9 / 48
新たな日課
しおりを挟む
早朝の人気の無い街路を走る。高いビルの立ち並ぶ中心部から、郊外の住宅街、そして公園へ。
自動販売機はこちらにも存在しており、飲み物、ちょっとしたお菓子、パン、新聞などが売られている。新聞はあるにはあるが、大抵の人は端末で読むらしく、新聞配達はないようだ。
学校は週休2日制、時間も9時から夕方までと、本当に日本と似ていて違和感がほとんどない。
この研究所のあった所が首都アレイで、特殊次元対策課もここに置かれる事になる。
次元が接触して敵性生物が出現すると思われる範囲はこのアレイにあり、篁文はランニングをしながら地理を把握しようとしていた。
研究所に戻って来ると、そのまま舗装された道から外れて庭に走って行く。そして、壁際のゴミ集積所の壁を蹴った勢いで2メートルの塀に飛び乗ると、そのまま走って、この前ベンチを置いて踏み荒らして以来道になった所へ飛び降りる。
研究施設から塀を隔てたこちら側に、寮があるのだ。
そして次は、物置として使われているらしい小さな建物の屋根に消火栓を踏み台にしてジャンプした後、隣の寮のある建物の非常階段の手すりに1メートルの隙間を飛び越えて飛び移る。この時、上の階の手すりに捕まって、足を曲げて2階の手すりを超えて非常階段に飛び込むようにする。
そしてそのまま屋上まで駆け上がり、中途半端な高さにあるパイプを潜り、階段で2段低くなっている屋上部分に飛び降りる。
よくわからないパイプを何本か飛び越えて中央付近へ行くと、やっと足を止めて、腕時計でタイムを確認する。
あとはしばらくここで、古武道の型をなぞり、部屋へ戻る途中で紗希の部屋のドアフォンを押してからシャワーを浴びる。
これが篁文の朝の日課だ。
この日も同じようにこなし、着替えて廊下に出る。すると、眠そうな顔で紗希が隣の部屋から出て来た。
「おはよ。ふあぁ。相変わらず早起きね。近所の鶏を起こして回ってるんじゃないの?」
「おはよう。寝ぐせが直ってないぞ」
「面倒臭いからいい」
「社会人だろう。ちゃんとしろ」
「やってぇ」
篁文は手櫛で紗希の髪を引き、すき、整えた。柔らかくてすぐに戻るのだ。
「まったく……」
「へへへ」
紗希は笑ってごまかし、篁文もいつもの事と肩を竦めて、並んで食堂へ向かう。
朝と夕の食事が出るのはありがたい。昼は適当に、店に入ったり屋台で何か買ったりしている。これもまた楽しい。
寮には特殊次元対策課の課員の他にも警察官や研究所員も入っており、食堂は既に半分くらい席が埋まっていた。
腕時計型の端末をセンサーにかざし、カウンターで食事の乗ったトレイを受け取る。
席は自由で、2人は空いたテーブルについた。
「いただきます。
今朝のは何だろうな。オムレツと、唐揚げ?」
「あ、白身の魚っぽいわよ」
「タラに似てるな。こっちはピーマンと人参みたいだし、白身魚のフライ野菜あんかけってところか」
「パンでなくご飯が欲しいところねえ、このメニュー」
「組み合わせに微妙に違和感を感じるな」
「そうね。まあ、この前のごはんにマカロニサラダの乗った丼も変だったけど」
「ああ。あれな」
2人で、頷き合いながらも、食べる。違和感を感じる事もあるが、味も見た目も不都合はない。薄い味を好むセレエは全体的に味が濃いと嘆いていたが、篁文と紗希は、地球にいるのと大差ない感じさえする。
ただお茶は、コーヒーと紅茶とハーブティーが主で、緑茶や抹茶はないようだ。紅茶があるなら緑茶もできると言いたいが、作り方の違いをそこまで覚えていないので、説明できない。なので、諦めるしかなかった。
デザートに付いていた小ぶりなプリンを食べる。
甘みと滑らかさと風味が違う。
これだけは、篁文は不満だった。
「さあ、今日はとうとう新しい武器を貰う日よ!」
ウキウキとする紗希に、不安しか感じない篁文だった。
自動販売機はこちらにも存在しており、飲み物、ちょっとしたお菓子、パン、新聞などが売られている。新聞はあるにはあるが、大抵の人は端末で読むらしく、新聞配達はないようだ。
学校は週休2日制、時間も9時から夕方までと、本当に日本と似ていて違和感がほとんどない。
この研究所のあった所が首都アレイで、特殊次元対策課もここに置かれる事になる。
次元が接触して敵性生物が出現すると思われる範囲はこのアレイにあり、篁文はランニングをしながら地理を把握しようとしていた。
研究所に戻って来ると、そのまま舗装された道から外れて庭に走って行く。そして、壁際のゴミ集積所の壁を蹴った勢いで2メートルの塀に飛び乗ると、そのまま走って、この前ベンチを置いて踏み荒らして以来道になった所へ飛び降りる。
研究施設から塀を隔てたこちら側に、寮があるのだ。
そして次は、物置として使われているらしい小さな建物の屋根に消火栓を踏み台にしてジャンプした後、隣の寮のある建物の非常階段の手すりに1メートルの隙間を飛び越えて飛び移る。この時、上の階の手すりに捕まって、足を曲げて2階の手すりを超えて非常階段に飛び込むようにする。
そしてそのまま屋上まで駆け上がり、中途半端な高さにあるパイプを潜り、階段で2段低くなっている屋上部分に飛び降りる。
よくわからないパイプを何本か飛び越えて中央付近へ行くと、やっと足を止めて、腕時計でタイムを確認する。
あとはしばらくここで、古武道の型をなぞり、部屋へ戻る途中で紗希の部屋のドアフォンを押してからシャワーを浴びる。
これが篁文の朝の日課だ。
この日も同じようにこなし、着替えて廊下に出る。すると、眠そうな顔で紗希が隣の部屋から出て来た。
「おはよ。ふあぁ。相変わらず早起きね。近所の鶏を起こして回ってるんじゃないの?」
「おはよう。寝ぐせが直ってないぞ」
「面倒臭いからいい」
「社会人だろう。ちゃんとしろ」
「やってぇ」
篁文は手櫛で紗希の髪を引き、すき、整えた。柔らかくてすぐに戻るのだ。
「まったく……」
「へへへ」
紗希は笑ってごまかし、篁文もいつもの事と肩を竦めて、並んで食堂へ向かう。
朝と夕の食事が出るのはありがたい。昼は適当に、店に入ったり屋台で何か買ったりしている。これもまた楽しい。
寮には特殊次元対策課の課員の他にも警察官や研究所員も入っており、食堂は既に半分くらい席が埋まっていた。
腕時計型の端末をセンサーにかざし、カウンターで食事の乗ったトレイを受け取る。
席は自由で、2人は空いたテーブルについた。
「いただきます。
今朝のは何だろうな。オムレツと、唐揚げ?」
「あ、白身の魚っぽいわよ」
「タラに似てるな。こっちはピーマンと人参みたいだし、白身魚のフライ野菜あんかけってところか」
「パンでなくご飯が欲しいところねえ、このメニュー」
「組み合わせに微妙に違和感を感じるな」
「そうね。まあ、この前のごはんにマカロニサラダの乗った丼も変だったけど」
「ああ。あれな」
2人で、頷き合いながらも、食べる。違和感を感じる事もあるが、味も見た目も不都合はない。薄い味を好むセレエは全体的に味が濃いと嘆いていたが、篁文と紗希は、地球にいるのと大差ない感じさえする。
ただお茶は、コーヒーと紅茶とハーブティーが主で、緑茶や抹茶はないようだ。紅茶があるなら緑茶もできると言いたいが、作り方の違いをそこまで覚えていないので、説明できない。なので、諦めるしかなかった。
デザートに付いていた小ぶりなプリンを食べる。
甘みと滑らかさと風味が違う。
これだけは、篁文は不満だった。
「さあ、今日はとうとう新しい武器を貰う日よ!」
ウキウキとする紗希に、不安しか感じない篁文だった。
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
忘却の艦隊
KeyBow
SF
新設された超弩級砲艦を旗艦とし新造艦と老朽艦の入れ替え任務に就いていたが、駐留基地に入るには数が多く、月の1つにて物資と人員の入れ替えを行っていた。
大型輸送艦は工作艦を兼ねた。
総勢250艦の航宙艦は退役艦が110艦、入れ替え用が同数。
残り30艦は増強に伴い新規配備される艦だった。
輸送任務の最先任士官は大佐。
新造砲艦の設計にも関わり、旗艦の引き渡しのついでに他の艦の指揮も執り行っていた。
本来艦隊の指揮は少将以上だが、輸送任務の為、設計に関わった大佐が任命された。
他に星系防衛の指揮官として少将と、退役間近の大将とその副官や副長が視察の為便乗していた。
公安に近い監査だった。
しかし、この2名とその側近はこの艦隊及び駐留艦隊の指揮系統から外れている。
そんな人員の載せ替えが半分ほど行われた時に中緊急警報が鳴り、ライナン星系第3惑星より緊急の救援要請が入る。
機転を利かせ砲艦で敵の大半を仕留めるも、苦し紛れに敵は主系列星を人口ブラックホールにしてしまった。
完全にブラックホールに成長し、その重力から逃れられないようになるまで数分しか猶予が無かった。
意図しない戦闘の影響から士気はだだ下がり。そのブラックホールから逃れる為、禁止されている重力ジャンプを敢行する。
恒星から近い距離では禁止されているし、システム的にも不可だった。
なんとか制限内に解除し、重力ジャンプを敢行した。
しかし、禁止されているその理由通りの状況に陥った。
艦隊ごとセットした座標からズレ、恒星から数光年離れた所にジャンプし【ワープのような架空の移動方法】、再び重力ジャンプ可能な所まで移動するのに33年程掛かる。
そんな中忘れ去られた艦隊が33年の月日の後、本星へと帰還を目指す。
果たして彼らは帰還できるのか?
帰還出来たとして彼らに待ち受ける運命は?
生贄姫の末路 【完結】
松林ナオ
児童書・童話
水の豊かな国の王様と魔物は、はるか昔にある契約を交わしました。
それは、姫を生贄に捧げる代わりに国へ繁栄をもたらすというものです。
水の豊かな国には双子のお姫様がいます。
ひとりは金色の髪をもつ、活発で愛らしい金のお姫様。
もうひとりは銀色の髪をもつ、表情が乏しく物静かな銀のお姫様。
王様が生贄に選んだのは、銀のお姫様でした。
人生を共にしてほしい、そう言った最愛の人は不倫をしました。
松茸
恋愛
どうか僕と人生を共にしてほしい。
そう言われてのぼせ上った私は、侯爵令息の彼との結婚に踏み切る。
しかし結婚して一年、彼は私を愛さず、別の女性と不倫をした。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる