17 / 42
囁き
しおりを挟む
「どうだった、感想は」
訊かれて、悠理は答えた。
「感激だった!疲れ目で目がショボショボしなければ、あんなにハッキリ見えたのを、忘れてた!それに肩こりも腰痛もないし!」
服部は、肩を落とした。
悪魔には滅力を通した武器しか効かないが、眷属には銃が効く。何ならその辺のパイプや釘バットでも、眷属の種類にもよるが、どうにかできる。
なので、悪魔と眷属が襲って来た時、悪魔に行き当たる前に滅力が切れたら困るので、銃の使用も習うのだ。
そして今日、1年生は初の射撃訓練を行っていた。
「そんな、老眼が始まってた人みたいな切ない事言うなよ」
言う服部に、均が苦笑して言う。
「悠理ですから」
「そうだな。今更か。
よし。こいつの事は若年寄と呼んでやろう。本物の若年寄は地位的に偉いが、こいつは体がエライ」
それに同じテーブルに着いていた生徒達が吹き出す。
食堂で昼食を摂っていたら、服部が空いていた悠理の隣に来たのだ。
「まあ、銃の扱いは慎重にな。言うなれば、引き金を引けば簡単に弾が出る。簡単な動作で、簡単に人が死ぬ。その重みをしっかりと考えて、心して扱え」
服部がそう言うと、そこにいた生徒達は、表情を引き締めた。
「はい」
「うわあ、先生みたい」
「先生だろうが」
ムードメーカー的役割の生徒が場を和ませ、ひとしきり笑ったところで、服部は付け加える。
「そうそう。小さい部品ひとつも無くすなよ。動作不良になったり、暴発したりするからな。いいな。きっちり習うまで、勝手に分解したりするんじゃねえぞ」
「え、もしかして俺に言ってます?」
「お前が危険人物筆頭だろうが」
「酷い」
悠理がムッとしたところで再び生徒達は笑い出す。
そんな楽し気な雰囲気を、別のテーブルの生徒や教師も眺めるとなく眺めていた。
黒岩は別のテーブルで黙々と食事を摂っていた。
射撃をしてみたところ、まだ1回目だからわからないとは言え、黒岩、敷島を含む数人が、成績が良かった。
(くそっ)
いらだちを顔に出さないように気を付けながら、食べ終わった黒岩は、さっさと席を立って、食堂を出た。
その黒岩の後を追って、生徒が食堂を出た。花園だ。
「黒岩!」
黒岩は足を止めて、振り返った。
「花園先輩。何ですか」
一応先輩に呼び止められたから仕方なく足を止めた、というのが丸わかりの不機嫌そうな顔だが、花園は構う事無く、軽い足取りで近付いた。
「射撃、聞いたよ。黒岩と敷島が一番上手だったんだって?」
「まだ最初です。わかりませんよ」
「そうだね。悠理はあれでなかなか器用な所があるしね」
クスクス笑って言う花園に、黒岩はムッと眉を寄せた。
(もっと水を開けられると言いたいのか)
そう思っているのが、花園には丸わかりだったし、そう思うと思って言ったのだ。
「知ってる?小さなネジ1つでも外れてたら怖いんだよね。こう、引き金の所の、こうなってるところ」
花園は笑いながら、手振りでライフルのある部分を示した。
「ここのネジって小さいし、なくても弾は出るし、思ったところに飛ばないだけでさ。外れても分かりづらいからまた厄介なんだよね」
黒岩は怪訝な顔をして、花園の、口元だけの笑顔を見た。
「がんばってね、黒岩君」
そう言って黒岩の肩をポンと叩き、花園は歩いて行った。
残った黒岩は、花園の言った事を反芻し、ハッとして花園の去った方を見た。
訊かれて、悠理は答えた。
「感激だった!疲れ目で目がショボショボしなければ、あんなにハッキリ見えたのを、忘れてた!それに肩こりも腰痛もないし!」
服部は、肩を落とした。
悪魔には滅力を通した武器しか効かないが、眷属には銃が効く。何ならその辺のパイプや釘バットでも、眷属の種類にもよるが、どうにかできる。
なので、悪魔と眷属が襲って来た時、悪魔に行き当たる前に滅力が切れたら困るので、銃の使用も習うのだ。
そして今日、1年生は初の射撃訓練を行っていた。
「そんな、老眼が始まってた人みたいな切ない事言うなよ」
言う服部に、均が苦笑して言う。
「悠理ですから」
「そうだな。今更か。
よし。こいつの事は若年寄と呼んでやろう。本物の若年寄は地位的に偉いが、こいつは体がエライ」
それに同じテーブルに着いていた生徒達が吹き出す。
食堂で昼食を摂っていたら、服部が空いていた悠理の隣に来たのだ。
「まあ、銃の扱いは慎重にな。言うなれば、引き金を引けば簡単に弾が出る。簡単な動作で、簡単に人が死ぬ。その重みをしっかりと考えて、心して扱え」
服部がそう言うと、そこにいた生徒達は、表情を引き締めた。
「はい」
「うわあ、先生みたい」
「先生だろうが」
ムードメーカー的役割の生徒が場を和ませ、ひとしきり笑ったところで、服部は付け加える。
「そうそう。小さい部品ひとつも無くすなよ。動作不良になったり、暴発したりするからな。いいな。きっちり習うまで、勝手に分解したりするんじゃねえぞ」
「え、もしかして俺に言ってます?」
「お前が危険人物筆頭だろうが」
「酷い」
悠理がムッとしたところで再び生徒達は笑い出す。
そんな楽し気な雰囲気を、別のテーブルの生徒や教師も眺めるとなく眺めていた。
黒岩は別のテーブルで黙々と食事を摂っていた。
射撃をしてみたところ、まだ1回目だからわからないとは言え、黒岩、敷島を含む数人が、成績が良かった。
(くそっ)
いらだちを顔に出さないように気を付けながら、食べ終わった黒岩は、さっさと席を立って、食堂を出た。
その黒岩の後を追って、生徒が食堂を出た。花園だ。
「黒岩!」
黒岩は足を止めて、振り返った。
「花園先輩。何ですか」
一応先輩に呼び止められたから仕方なく足を止めた、というのが丸わかりの不機嫌そうな顔だが、花園は構う事無く、軽い足取りで近付いた。
「射撃、聞いたよ。黒岩と敷島が一番上手だったんだって?」
「まだ最初です。わかりませんよ」
「そうだね。悠理はあれでなかなか器用な所があるしね」
クスクス笑って言う花園に、黒岩はムッと眉を寄せた。
(もっと水を開けられると言いたいのか)
そう思っているのが、花園には丸わかりだったし、そう思うと思って言ったのだ。
「知ってる?小さなネジ1つでも外れてたら怖いんだよね。こう、引き金の所の、こうなってるところ」
花園は笑いながら、手振りでライフルのある部分を示した。
「ここのネジって小さいし、なくても弾は出るし、思ったところに飛ばないだけでさ。外れても分かりづらいからまた厄介なんだよね」
黒岩は怪訝な顔をして、花園の、口元だけの笑顔を見た。
「がんばってね、黒岩君」
そう言って黒岩の肩をポンと叩き、花園は歩いて行った。
残った黒岩は、花園の言った事を反芻し、ハッとして花園の去った方を見た。
0
お気に入りに追加
16
あなたにおすすめの小説
婚約者に会いに行ったらば
龍の御寮さん
BL
王都で暮らす婚約者レオンのもとへと会いに行ったミシェル。
そこで見たのは、レオンをお父さんと呼ぶ子供と仲良さそうに並ぶ女性の姿。
ショックでその場を逃げ出したミシェルは――
何とか弁解しようするレオンとなぜか記憶を失ったミシェル。
そこには何やら事件も絡んできて?
傷つけられたミシェルが幸せになるまでのお話です。
申し訳ございません。あいにく先約がございまして。
ハリネズミ
BL
取引先の息子から何度もなんども食事に誘われる。
俺は決まって断りもんくを口にする。
「申し訳ございません。あいにく先約がございまして」
いつまで続くこの攻防。
表紙はまちば様(@Machiba0000)に描いていただきました🌸
素敵な表紙をありがとうございました🌸
いっぱい命じて〜無自覚SubはヤンキーDomに甘えたい〜
きよひ
BL
無愛想な高一Domヤンキー×Subの自覚がない高三サッカー部員
Normalの諏訪大輝は近頃、謎の体調不良に悩まされていた。
そんな折に出会った金髪の一年生、甘井呂翔。
初めて会った瞬間から甘井呂に惹かれるものがあった諏訪は、Domである彼がPlayする様子を覗き見てしまう。
甘井呂に優しく支配されるSubに自分を重ねて胸を熱くしたことに戸惑う諏訪だが……。
第二性に振り回されながらも、互いだけを求め合うようになる青春の物語。
※現代ベースのDom/Subユニバースの世界観(独自解釈・オリジナル要素あり)
※不良の喧嘩描写、イジメ描写有り
初日は5話更新、翌日からは2話ずつ更新の予定です。
公爵家の五男坊はあきらめない
三矢由巳
BL
ローテンエルデ王国のレームブルック公爵の妾腹の五男グスタフは公爵領で領民と交流し、気ままに日々を過ごしていた。
生母と生き別れ、父に放任されて育った彼は誰にも期待なんかしない、将来のことはあきらめていると乳兄弟のエルンストに語っていた。
冬至の祭の夜に暴漢に襲われ二人の運命は急変する。
負傷し意識のないエルンストの枕元でグスタフは叫ぶ。
「俺はおまえなしでは生きていけないんだ」
都では次の王位をめぐる政争が繰り広げられていた。
知らぬ間に巻き込まれていたことを知るグスタフ。
生き延びるため、グスタフはエルンストとともに都へ向かう。
あきらめたら待つのは死のみ。
婚約破棄したら隊長(♂)に愛をささやかれました
ヒンメル
BL
フロナディア王国デルヴィーニュ公爵家嫡男ライオネル・デルヴィーニュ。
愛しの恋人(♀)と婚約するため、親に決められた婚約を破棄しようとしたら、荒くれ者の集まる北の砦へ一年間行かされることに……。そこで人生を変える出会いが訪れる。
*****************
「国王陛下は婚約破棄された令嬢に愛をささやく(https://www.alphapolis.co.jp/novel/221439569/703283996)」の番外編です。ライオネルと北の砦の隊長の後日談ですが、BL色が強くなる予定のため独立させてます。単体でも分かるように書いたつもりですが、本編を読んでいただいた方がわかりやすいと思います。
※「国王陛下は婚約破棄された令嬢に愛をささやく」の他の番外編よりBL色が強い話になりました(特に第八話)ので、苦手な方は回避してください。
※完結済にした後も読んでいただいてありがとうございます。
評価やブックマーク登録をして頂けて嬉しいです。
※小説家になろう様でも公開中です。
今日も武器屋は閑古鳥
桜羽根ねね
BL
凡庸な町人、アルジュは武器屋の店主である。
代わり映えのない毎日を送っていた、そんなある日、艶やかな紅い髪に金色の瞳を持つ貴族が現れて──。
謎の美形貴族×平凡町人がメインで、脇カプも多数あります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる