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考察と観察
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悠理はそれに気付いた。こちらで悪魔や眷属が出現し始める少し前に、ある彗星が地球に異常接近していた事を。そしてその彗星接近は、前世では無かった事だった。
(この違いは関係があるのかないのか)
彗星が接近した時、塵などが引力で地球に落下して来る事はある。
それがもっと小さな微粒子なら、落下せずに大気中に留まるなどしている可能性はある。
「よし」
悠理は服部に突撃した。
「観測気球だと?」
悠理は、前世云々は伏せながら、その考察を述べ、大気の組成を調査したいと頼んだ。
「これまで彗星と関連付けて調査した事は無いようですので」
服部は真面目な顔で考え込んだ。
「俺の一存ではなあ。でも、学習の一環とか自由研究みたいな形でなら、どうにかできるか」
服部はそう言うと、ニヤリと笑った。
「やってみろ。機材は揃えてやるし、人員もどうにかしてやる」
そうして、成層圏までの大気が採取された。
「また悠理が何か始めたぞ」
生徒達は、そう噂した。
「でも、今度は花火とかの、遊びじゃないらしい」
「何だ」
そう言う生徒もいるが、沖川、西條、均は付き合った。
沖川は
「何か新事実が出ればもうけものだ」
と言い、西條は、
「悠理がするなら、何か面白い事になりそうな予感がする」
と言い、均は、
「放っておくと3日や4日は平気で徹夜するから」
と言った。
理由は、まあ、人によって違った。
その結果、確かに未知の物質が検出された。
「何だ、これは」
大きさはPM2.5程度。化学物質の一種かと思われたが、該当するものはない。
「また新たな化学物質か?花粉とくっついたら大変な」
そう考えただけで、鼻が出て目がかゆくなりそうだ。
前世では最後まで花粉症にならなかったが、今回はわからない。
「それはそれで、対策したくなる」
「悠理、そろそろ一旦おしまいだ。メシを食って、寝ろ」
沖川が止めに来た。
「まだいけるのに」
言いながら、悠理はハッとした。
(おかしい。「猫のように怠惰な生活」を望んでいたのに、何で自分から以前と同じような生活をしてるんだよ、俺は)
しみついてしまった何かだろうか。
愕然とする悠理だったが、それをシャーレに収めて、取り敢えず大人しく均や沖川に連れられてその日の観察は終了した。
変化に気付くのは、まだ先の事である。
翌朝、授業の途中で眷属が出て出撃があり、帰って来てから、悠理は実験室へ行った。
そして、叫んだ。
「何かいる!?」
シャーレの中の物質をプレパラートに乗せて顕微鏡で覗いたら、蠢くものがいくつもあったのだ。
「どうした」
沖川と均と西條が代わる代わる顕微鏡を覗いては、同じように目を丸くする。
「何だこれ。虫?ウイルス?」
均が嫌そうな顔をするが、悠理は嬉しそうに笑っていた。
「出た!出たぞ!
これを培養しよう。
いや、並行して、色んな刺激を与えてみよう。活性化するかどうか。それから、動物への影響もだな。
よし。近いうちに実験用のラットを買ってもらわないと」
ブツブツと嬉しそうな悠理に、均が訊く。
「ラット?ネズミ?何に使うの?」
「勿論、移植するんだよ」
その瞬間、均と西條は、悠理が悪魔に見えた。
「普通だろ?」
「何で!?動物愛護団体が抗議に来るよ!」
「いつもされてるけど、これが実験だしなあ」
悠理はそう言う。
そんな悠理を沖川は訝し気に見ていたが、悠理はこれからの実験スケジュールを考えていて、気付かなかった。
沖川と西條は、2人で額を突き合わせていた。
「悠理の事なんだが。どう思う」
「ユニークだな。飽きないよ、見ていて」
即答する西條に、沖川は言い直す。
「それは否定しないが。
そうじゃなく、時々おかしくないか」
西條は考え、頷いた。
「おかしいよな」
「時々妙に年上に思う事があったし、知識が妙に、一般中学生を越えるレベルの分野がある。それとさっきみたいな返しだ」
「ああ。『いつもされてる』みたいなやつな」
沖川は頷いた。
「『3日徹夜して半人前、黄色い太陽を拝んで一人前』とか『大人として申し訳ない』もな。まるで」
「ああ。まるで、何かの経験がある大人みたいな、だろ」
沖川と西條はそう言って見つめ合った。
「でも、どうやって?おかしいだろ」
西條が言うと、沖川は自信なさそうに溜め息をつく。
「まあなあ。前世の記憶?それも突飛な話だしな」
「まあ、何でもいいよ。悠理は悠理だ」
「そうだな」
2人は頷き合って、そろそろ寝るかと立ち上がった。
(この違いは関係があるのかないのか)
彗星が接近した時、塵などが引力で地球に落下して来る事はある。
それがもっと小さな微粒子なら、落下せずに大気中に留まるなどしている可能性はある。
「よし」
悠理は服部に突撃した。
「観測気球だと?」
悠理は、前世云々は伏せながら、その考察を述べ、大気の組成を調査したいと頼んだ。
「これまで彗星と関連付けて調査した事は無いようですので」
服部は真面目な顔で考え込んだ。
「俺の一存ではなあ。でも、学習の一環とか自由研究みたいな形でなら、どうにかできるか」
服部はそう言うと、ニヤリと笑った。
「やってみろ。機材は揃えてやるし、人員もどうにかしてやる」
そうして、成層圏までの大気が採取された。
「また悠理が何か始めたぞ」
生徒達は、そう噂した。
「でも、今度は花火とかの、遊びじゃないらしい」
「何だ」
そう言う生徒もいるが、沖川、西條、均は付き合った。
沖川は
「何か新事実が出ればもうけものだ」
と言い、西條は、
「悠理がするなら、何か面白い事になりそうな予感がする」
と言い、均は、
「放っておくと3日や4日は平気で徹夜するから」
と言った。
理由は、まあ、人によって違った。
その結果、確かに未知の物質が検出された。
「何だ、これは」
大きさはPM2.5程度。化学物質の一種かと思われたが、該当するものはない。
「また新たな化学物質か?花粉とくっついたら大変な」
そう考えただけで、鼻が出て目がかゆくなりそうだ。
前世では最後まで花粉症にならなかったが、今回はわからない。
「それはそれで、対策したくなる」
「悠理、そろそろ一旦おしまいだ。メシを食って、寝ろ」
沖川が止めに来た。
「まだいけるのに」
言いながら、悠理はハッとした。
(おかしい。「猫のように怠惰な生活」を望んでいたのに、何で自分から以前と同じような生活をしてるんだよ、俺は)
しみついてしまった何かだろうか。
愕然とする悠理だったが、それをシャーレに収めて、取り敢えず大人しく均や沖川に連れられてその日の観察は終了した。
変化に気付くのは、まだ先の事である。
翌朝、授業の途中で眷属が出て出撃があり、帰って来てから、悠理は実験室へ行った。
そして、叫んだ。
「何かいる!?」
シャーレの中の物質をプレパラートに乗せて顕微鏡で覗いたら、蠢くものがいくつもあったのだ。
「どうした」
沖川と均と西條が代わる代わる顕微鏡を覗いては、同じように目を丸くする。
「何だこれ。虫?ウイルス?」
均が嫌そうな顔をするが、悠理は嬉しそうに笑っていた。
「出た!出たぞ!
これを培養しよう。
いや、並行して、色んな刺激を与えてみよう。活性化するかどうか。それから、動物への影響もだな。
よし。近いうちに実験用のラットを買ってもらわないと」
ブツブツと嬉しそうな悠理に、均が訊く。
「ラット?ネズミ?何に使うの?」
「勿論、移植するんだよ」
その瞬間、均と西條は、悠理が悪魔に見えた。
「普通だろ?」
「何で!?動物愛護団体が抗議に来るよ!」
「いつもされてるけど、これが実験だしなあ」
悠理はそう言う。
そんな悠理を沖川は訝し気に見ていたが、悠理はこれからの実験スケジュールを考えていて、気付かなかった。
沖川と西條は、2人で額を突き合わせていた。
「悠理の事なんだが。どう思う」
「ユニークだな。飽きないよ、見ていて」
即答する西條に、沖川は言い直す。
「それは否定しないが。
そうじゃなく、時々おかしくないか」
西條は考え、頷いた。
「おかしいよな」
「時々妙に年上に思う事があったし、知識が妙に、一般中学生を越えるレベルの分野がある。それとさっきみたいな返しだ」
「ああ。『いつもされてる』みたいなやつな」
沖川は頷いた。
「『3日徹夜して半人前、黄色い太陽を拝んで一人前』とか『大人として申し訳ない』もな。まるで」
「ああ。まるで、何かの経験がある大人みたいな、だろ」
沖川と西條はそう言って見つめ合った。
「でも、どうやって?おかしいだろ」
西條が言うと、沖川は自信なさそうに溜め息をつく。
「まあなあ。前世の記憶?それも突飛な話だしな」
「まあ、何でもいいよ。悠理は悠理だ」
「そうだな」
2人は頷き合って、そろそろ寝るかと立ち上がった。
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