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就職
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紗希は、黙々と日課のトレーニングをしている篁文を見ていた。
副脳がない異世界人にしか化け物の対処ができないからって、未成年者のすべきことではない。有効であるという新しい武器を制作中らしいが、危ないではないか。
無理にやれと命令はできない。そうヨウゼ達は言っていたが、他に対処できる人がいない以上、無言の圧力をかけられているも同じだ。
しかも、セレエと自分は逃げ腰なのに、ドルメはやる気満々に見えるし、パセは迷っているらしいし、篁文は無表情で何を考えているかわからない。
「篁文。そんな事をしてる場合?何してるのよ」
たまらず、声をかけた。
篁文は顔も向けずに、答える。
「ストレッチは重要だぞ。疎かにしていると、ケガの元になる」
「意味が違う!」
それで篁文はストレッチを終了し、汗を拭きながら紗希の方を向いた。
「わかってる。あの話を受けるのかどうか聞きたいんだろ」
紗希は、ムスッとしながら頷いた。
「やろうと思う」
「何で!?危ないのに!高校生だよ!?この前まで、学校に行ったらどうかって勧められてたんだよ!?」
篁文は黙って汗を拭いてから、短く、
「公務員だし」
と答えた。
「はあ!?」
「とにかく、俺はやるよ。紗希は危ないから、学校に行け。
文字の対比表は覚えたか?後で書き取りするぞ」
「自分が覚えたからって余裕ね。
じゃなくて!ちょっと!」
篁文はまだ文句を言う先に背を向けて、部屋に付いているバスルームに入った。
そこで嘆息し、小さく呟く。
「どんくさいお前の前にあれが現れたら、マヒしないお前でもまずいだろうが。それなのにお前は、きっと首を突っ込んで行くに決まってる」
紗希は反射的に文字の対比表を取り出しながら、水音が聞こえて来たバスルームのドアをキッと睨んだ。
「心配してるのに、何よ。ここだと殺し屋とか言われないから?猫耳がいいの?それとも職員の色っぽいお姉さんがいいの?
ああ、腹の立つ!異世界に来て、もうちょっと距離が縮まるかと思ったのに!」
枕を蹴ろうとして、見事に空振りをし、そのまま転ぶ。
天井が目に入る。
「危ないのに、絶対に突っ込んで行くのが篁文なのに。バカ!」
天井が、ぼやけて来た。
数日後、ヨウゼの元に異世界人達が集められ、各々の決定を伝える。
「吾輩は、提案を受けたいと思う。
体を使う仕事はうってつけであるしな」
ドルメは笑って答えた。
「あたしも、やるわ。他の仕事を探すのも面倒臭いしねえ」
パセはフニャッと笑って言った。
「俺も、受けようと思います」
篁文は短く答えた。そして、チラッと隣を横目で伺い見る。
紗希はあれ以来怒っており、話し合いはしていない。それでも、怒り出さないどころかニヤニヤと笑う様子に、篁文は薄気味悪さと嫌な予感を抑えられない。
「私もやります!」
紗希が嬉々として答え、篁文は予感が的中した事にガックリと肩を落とした。
「待て。ちょっと待って下さい。
紗希。本当に自分にできると思っているのか?自分の運動神経とかおっちょこちょいを忘れてないだろうな」
紗希はプッと頬を膨らませた。
「失礼ね、篁文。私だって自覚してるわよ」
皆「否定しないのか」と思った。
「でも、効果的な武器を試作中なんでしょ」
「お前がそれをちゃんと扱えるかどうかも怪しい」
「どこまでも失礼ね!」
ヨウゼはおっとりと笑いながらとりなした。
「まあまあ。訓練も勿論受けてもらうし、向き不向きで担当も決める事になるだろうし。安心し切ってもらうのはまずいが、まあ、取り敢えずは訓練を始めてからという事でいいかな?」
篁文もこういわれると、納得せざるを得ない。
というか、これでだめだと納得するに違いないと考えた。
「わかりました」
「んふふふ」
紗希がドヤ顔を向けて来るのに、イラッとする。
セレエは頭を掻きむしって、溜め息をついた。
「何だよう、もう!全員やるのかよ!僕だけ嫌とも、自信が無いとも言えないじゃないか!」
「セレエ君、無理は禁物ですよ」
「やりますよ、やります。
ただし、十中八九、僕は直接やり合うのは無理だと思う。サポート要員とか、そういうので」
ドルメがニカッと笑った。
「決まったであるな!」
ヨウゼはホッとしたような顔をし、次いで、申し訳なさそうな顔になって、頭を下げた。
「申し訳ない。そして、ありがとう」
全員の就職先が、決定した。
副脳がない異世界人にしか化け物の対処ができないからって、未成年者のすべきことではない。有効であるという新しい武器を制作中らしいが、危ないではないか。
無理にやれと命令はできない。そうヨウゼ達は言っていたが、他に対処できる人がいない以上、無言の圧力をかけられているも同じだ。
しかも、セレエと自分は逃げ腰なのに、ドルメはやる気満々に見えるし、パセは迷っているらしいし、篁文は無表情で何を考えているかわからない。
「篁文。そんな事をしてる場合?何してるのよ」
たまらず、声をかけた。
篁文は顔も向けずに、答える。
「ストレッチは重要だぞ。疎かにしていると、ケガの元になる」
「意味が違う!」
それで篁文はストレッチを終了し、汗を拭きながら紗希の方を向いた。
「わかってる。あの話を受けるのかどうか聞きたいんだろ」
紗希は、ムスッとしながら頷いた。
「やろうと思う」
「何で!?危ないのに!高校生だよ!?この前まで、学校に行ったらどうかって勧められてたんだよ!?」
篁文は黙って汗を拭いてから、短く、
「公務員だし」
と答えた。
「はあ!?」
「とにかく、俺はやるよ。紗希は危ないから、学校に行け。
文字の対比表は覚えたか?後で書き取りするぞ」
「自分が覚えたからって余裕ね。
じゃなくて!ちょっと!」
篁文はまだ文句を言う先に背を向けて、部屋に付いているバスルームに入った。
そこで嘆息し、小さく呟く。
「どんくさいお前の前にあれが現れたら、マヒしないお前でもまずいだろうが。それなのにお前は、きっと首を突っ込んで行くに決まってる」
紗希は反射的に文字の対比表を取り出しながら、水音が聞こえて来たバスルームのドアをキッと睨んだ。
「心配してるのに、何よ。ここだと殺し屋とか言われないから?猫耳がいいの?それとも職員の色っぽいお姉さんがいいの?
ああ、腹の立つ!異世界に来て、もうちょっと距離が縮まるかと思ったのに!」
枕を蹴ろうとして、見事に空振りをし、そのまま転ぶ。
天井が目に入る。
「危ないのに、絶対に突っ込んで行くのが篁文なのに。バカ!」
天井が、ぼやけて来た。
数日後、ヨウゼの元に異世界人達が集められ、各々の決定を伝える。
「吾輩は、提案を受けたいと思う。
体を使う仕事はうってつけであるしな」
ドルメは笑って答えた。
「あたしも、やるわ。他の仕事を探すのも面倒臭いしねえ」
パセはフニャッと笑って言った。
「俺も、受けようと思います」
篁文は短く答えた。そして、チラッと隣を横目で伺い見る。
紗希はあれ以来怒っており、話し合いはしていない。それでも、怒り出さないどころかニヤニヤと笑う様子に、篁文は薄気味悪さと嫌な予感を抑えられない。
「私もやります!」
紗希が嬉々として答え、篁文は予感が的中した事にガックリと肩を落とした。
「待て。ちょっと待って下さい。
紗希。本当に自分にできると思っているのか?自分の運動神経とかおっちょこちょいを忘れてないだろうな」
紗希はプッと頬を膨らませた。
「失礼ね、篁文。私だって自覚してるわよ」
皆「否定しないのか」と思った。
「でも、効果的な武器を試作中なんでしょ」
「お前がそれをちゃんと扱えるかどうかも怪しい」
「どこまでも失礼ね!」
ヨウゼはおっとりと笑いながらとりなした。
「まあまあ。訓練も勿論受けてもらうし、向き不向きで担当も決める事になるだろうし。安心し切ってもらうのはまずいが、まあ、取り敢えずは訓練を始めてからという事でいいかな?」
篁文もこういわれると、納得せざるを得ない。
というか、これでだめだと納得するに違いないと考えた。
「わかりました」
「んふふふ」
紗希がドヤ顔を向けて来るのに、イラッとする。
セレエは頭を掻きむしって、溜め息をついた。
「何だよう、もう!全員やるのかよ!僕だけ嫌とも、自信が無いとも言えないじゃないか!」
「セレエ君、無理は禁物ですよ」
「やりますよ、やります。
ただし、十中八九、僕は直接やり合うのは無理だと思う。サポート要員とか、そういうので」
ドルメがニカッと笑った。
「決まったであるな!」
ヨウゼはホッとしたような顔をし、次いで、申し訳なさそうな顔になって、頭を下げた。
「申し訳ない。そして、ありがとう」
全員の就職先が、決定した。
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