5 / 20
不動産屋社員の見解
しおりを挟む
丸安株式会社の総務部に頼まれて紹介したマンションのことで、我が不動産屋に質問があった。何か曰くのある物件なのではないか、と。
いわゆる事故物件と言われるものは、告知義務があり、必ず知らせなければならない。
しかし、いつまで告知するのかというのが難しい。単に「三人まで」というようなやり方だと、単純な話をすれば、各々が一ヶ月しか入居しなかったとすれば、たった三ヶ月でおしまいということになる。
反対に一年とかいう話にすれば、ずっと前の霊が居座って居ることもあると聞くので、これまただめだ。
どこかで、霊の寿命は二百数十年だとか書いてあったので、それならば告知義務の期間は、二百数十年にするべきなのかもしれない。
そんなことを先輩社員に言えば、
「真面目だなあ」
と呆れられた。
「でも、入居する方にしたら、大問題ですよ。
例えば先輩が入居した家にお化けが出て、告知義務の期間が過ぎてるので言いませんでした、なんて言われたらどうします?」
「訴えるな」
「でしょう」
私と先輩は頷き会って、そりゃそうだ、しかたない、と言い合った。
「でもその部屋、本当に何もないんだろう?」
先輩の言うとおり、事故物件でも何でも無い部屋だ。
「そうなんですよねえ」
日当たりも良く、駅からも近く、買い物するにも二十四時間開いているスーパーが近くにあって便利だ。建物もまだきれいだし、虫などが出るという訴えも、排水がどうのという訴えもない。唯一、エレベーターと駐車場がないことがマイナスだと言えるが、全体的に見て、いい物件だ。
それなのに、今回の入居者は、異音を聞いたと言うらしい。
実はその前の入居者も、夜中に異音がすると何度も言ってきた。そして、ある日逃げるように退居して行ったのだ。
「おかしいですよねえ」
「前の前の入居者は、事故で亡くなったらしいけど、家で亡くなったわけじゃないしなあ」
「それ以外の入居者は全員、生きて退居して行ってますしね」
揃って首をひねる。
「もしかしてその事故死した人、よっぽど家に未練があったんじゃないですか」
先輩は一応考えてから、首を振って苦笑した。
「そんなの、おかしくねえか。だったらそこら中に、事故物件が転がりそうなもんだろ」
「それもそうですよね」
二人はううむと唸り、結論を出した。
「きっと続けて、神経の細い人か、幻聴気味の人が入居したんですよ。たぶん」
「そうかあ?どっちも二十代の若い人だぞ。前の人は図太そうな人だったし、今回の入居者も大阪人だし」
「先輩。大阪人が繊細じゃないとか言い出すんじゃないでしょうね。怒られますよ」
最期は冗談に紛らせつつも、入居者の気のせいに違いないという見解で落ち着いたのだった。
いわゆる事故物件と言われるものは、告知義務があり、必ず知らせなければならない。
しかし、いつまで告知するのかというのが難しい。単に「三人まで」というようなやり方だと、単純な話をすれば、各々が一ヶ月しか入居しなかったとすれば、たった三ヶ月でおしまいということになる。
反対に一年とかいう話にすれば、ずっと前の霊が居座って居ることもあると聞くので、これまただめだ。
どこかで、霊の寿命は二百数十年だとか書いてあったので、それならば告知義務の期間は、二百数十年にするべきなのかもしれない。
そんなことを先輩社員に言えば、
「真面目だなあ」
と呆れられた。
「でも、入居する方にしたら、大問題ですよ。
例えば先輩が入居した家にお化けが出て、告知義務の期間が過ぎてるので言いませんでした、なんて言われたらどうします?」
「訴えるな」
「でしょう」
私と先輩は頷き会って、そりゃそうだ、しかたない、と言い合った。
「でもその部屋、本当に何もないんだろう?」
先輩の言うとおり、事故物件でも何でも無い部屋だ。
「そうなんですよねえ」
日当たりも良く、駅からも近く、買い物するにも二十四時間開いているスーパーが近くにあって便利だ。建物もまだきれいだし、虫などが出るという訴えも、排水がどうのという訴えもない。唯一、エレベーターと駐車場がないことがマイナスだと言えるが、全体的に見て、いい物件だ。
それなのに、今回の入居者は、異音を聞いたと言うらしい。
実はその前の入居者も、夜中に異音がすると何度も言ってきた。そして、ある日逃げるように退居して行ったのだ。
「おかしいですよねえ」
「前の前の入居者は、事故で亡くなったらしいけど、家で亡くなったわけじゃないしなあ」
「それ以外の入居者は全員、生きて退居して行ってますしね」
揃って首をひねる。
「もしかしてその事故死した人、よっぽど家に未練があったんじゃないですか」
先輩は一応考えてから、首を振って苦笑した。
「そんなの、おかしくねえか。だったらそこら中に、事故物件が転がりそうなもんだろ」
「それもそうですよね」
二人はううむと唸り、結論を出した。
「きっと続けて、神経の細い人か、幻聴気味の人が入居したんですよ。たぶん」
「そうかあ?どっちも二十代の若い人だぞ。前の人は図太そうな人だったし、今回の入居者も大阪人だし」
「先輩。大阪人が繊細じゃないとか言い出すんじゃないでしょうね。怒られますよ」
最期は冗談に紛らせつつも、入居者の気のせいに違いないという見解で落ち着いたのだった。
0
お気に入りに追加
6
あなたにおすすめの小説
心霊捜査官の事件簿 依頼者と怪異たちの狂騒曲
幽刻ネオン
ホラー
心理心霊課、通称【サイキック・ファンタズマ】。
様々な心霊絡みの事件や出来事を解決してくれる特殊公務員。
主人公、黄昏リリカは、今日も依頼者の【怪談・怪異譚】を代償に捜査に明け暮れていた。
サポートしてくれる、ヴァンパイアロードの男、リベリオン・ファントム。
彼女のライバルでビジネス仲間である【影の心霊捜査官】と呼ばれる青年、白夜亨(ビャクヤ・リョウ)。
現在は、三人で仕事を引き受けている。
果たして依頼者たちの問題を無事に解決することができるのか?
「聞かせてほしいの、あなたの【怪談】を」
魂(たま)抜き地蔵
Hiroko
ホラー
遠い過去の記憶の中にある五体の地蔵。
暗く濡れた山の中、私はなぜ母親にそこに連れて行かれたのか。
このお話は私の考えたものですが、これは本当にある場所で、このお地蔵さまは実在します。写真はそのお地蔵さまです。あまりアップで見ない方がいいかもしれません。
短編ホラーです。
ああ、原稿用紙十枚くらいに収めるつもりだったのに……。
どんどん長くなってしまいました。
花嫁ゲーム
八木愛里
ホラー
ある日、探偵事務所を営む九条アカネに舞い込んできた依頼は、「花嫁ゲーム」で死んだ妹の無念を晴らしてほしいという依頼だった。
聞けば、そのゲームは花嫁選別のためのゲームで、花嫁として選ばれた場合は結婚支度金10億円を受け取ることができるらしい。
九条アカネが調査を進めると、そのゲームは過去にも行われており、生存者はゼロであることが判明した。
依頼人の恨みを晴らすため、九条アカネはゲームに潜入して真相を解き明かす決意をする。
ゲームの勝者と結婚できるとされるモナークさまとは一体どんな人なのか? 果たして、九条アカネはモナークさまの正体を突き止め、依頼人の無念を晴らすことができるのか?
生き残りを賭けた女性たちのデスゲームが始まる。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/horror.png?id=d742d2f035dd0b8efefe)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/horror.png?id=d742d2f035dd0b8efefe)
扉の向こうは黒い影
小野 夜
ホラー
古い校舎の3階、突き当たりの隅にある扉。それは「開かずの扉」と呼ばれ、生徒たちの間で恐れられていた。扉の向こう側には、かつて理科室として使われていた部屋があるはずだったが、今は誰も足を踏み入れない禁断の場所となっていた。
夏休みのある日、ユキは友達のケンジとタケシを誘って、学校に忍び込む。目的は、開かずの扉を開けること。好奇心と恐怖心が入り混じる中、3人はついに扉を開ける。
優しい愛に包まれて~イケメンとの同居生活はドキドキの連続です~
けいこ
恋愛
人生に疲れ、自暴自棄になり、私はいろんなことから逃げていた。
してはいけないことをしてしまった自分を恥ながらも、この関係を断ち切れないままでいた。
そんな私に、ひょんなことから同居生活を始めた個性的なイケメン男子達が、それぞれに甘く優しく、大人の女の恋心をくすぐるような言葉をかけてくる…
ピアノが得意で大企業の御曹司、山崎祥太君、24歳。
有名大学に通い医師を目指してる、神田文都君、23歳。
美大生で画家志望の、望月颯君、21歳。
真っ直ぐで素直なみんなとの関わりの中で、ひどく冷め切った心が、ゆっくり溶けていくのがわかった。
家族、同居の女子達ともいろいろあって、大きく揺れ動く気持ちに戸惑いを隠せない。
こんな私でもやり直せるの?
幸せを願っても…いいの?
動き出す私の未来には、いったい何が待ち受けているの?
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/horror.png?id=d742d2f035dd0b8efefe)
植物人-しょくぶつびと-
一綿しろ
ホラー
植物の様に水と太陽光で必要な養分を作る機能を持った人間「植物人」を生み出す薬を作った男がいた。
男は病から人を救うと言う名目でその薬を使い続ける。
だが、薬を奪われない限り枯れない植物「植物化」になってしまう者、人から精気を喰らう化け物「植物妖」になり果てる者が大半だった。
男は結局は病で死んだ。多くの植物人、植物妖たちを残して。
これはその薬から生まれた植物化、植物妖たちを枯る「殺め」になった男の話。
※同タイトルの作品があった為、タイトルや造語を変更しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる