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新兵器開発
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「ロシアで新兵器の実験があったらしいけど、失敗したんだって」
ニュースを見た生徒からその話が広がって行く。
「新兵器ねえ。どういうものだ?」
悠理が訊くと、大抵の者が、首を傾けた。
なので悠理は、服部に訊きに行った。新兵器について詳しい内容がわからないか、と。
「お前な、俺を便利屋と思ってないか?」
服部は言いながら、溜め息をついた。
「そんな事はないですよ?まあ、自分で、ハッキングしてみてもいいけど、時間もかかるし」
「いい。わかった。やるな。合法的に入手できる範囲で集めてやるから、頼む。やめてくれ」
それで悠理は、半日後には実験についての情報を少々手に入れた。
元々オープンにする国でもないので、知らされている事などたかが知れているが。
ゼルカは手を離れると、距離や時間に比例して滅力が減衰していく。だから弾丸などでは役に立たないのだ。そこを、大型の弾にして、数人がかりで滅力をこめて発射すると、悪魔に到達する頃に滅力が減っていたとしても、残った滅力で悪魔に有効打を与える事ができるのではないか、というコンセプトだった。
考え方としてはありかも知れないが、実用的かと言われれば、答えに困る。
実際やってみたところ、滅力を込めるのが難しく、息のあったメンバー同士でないとできないとか、たくさん人がいるとか、起動まで時間がかかるのでその間に狙われるなど、問題点が多かったらしい。
ロシアでは、起動不完全、オーバーフローで暴発、などといった失敗が相次いだそうだ。
「どこも、悪魔に苦労してるんだな」
悠理は言って、実験に協力した人たちの名前を何となく眺めた。
「悠理。また変なもん見てるな」
均が笑うが、それに悠理は返した。
「変なもん扱いしたら、ロシアの科学者が怒るぞ」
「プッ。そういう意味じゃないよ。
でも、効果的な新兵器ができたらいいよね」
「だよなあ。ううん。
その前にやっぱり、敵をよく知らないとなあ」
悠理はそう言うと、真剣に何事かを考え始めた。
ロシアでは、大統領の側近中の側近であるイワノフ・スルツカヤが溜め息をついていた。
実験は失敗した。成功していれば、世界を確実にリードできる切り札となり得たはずだった。
(人員が問題だったのか。それともゼルカの量か、質か。どうすればいい)
ロシアでは、滅力の発現した子供を「神兵」として従軍させる事を義務化しているが、危険な事だ。当然、喜んでいくらでも、というわけはない。それで、政府の高官や資産家の子供に滅力が発現しないせいで従軍しないだけでも、「金の力や権力で、子供を出さないでいる」という噂が囁かれていた。
イワノフに子供はおり、できるならば、神兵として従軍させて手柄を上げさせたかった。
しかし、孫タチアナは、滅力の発現がなかった。
(あいつらの所からはちゃんと出してるのに。このままでは、貢献できていないように見られるぞ)
ライバル達の顔が脳裏に浮かぶ。そのために、新兵器の開発を主導していたのだが、失敗してしまった。
(親類にだれか発現しないか。でも、そういう年齢の子供が、生憎いないからな。
そう言えば、日本にも親類がいたな。マリアの孫は今いくつくらいだろう)
イワノフは、かつて日本に渡った妹の事を思い出した。
妹マリアはもう亡くなっているが、息子が1人生まれ、孫が1人生まれたと聞いた事があったと思い出した。
「よし。すぐに調査しよう」
イワノフはすぐに決断した。
ニュースを見た生徒からその話が広がって行く。
「新兵器ねえ。どういうものだ?」
悠理が訊くと、大抵の者が、首を傾けた。
なので悠理は、服部に訊きに行った。新兵器について詳しい内容がわからないか、と。
「お前な、俺を便利屋と思ってないか?」
服部は言いながら、溜め息をついた。
「そんな事はないですよ?まあ、自分で、ハッキングしてみてもいいけど、時間もかかるし」
「いい。わかった。やるな。合法的に入手できる範囲で集めてやるから、頼む。やめてくれ」
それで悠理は、半日後には実験についての情報を少々手に入れた。
元々オープンにする国でもないので、知らされている事などたかが知れているが。
ゼルカは手を離れると、距離や時間に比例して滅力が減衰していく。だから弾丸などでは役に立たないのだ。そこを、大型の弾にして、数人がかりで滅力をこめて発射すると、悪魔に到達する頃に滅力が減っていたとしても、残った滅力で悪魔に有効打を与える事ができるのではないか、というコンセプトだった。
考え方としてはありかも知れないが、実用的かと言われれば、答えに困る。
実際やってみたところ、滅力を込めるのが難しく、息のあったメンバー同士でないとできないとか、たくさん人がいるとか、起動まで時間がかかるのでその間に狙われるなど、問題点が多かったらしい。
ロシアでは、起動不完全、オーバーフローで暴発、などといった失敗が相次いだそうだ。
「どこも、悪魔に苦労してるんだな」
悠理は言って、実験に協力した人たちの名前を何となく眺めた。
「悠理。また変なもん見てるな」
均が笑うが、それに悠理は返した。
「変なもん扱いしたら、ロシアの科学者が怒るぞ」
「プッ。そういう意味じゃないよ。
でも、効果的な新兵器ができたらいいよね」
「だよなあ。ううん。
その前にやっぱり、敵をよく知らないとなあ」
悠理はそう言うと、真剣に何事かを考え始めた。
ロシアでは、大統領の側近中の側近であるイワノフ・スルツカヤが溜め息をついていた。
実験は失敗した。成功していれば、世界を確実にリードできる切り札となり得たはずだった。
(人員が問題だったのか。それともゼルカの量か、質か。どうすればいい)
ロシアでは、滅力の発現した子供を「神兵」として従軍させる事を義務化しているが、危険な事だ。当然、喜んでいくらでも、というわけはない。それで、政府の高官や資産家の子供に滅力が発現しないせいで従軍しないだけでも、「金の力や権力で、子供を出さないでいる」という噂が囁かれていた。
イワノフに子供はおり、できるならば、神兵として従軍させて手柄を上げさせたかった。
しかし、孫タチアナは、滅力の発現がなかった。
(あいつらの所からはちゃんと出してるのに。このままでは、貢献できていないように見られるぞ)
ライバル達の顔が脳裏に浮かぶ。そのために、新兵器の開発を主導していたのだが、失敗してしまった。
(親類にだれか発現しないか。でも、そういう年齢の子供が、生憎いないからな。
そう言えば、日本にも親類がいたな。マリアの孫は今いくつくらいだろう)
イワノフは、かつて日本に渡った妹の事を思い出した。
妹マリアはもう亡くなっているが、息子が1人生まれ、孫が1人生まれたと聞いた事があったと思い出した。
「よし。すぐに調査しよう」
イワノフはすぐに決断した。
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