中心地点を表す地図を見て取る。どうも、この研究所の至近距離らしい。
装備一式を着けて、とりあえず外へ出た。
いつかの朝、トレーニング帰りにトラックで押しかけて来た集団は見かけたが、今度は堂々とザイネの軍服を着ていた。
アクシルの軍人達が応戦しているが、その間にも次元震は確認される。
篁文は1人で脱出し、走って近くのパトカーに合流して、現場に向かった。
接触次元から出て来たのは敵意満々のイノシシのような敵性生物で、撃ち、切る。辺りは、血と飛び散った肉片、転がった原型のわかる死体、中途半端に体が無くなっている死体でいっぱいだ。
しかもそこへザイネの小隊が現れ、武器を奪取しようと攻撃してくる。
こういう時こそ雄叫びを上げてマヒさせるサル型がいればいいのに、上手く行かないものだ。
ザイネの攻撃が檻を作るロボットを直撃し、檻が切れた。
「うわ、何だ!?」
「撃て、撃て!」
イノシシはザイネの兵士に向かって行った。
ザイネ兵は自動小銃を撃つが、それで仕留められるなら特殊次元対策課はできていない。篁文はウンザリする思いで片っ端から銃で撃って行った。
イノシシが膨張し、破裂する。
それを近くにいたザイネ兵はもろに浴びる事になる。
「う……うわああ!」
腰を抜かす者もいれば、吐く者もいるし、失神する者もいた。
残った者は気圧されたように篁文を見た。
「し、死神……」
篁文は無表情の下で、殺し屋から死神になったか、と呑気に考えていた。
「う、殺せ!撃て!」
指揮官が裏返った声を張り上げるのに、銃を向ける。
全員が蒼白になった。
が、勿論スタンモードだ。発射音の後、爆散するでもなく痙攣して倒れる指揮官を凝視する兵達を、なるべく古参と思われる者から倒していく。
指揮できる者がいなくなったところでアクシルの軍が連絡を受けて現れ、彼らは全員捕縛されて行った。
「俺も人に銃を向けてしまったな」
篁文は小さく嘆息して、対策課に戻って行った。
ヨウゼはいつも通りに戻って来た篁文に安堵の息をついて、それから腹立たし気に言った。
「この行いは、戦後問題になりますよ。いえ、します」
「大丈夫?」
「俺は平気ですよ。でも、今後も邪魔をされるのは困りますね。取り敢えず、ロボットの修理はできますか」
「問題ないわ。予備もあるしね」
やれやれとコーヒーを啜った時、視界がぶれるほどの何かが起こった。
次元震の検出を感知して狂ったように警報機が鳴り響く。
「何だ、一体」
覚えのある独特の眩暈だ。
「これは、地球からアクシルへ来た時の眩暈に似ています」
篁文もヨウゼもルルカも膝をついている。この対策課に起こっている事なのかと思ったが、廊下でも悲鳴がしていた。
「大変だわ!」
端末をいじっていたルルカが、血相を変えている。
「ダイガに次元移送の次元震が見られたのでミンサも報復のために次元移送で爆弾を発射――でいいのかしらね。そう、速報が出ているわ。
それがもしかしたら、どこかでぶつかるか何かしたのかしら。それに、次元接触も起こっていたら?」
3人はお互いに黙っ考えた。
「途中でぶつかるものなのかね?」
「わからないわ。わかっている事の方が少ないのが次元よ」
「よくわからないまま使うのは良くないですよ。取扱説明書はよく読んでから」
「面倒じゃないの。よっぽどじゃないとわかるもの」
「ルルカ、勘で使うと思わぬ事故が起こりますよ」
「い、今はそういう事を言ってる場合じゃないでしょ!」
そう文句を言うルルカとヨウゼは、篁文よりも顔色が悪い。副脳のあるラクシー人の方が、こういうものに弱いのかも知れないと篁文は思った。
「とにかく、次元震の現場に行きます」
篁文が立ち上がると、ヨウゼとルルカは止めた。
「何もわからなくて危険すぎるわ!」
「これ以上の危険を、篁文に背負わせることは反対だ。やめなさい」
「ありがとうございます。でも、このままだと、気になるじゃないですか」
篁文は部屋を出て分析室に行くと、倒れた職員の間から次元震の中心地点を表す地図を見て取る。どうも、この研究所の至近距離らしい。
装備一式を着けて、とりあえず外へ出た。
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
INNER NAUTS(インナーノーツ) 〜精神と異界の航海者〜
SunYoh
SF
ーー22世紀半ばーー
魂の源とされる精神世界「インナースペース」……その次元から無尽蔵のエネルギーを得ることを可能にした代償に、さまざまな災害や心身への未知の脅威が発生していた。
「インナーノーツ」は、時空を超越する船<アマテラス>を駆り、脅威の解消に「インナースペース」へ挑む。
<第一章 「誘い」>
粗筋
余剰次元活動艇<アマテラス>の最終試験となった有人起動試験は、原因不明のトラブルに見舞われ、中断を余儀なくされたが、同じ頃、「インナーノーツ」が所属する研究機関で保護していた少女「亜夢」にもまた異変が起こっていた……5年もの間、眠り続けていた彼女の深層無意識の中で何かが目覚めようとしている。
「インナースペース」のエネルギーを解放する特異な能力を秘めた亜夢の目覚めは、即ち、「インナースペース」のみならず、物質世界である「現象界(この世)」にも甚大な被害をもたらす可能性がある。
ーー亜夢が目覚める前に、この脅威を解消するーー
「インナーノーツ」は、この使命を胸に<アマテラス>を駆り、未知なる世界「インナースペース」へと旅立つ!
そこで彼らを待ち受けていたものとは……
※この物語はフィクションです。実際の国や団体などとは関係ありません。
※SFジャンルですが殆ど空想科学です。
※セルフレイティングに関して、若干抵触する可能性がある表現が含まれます。
※「小説家になろう」、「ノベルアップ+」でも連載中
※スピリチュアル系の内容を含みますが、特定の宗教団体等とは一切関係無く、布教、勧誘等を目的とした作品ではありません。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
❤️レムールアーナ人の遺産❤️
apusuking
SF
アランは、神代記の伝説〈宇宙が誕生してから40億年後に始めての知性体が誕生し、更に20億年の時を経てから知性体は宇宙に進出を始める。
神々の申し子で有るレムルアーナ人は、数億年を掛けて宇宙の至る所にレムルアーナ人の文明を築き上げて宇宙は人々で溢れ平和で共存共栄で発展を続ける。
時を経てレムルアーナ文明は予知せぬ謎の種族の襲来を受け、宇宙を二分する戦いとなる。戦争終焉頃にはレムルアーナ人は誕生星系を除いて衰退し滅亡するが、レムルアーナ人は後世の為に科学的資産と数々の奇跡的な遺産を残した。
レムールアーナ人に代わり3大種族が台頭して、やがてレムルアーナ人は伝説となり宇宙に蔓延する。
宇宙の彼方の隠蔽された星系に、レムルアーナ文明の輝かしい遺産が眠る。其の遺産を手にした者は宇宙を征するで有ろ。但し、辿り付くには3つの鍵と7つの試練を乗り越えねばならない。
3つの鍵は心の中に眠り、開けるには心の目を開いて真実を見よ。心の鍵は3つ有り、3つの鍵を開けて真実の鍵が開く〉を知り、其の神代記時代のレムールアーナ人が残した遺産を残した場所が暗示されていると悟るが、闇の勢力の陰謀に巻き込まれゴーストリアンが破壊さ
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
魔術師のロボット~最凶と呼ばれたパイロットによる世界変革記~
MS
SF
これは戦争に巻き込まれた少年が世界を変えるために戦う物語。
戦歴2234年、人型ロボット兵器キャスター、それは魔術師と呼ばれる一部の人しか扱えない兵器であった。
そのパイロットになるためアルバート・デグレアは軍の幼年学校に通っていて卒業まであと少しの時だった。
親友が起こしたキャスター強奪事件。
そして大きく変化する時代に巻き込まれていく。
それぞれの正義がぶつかり合うなかで徐々にその才能を開花させていき次々と大きな戦果を挙げていくが……。
新たな歴史が始まる。
************************************************
小説家になろう様、カクヨム様でも連載しております。
投降は当分の間毎日22時ごろを予定しています。
【完結】私だけが知らない
綾雅(要らない悪役令嬢1/7発売)
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。
優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。
やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。
記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位
2023/12/19……番外編完結
2023/12/11……本編完結(番外編、12/12)
2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位
2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」
2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位
2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位
2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位
2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位
2023/08/14……連載開始
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる