19 / 42
新たな噂の誕生
しおりを挟む
何か重大事故でもあれば、すぐにわかる。暴発事故でも起これば間違いなく大騒ぎになるだろう。
しかし何事もなく授業は進み、休み時間になった。
ザワザワとする教室を出た花園は、足早にならないようにしながら、階段を下りた。もうすぐ射撃場を出た1年生達がこの階段を上がってくるはずだ。
階段脇にトイレがあるので人の話し声はするし、人通りもある。
少し待つと、1年生達が階段を上がって来た。
(いた!)
ぞろぞろと連なって上がって来る1年生達の中に、悠理を見付けた。
「ゲームだともっと当たるんだけどなあ」
「ゲームの銃は反動もないしな」
「俺もゲームしようかなあ、携帯のゲームじゃなく」
「テレビゲームだとテレビもいるぞ?それとコードでつないで使えるゲーム用のシューティングガンも買うと、バカにならん出費だし」
「その前に、寮の自室にテレビの持ち込みは禁止だろ」
言いながらゾロゾロと歩いている。
その後ろの方に黒岩がいるのを見付けた花園は、そっと近づいて黒岩の袖を引いた。
「ん?ああ……」
黒岩はいつも通りの仏頂面を袖を引く人物に向け、それが花園とわかるや、面倒臭そうな顔をした。
花園は、イラッとした。
「黒岩君。テスト、どうだったの。上手く行かなかったの?」
にっこりと笑って言うと、近くにいた1年生は先に歩いて行った。
「花園先輩、黒岩と親しいのか?」
「1つ上だけど、かわいいよな」
「ちょっとあざといトコがアイドルみたいな」
そんな事を言いながら上へ上がって行くのを見送り、花園は、
(舐めた事言ってるな、あいつら)
と思いながらも、黒岩に視線を戻した。
かわいいと言われており、自分でもそう思う笑顔を浮べ、黒岩をジッと見る。
それでもよく見れば、花園の笑顔は、目は笑っていないのがよくわかるのだが。
「黒岩君」
黒岩は軽くフッと笑った。
「上手く行きましたよ。俺もあいつも最長をクリアしましたしね」
「意味わかってるよね。ちゃんとメンテナンスしたのかって訊いてるんだよ」
黒岩は花園の目を覗き込むようにした。
「何だよ」
花園は、反射的に狼狽えて視線を揺らした。
「俺はそんな事をするつもりはない。俺は俺の努力であいつを越える。
あんたも、言いたい事があるなら自分で言えよ。他人をそそのかして使おうとするな」
黒岩は押し殺した声でそう言って、花園から離れて階段を上がって教室へ向かって行った。
それを花園は呆然と見送り、姿が見えなくなってから、体が震え出すのを感じた。怒りなのか羞恥なのか。怒りだとすれば、それは悠理へなのか、黒岩へなのか。
自分でもよくわからないまま、上の1年生の教室の階を見上げ、フンと鼻を鳴らすと踵を返した。
それを、柱の陰から沖川と西條が見ていた。
以前の西條はいつも人に囲まれていたが、最近は1人で気軽に動く事も増えた。しかし演じているかのようなよそよそしさがなくなり、話しかけやすくなったと、影では相変わらず秘密ファンクラブは存在していた。
そんな西條は、花園の動向に感じる所があり、沖川と相談して、何かするのではないかと注視していたのだ。
「黒岩と?」
「そう仲が良さそうにも見えないがな。黒岩に何かを吹き込んだとか?あの4人みたいに」
沖川が言い、西條は下を向いた。
「俺のせいだ」
「アホ。お前に何の責任がある。
事実、黒岩は花園に言われた事をはねつけたみたいだぞ。そそのかすのもそれにのるのも、本人の責任でしかない。正しく状況を理解しろ、西條」
西條は苦笑した。
「沖川は、人を慰めるのも会長なんだなあ」
沖川は耳の先を赤くして、
「慰めてない。フン、バカが。
黒岩に何を言われたのか後で訊くか」
2人はこそこそと言い合いながら教室へ戻った。
それを見ていた生徒が誤解して、「意外過ぎるカップル誕生」という噂が流れるのだが、それはまた、別の話である。
しかし何事もなく授業は進み、休み時間になった。
ザワザワとする教室を出た花園は、足早にならないようにしながら、階段を下りた。もうすぐ射撃場を出た1年生達がこの階段を上がってくるはずだ。
階段脇にトイレがあるので人の話し声はするし、人通りもある。
少し待つと、1年生達が階段を上がって来た。
(いた!)
ぞろぞろと連なって上がって来る1年生達の中に、悠理を見付けた。
「ゲームだともっと当たるんだけどなあ」
「ゲームの銃は反動もないしな」
「俺もゲームしようかなあ、携帯のゲームじゃなく」
「テレビゲームだとテレビもいるぞ?それとコードでつないで使えるゲーム用のシューティングガンも買うと、バカにならん出費だし」
「その前に、寮の自室にテレビの持ち込みは禁止だろ」
言いながらゾロゾロと歩いている。
