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異世界の世界事情
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パワードスーツを付けた紗希とセレエが倒れたラクシー人を抱えて避難させ、篁文とドルメとパセがサル型と虫型に対峙する。
スティックの柄の部分はほぼ同じだが、起動させると形が違う。
篁文のは50センチほど伸び、その部分が刃になる。ドルメは柄が更に1メートルほど伸び、その先に刃が付いている。パセはそもそも柄も短めで、10センチの刃が延びても小型だ。
形や長さに差はあるが、刃の部分が特有の振動を発しているのと、スイッチを切り替えると刃の部分がただの金属になり、ヒトを鎮圧するのにいい、電流の流れるスタンバーになる。
銃は皆同じ。細胞を内側から膨張させ、破裂させるキルモードと、スイッチで切り返ると、ヒトを昏倒させる鎮圧モードになる。
この対人機能が付けられたのは、異世界生物と全てをひっくるめて排斥しようという危険な人がいるからだ。
まさかサル型や虫型にするような攻撃をして殺すわけにもいかないし、これ以上の武器を携行するのも大変だというのが理由だ。
「これで一応は整ったと思うが、何か思いついた事があれば、いつでも提案して欲しい」
ヨウゼが言い、ルルカが付け加える。
「虫型は特殊な電波を出し合っているみたいでね。それをキャッチして居場所が分かるらしいわ。一応はそれで捜索もできそうだけど、わからない事の方が多いから、それを過信するわけにはいかないわね」
「それでもかなり違うのである」
「そうですね。ありがとうございます」
「デルザの技術が使えれば、銃ももっと小型化できるのに」
セレエはぶつぶつ言い、パセは欠伸をし、紗希はパワードスーツを着て、
「むはははは!無敵になった気分よ!」
とはしゃぎまわる。
これが、いつも通りの光景だ。
待機中の時間は勉強や訓練に当てられる。今は、勉強だ。
アクシル語会話は、各々マンツーマンで、連絡係兼ケアサポート係についてもらう。篁文と紗希はマルマだが、篁文は会話に問題がほぼ無いとして、隣で、大まかな世界事情などについての簡単な本を読んでいる。
「私は公園です」
間違いなく、紗希はヒトであって公園ではない。
「惜しいですよ。『私は公園にいます』ですね」
「ううう……」
聞いていると面白いが、ラクシーの世界事情も面白い。
ラクシーは、長く大きな戦争をしていないらしい。しかし、内紛や局地的な戦闘はたまに起こっているらしいし、国と国との睨み合い、経済戦争などはあるそうだ。何とも地球と似ている。
民主国家であるアクシル、ミンサ、マトンザ、軍中心のダイガ、ザイネ、宗教国家のトラン。これがラクシーの大きな国で、あとは小さな国家がわらわらと存在している。
今は主にミンサとダイガが国境を巡って水面下で火花を散らし、異なる神を敬うトランと小国家群の一部が対立している。新しいエネルギーと宇宙に進出していく技術を開発しようとしているのはどこの国も同じで、次元振動という理論でアクシルが頭一つ分先んじていたところで、あの事故だったらしい。
「ふうん。次元振動は、クリーンなエネルギーを目指すものだったのか。加えて、言わばワープのようなもので、宇宙に出る構想だったのか」
覗き込んで来たセレエが、そう言う。
セレエも会話は問題ないとして本を読んでいるところだったが、自分が読んでいた本を読み終え、篁文の本を覗き込んだらしい。
「成功していれば、画期的な発明になっただろうな」
「実験に失敗は付きものさ。どれだけ修正して次に生かせるかだね。
次は、別の次元と接触して異世界生物を呼びこまない事を祈るよ」
「元の、誰かの次元と接続する可能性も否定できないぞ」
「否定はできないけど、期待できるほど可能性が高いとも思えないね」
セレエはヒョイと肩を竦めて、次の本を探しに立った。
スティックの柄の部分はほぼ同じだが、起動させると形が違う。
篁文のは50センチほど伸び、その部分が刃になる。ドルメは柄が更に1メートルほど伸び、その先に刃が付いている。パセはそもそも柄も短めで、10センチの刃が延びても小型だ。
形や長さに差はあるが、刃の部分が特有の振動を発しているのと、スイッチを切り替えると刃の部分がただの金属になり、ヒトを鎮圧するのにいい、電流の流れるスタンバーになる。
銃は皆同じ。細胞を内側から膨張させ、破裂させるキルモードと、スイッチで切り返ると、ヒトを昏倒させる鎮圧モードになる。
この対人機能が付けられたのは、異世界生物と全てをひっくるめて排斥しようという危険な人がいるからだ。
まさかサル型や虫型にするような攻撃をして殺すわけにもいかないし、これ以上の武器を携行するのも大変だというのが理由だ。
「これで一応は整ったと思うが、何か思いついた事があれば、いつでも提案して欲しい」
ヨウゼが言い、ルルカが付け加える。
「虫型は特殊な電波を出し合っているみたいでね。それをキャッチして居場所が分かるらしいわ。一応はそれで捜索もできそうだけど、わからない事の方が多いから、それを過信するわけにはいかないわね」
「それでもかなり違うのである」
「そうですね。ありがとうございます」
「デルザの技術が使えれば、銃ももっと小型化できるのに」
セレエはぶつぶつ言い、パセは欠伸をし、紗希はパワードスーツを着て、
「むはははは!無敵になった気分よ!」
とはしゃぎまわる。
これが、いつも通りの光景だ。
待機中の時間は勉強や訓練に当てられる。今は、勉強だ。
アクシル語会話は、各々マンツーマンで、連絡係兼ケアサポート係についてもらう。篁文と紗希はマルマだが、篁文は会話に問題がほぼ無いとして、隣で、大まかな世界事情などについての簡単な本を読んでいる。
「私は公園です」
間違いなく、紗希はヒトであって公園ではない。
「惜しいですよ。『私は公園にいます』ですね」
「ううう……」
聞いていると面白いが、ラクシーの世界事情も面白い。
ラクシーは、長く大きな戦争をしていないらしい。しかし、内紛や局地的な戦闘はたまに起こっているらしいし、国と国との睨み合い、経済戦争などはあるそうだ。何とも地球と似ている。
民主国家であるアクシル、ミンサ、マトンザ、軍中心のダイガ、ザイネ、宗教国家のトラン。これがラクシーの大きな国で、あとは小さな国家がわらわらと存在している。
今は主にミンサとダイガが国境を巡って水面下で火花を散らし、異なる神を敬うトランと小国家群の一部が対立している。新しいエネルギーと宇宙に進出していく技術を開発しようとしているのはどこの国も同じで、次元振動という理論でアクシルが頭一つ分先んじていたところで、あの事故だったらしい。
「ふうん。次元振動は、クリーンなエネルギーを目指すものだったのか。加えて、言わばワープのようなもので、宇宙に出る構想だったのか」
覗き込んで来たセレエが、そう言う。
セレエも会話は問題ないとして本を読んでいるところだったが、自分が読んでいた本を読み終え、篁文の本を覗き込んだらしい。
「成功していれば、画期的な発明になっただろうな」
「実験に失敗は付きものさ。どれだけ修正して次に生かせるかだね。
次は、別の次元と接触して異世界生物を呼びこまない事を祈るよ」
「元の、誰かの次元と接続する可能性も否定できないぞ」
「否定はできないけど、期待できるほど可能性が高いとも思えないね」
セレエはヒョイと肩を竦めて、次の本を探しに立った。
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