その後ろの方に黒岩がいるのを見付けた花園は、そっと近づいて黒岩の袖を引いた。
「ん?ああ……」
黒岩はいつも通りの仏頂面を袖を引く人物に向け、それが花園とわかるや、面倒臭そうな顔をした。
花園は、イラッとした。
「黒岩君。テスト、どうだったの。上手く行かなかったの?」
にっこりと笑って言うと、近くにいた1年生は先に歩いて行った。
「花園先輩、黒岩と親しいのか?」
「1つ上だけど、かわいいよな」
「ちょっとあざといトコがアイドルみたいな」
そんな事を言いながら上へ上がって行くのを見送り、花園は、
(舐めた事言ってるな、あいつら)
と思いながらも、黒岩に視線を戻した。
かわいいと言われており、自分でもそう思う笑顔を浮べ、黒岩をジッと見る。
それでもよく見れば、花園の笑顔は、目は笑っていないのがよくわかるのだが。
「黒岩君」
黒岩は軽くフッと笑った。
「上手く行きましたよ。俺もあいつも最長をクリアしましたしね」
「意味わかってるよね。ちゃんとメンテナンスしたのかって訊いてるんだよ」
黒岩は花園の目を覗き込むようにした。
「何だよ」
花園は、反射的に狼狽えて視線を揺らした。
「俺はそんな事をするつもりはない。俺は俺の努力であいつを越える。
あんたも、言いたい事があるなら自分で言えよ。他人をそそのかして使おうとするな」
黒岩は押し殺した声でそう言って、花園から離れて階段を上がって教室へ向かって行った。
それを花園は呆然と見送り、姿が見えなくなってから、体が震え出すのを感じた。怒りなのか羞恥なのか。怒りだとすれば、それは悠理へなのか、黒岩へなのか。
自分でもよくわからないまま、上の1年生の教室の階を見上げ、フンと鼻を鳴らすと踵を返した。
それを、柱の陰から沖川と西條が見ていた。
以前の西條はいつも人に囲まれていたが、最近は1人で気軽に動く事も増えた。しかし演じているかのようなよそよそしさがなくなり、話しかけやすくなったと、影では相変わらず秘密ファンクラブは存在していた。
そんな西條は、花園の動向に感じる所があり、沖川と相談して、何かするのではないかと注視していたのだ。
「黒岩と?」
「そう仲が良さそうにも見えないがな。黒岩に何かを吹き込んだとか?あの4人みたいに」
沖川が言い、西條は下を向いた。
「俺のせいだ」
「アホ。お前に何の責任がある。
事実、黒岩は花園に言われた事をはねつけたみたいだぞ。そそのかすのもそれにのるのも、本人の責任でしかない。正しく状況を理解しろ、西條」
西條は苦笑した。
「沖川は、人を慰めるのも会長なんだなあ」
沖川は耳の先を赤くして、
「慰めてない。フン、バカが。
黒岩に何を言われたのか後で訊くか」
2人はこそこそと言い合いながら教室へ戻った。
それを見ていた生徒が誤解して、「意外過ぎるカップル誕生」という噂が流れるのだが、それはまた、別の話である。
0
お気に入りに追加
17
あなたにおすすめの小説
某国の皇子、冒険者となる
くー
BL
俺が転生したのは、とある帝国という国の皇子だった。
転生してから10年、19歳になった俺は、兄の反対を無視して従者とともに城を抜け出すことにした。
俺の本当の望み、冒険者になる夢を叶えるために……
異世界転生主人公がみんなから愛され、冒険を繰り広げ、成長していく物語です。
主人公は魔法使いとして、仲間と力をあわせて魔物や敵と戦います。
※ BL要素は控えめです。
2020年1月30日(木)完結しました。

新しい道を歩み始めた貴方へ
mahiro
BL
今から14年前、関係を秘密にしていた恋人が俺の存在を忘れた。
そのことにショックを受けたが、彼の家族や友人たちが集まりかけている中で、いつまでもその場に居座り続けるわけにはいかず去ることにした。
その後、恋人は訳あってその地を離れることとなり、俺のことを忘れたまま去って行った。
あれから恋人とは一度も会っておらず、月日が経っていた。
あるとき、いつものように仕事場に向かっているといきなり真上に明るい光が降ってきて……?
※沢山のお気に入り登録ありがとうございます。深く感謝申し上げます。

君に望むは僕の弔辞
爺誤
BL
僕は生まれつき身体が弱かった。父の期待に応えられなかった僕は屋敷のなかで打ち捨てられて、早く死んでしまいたいばかりだった。姉の成人で賑わう屋敷のなか、鍵のかけられた部屋で悲しみに押しつぶされかけた僕は、迷い込んだ客人に外に出してもらった。そこで自分の可能性を知り、希望を抱いた……。
全9話
匂わせBL(エ◻︎なし)。死ネタ注意
表紙はあいえだ様!!
小説家になろうにも投稿



ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる