追放?俺にとっては解放だ!~自惚れ勇者パーティに付き合いきれなくなった俺、捨てられた女神を助けてジョブ【楽園創造者】を授かり人生を謳歌する~

和成ソウイチ

文字の大きさ
上 下
40 / 77

第40話 国王の証

しおりを挟む

《ラクターさん。お元気ですか? 私は相変わらずなんとか元気です》

 そんな書き出しで始まるイリス姫の手紙。
 すっかり慣れてあまり違和感を覚えなくなったが、改めて考えると一国の姫君とこんなフランクなやり取りをするなんて、だいぶ畏れ多いよな。

『なにをおっしゃるのですか、ラクター様。今のあなた様はカリファ聖王国の立派な君主。むしろ格としてはあなた様の方が上とも言えます』
「『なにを言ってるのか』はお前だ、アルマディア」

 手紙を読みながら呆れる俺。

 ――大神木の精霊ルウの立ち会いのもと、カリファ聖王国の王となって十日ほど。
 要塞のような巨木――アルマディアは『王が住む植物の城』ということで『王樹』と名付けた――に生活の拠点を移し、ここからカリファ聖森林全体の保全に努めている。

 アリアの結界魔法による森の枯渇問題は解決した。だが、まだ勇者パーティの爪痕はところどころに残っているようなのだ。
 王の役目、というわけでもないが、俺は森の各地に飛んで【楽園創造者】や魔法を使い、森の完全復活を目指している。
 そのおかげか、森には以前のように動物たちの姿を見るようになってきた。

 ……まあ、ちょっと辟易へきえきすることがなくもない。

 いつの間に話が伝わっていたのか、動物たちと会うたびに鳴き声の大合唱で迎えられたり、なんかよくわからない虫とか草とか持ってきたり、やたらとまとわりつかれたりする。

 一番参ったのは、兎や鹿といった草食動物たちが数匹やってきて、焚き火の前に座ったことだ。
 リーニャ曰く――『どうぞ食してください』ということらしい。

 現地人ならいざ知らず、現代日本の常識が残っている俺にとっては空を仰ぎたくなる申し出だった。とりあえず、『楽園創造』で手に入る食べ物の実でなんとかなるから、と丁重に群れまでお帰り頂いた。
 人間の俺から見てもすげーしょんぼりした後ろ姿だった。どうすりゃいいんだコレ。

 ――そんなこんなありながら。
 俺は新しい王国での暮らしに馴染んでいった。姫様の言葉じゃないけど、『なんとか元気でやってます』だ。

「……ん?」

 姫の手紙を読んでいた俺は、ふと眉をひそめた。
 途中、大賢者アリアについて触れている箇所があったのだ。それも、かなりの分量で。
 読み込んでいた俺は、来訪者にしばらく気づかなかった。

「ラクター君。ラクター君!」
「……ん、ああ。レオンさんか。悪い。集中してた」
「あたしもいるよー!」
「おお、いらっしゃい。アン」

 抱きついてくるアンを受け止める。
 もともと病弱だったという話だが、今ではすっかり元気だ。肌つやも血色もいいし、会うたびに子どもらしいパワフルさを全開で見せてくれる。
 そのおかげで、アンが来るときは微妙にリーニャが距離を取っている。まるで親戚の子が遊びに来たときの家猫だ。
 いじめたりしないから出てこいっつってるのに。むしろ生物的強さじゃリーニャの方が遙か上にいる。なにを恐れることがあるんだろうな。

「すっかりここでの暮らしに馴染んだようですね。大神木の大精霊に認められ、王となったと聞いたときは、またとんでもないことになったと心配したのですが」
「はは。王と言っても、動植物たちが良くしてくれてるだけさ。領民なんていないし。自称だよ、自称」
「それでは、僕が最初の領民というわけですね。鼻が高いです」

 軽口に笑い合う。
 それからレオンさんは、持ってきた荷物から布に覆われたなにかを取り出した。

「頼まれていたものです。貴重と表現するのもおこがましいほどの品でしたから、作業中ずっと手が震えましたよ……」
「無理言って済まなかった。報酬は――」
「いりませんよ。こうしてここに住まわせてもらっているだけでも、じゅうぶん過ぎます」

 居心地が良すぎですから、ここ――とレオンさんは微笑む。

 俺は布を取る。
 美しい琥珀色の樹脂に包まれた『大神木の新花』が現れた。

 王の証を雑に首から提げておくわけにはいかない――そう思って、レオンさんに相談したのだ。そうしたら、レオンさんが王樹内に保管できるように加工すると申し出てくれた。
 いわゆる『レガリア』って奴だな。

 琥珀に包むってところが、いかにも研究者畑のレオンさんらしい。まあ、事前にルウに意見を聞いていたようだが。人間と精霊の合作だな。

 琥珀に閉じ込めたことで、美術品のように自立できるようになった。俺は大神木の新花をテーブル代わりの枝の上に置く。すると、枝がひとりでに形を変え、まるで宝を安置する台座のようになる。

「ラクター君。あと、これもお渡ししておきます」

 そう言ってレオンさんがペンダントを差し出す。
 同じく琥珀で薄く包んだ花びらが数枚、ペンダントトップに付けられている。

「大精霊ルウ様のお話だと、大神木の新花にはじーぴー……えっと、ラクター君の力を回復する効果があるそうで。常に身につけておく分として、作っておきました」
「それは助かる。ありがとう」

 さっそく首にかける。初めて大神木の新花を身につけたときのような、『神力が繋がる感覚』がした。うん、問題ない。

 ところで、とレオンさんがたずねてくる。

「その手紙、イリス姫様からですよね。いつになく険しい顔で読んでいましたが……なにかあったのですか?」
「ああ……」

 俺は手紙に視線を落とす。

「どうやら、大賢者アリアが自分の地位や財産をすべて王国に返上し、姿を消したらしい。しかも、身体に呪いを抱えたままで、だ。その件で相談をしたいので、近いうちに俺の元を訪れたいと姫は言ってる」


しおりを挟む
感想 18

あなたにおすすめの小説

(完結)魔王討伐後にパーティー追放されたFランク魔法剣士は、超レア能力【全スキル】を覚えてゲスすぎる勇者達をザマアしつつ世界を救います

しまうま弁当
ファンタジー
魔王討伐直後にクリードは勇者ライオスからパーティーから出て行けといわれるのだった。クリードはパーティー内ではつねにFランクと呼ばれ戦闘にも参加させてもらえず場美雑言は当たり前でクリードはもう勇者パーティーから出て行きたいと常々考えていたので、いい機会だと思って出て行く事にした。だがラストダンジョンから脱出に必要なリアーの羽はライオス達は分けてくれなかったので、仕方なく一階層づつ上っていく事を決めたのだった。だがなぜか後ろから勇者パーティー内で唯一のヒロインであるミリーが追いかけてきて一緒に脱出しようと言ってくれたのだった。切羽詰まっていると感じたクリードはミリーと一緒に脱出を図ろうとするが、後ろから追いかけてきたメンバーに石にされてしまったのだった。

ザコ魔法使いの僕がダンジョンで1人ぼっち!魔獣に襲われても石化した僕は無敵状態!経験値が溜まり続けて気づいた時には最強魔導士に!?

さかいおさむ
ファンタジー
戦士は【スキル】と呼ばれる能力を持っている。 僕はスキルレベル1のザコ魔法使いだ。 そんな僕がある日、ダンジョン攻略に向かう戦士団に入ることに…… パーティに置いていかれ僕は1人ダンジョンに取り残される。 全身ケガだらけでもう助からないだろう…… 諦めたその時、手に入れた宝を装備すると無敵の石化状態に!? 頑張って攻撃してくる魔獣には申し訳ないがダメージは皆無。経験値だけが溜まっていく。 気づけば全魔法がレベル100!? そろそろ反撃開始してもいいですか? 内気な最強魔法使いの僕が美女たちと冒険しながら人助け!

雑用係の回復術士、【魔力無限】なのに専属ギルドから戦力外通告を受けて追放される〜ケモ耳少女とエルフでダンジョン攻略始めたら『伝説』になった〜

霞杏檎
ファンタジー
祝【コミカライズ決定】!! 「使えん者はいらん……よって、正式にお前には戦力外通告を申し立てる。即刻、このギルドから立ち去って貰おう!! 」 回復術士なのにギルド内で雑用係に成り下がっていたフールは自身が専属で働いていたギルドから、何も活躍がないと言う理由で戦力外通告を受けて、追放されてしまう。 フールは回復術士でありながら自己主張の低さ、そして『単体回復魔法しか使えない』と言う能力上の理由からギルドメンバーからは舐められ、S級ギルドパーティのリーダーであるダレンからも馬鹿にされる存在だった。 しかし、奴らは知らない、フールが【魔力無限】の能力を持っていることを…… 途方に暮れている道中で見つけたダンジョン。そこで傷ついた”ケモ耳銀髪美少女”セシリアを助けたことによって彼女はフールの能力を知ることになる。 フールに助けてもらったセシリアはフールの事を気に入り、パーティの前衛として共に冒険することを決めるのであった。 フールとセシリアは共にダンジョン攻略をしながら自由に生きていくことを始めた一方で、フールのダンジョン攻略の噂を聞いたギルドをはじめ、ダレンはフールを引き戻そうとするが、フールの意思が変わることはなかった…… これは雑用係に成り下がった【最強】回復術士フールと"ケモ耳美少女"達が『伝説』のパーティだと語られるまでを描いた冒険の物語である! (160話で完結予定) 元タイトル 「雑用係の回復術士、【魔力無限】なのに専属ギルドから戦力外通告を受けて追放される〜でも、ケモ耳少女とエルフでダンジョン攻略始めたら『伝説』になった。噂を聞いたギルドが戻ってこいと言ってるがお断りします〜」

S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります

内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品] 冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた! 物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。 職人ギルドから追放された美少女ソフィア。 逃亡中の魔法使いノエル。 騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。 彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。 カクヨムにて完結済み。 ( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )

フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる 

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ 25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。  目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。 ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。 しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。 ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。 そんな主人公のゆったり成長期!!

クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~

いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。 他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。 「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。 しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。 1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化! 自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働! 「転移者が世界を良くする?」 「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」 追放された少年の第2の人生が、始まる――! ※本作品は他サイト様でも掲載中です。

どうも、命中率0%の最弱村人です 〜隠しダンジョンを周回してたらレベル∞になったので、種族進化して『半神』目指そうと思います〜

サイダーボウイ
ファンタジー
この世界では15歳になって成人を迎えると『天恵の儀式』でジョブを授かる。 〈村人〉のジョブを授かったティムは、勇者一行が訪れるのを待つ村で妹とともに仲良く暮らしていた。 だがちょっとした出来事をきっかけにティムは村から追放を言い渡され、モンスターが棲息する森へと放り出されてしまう。 〈村人〉の固有スキルは【命中率0%】というデメリットしかない最弱スキルのため、ティムはスライムすらまともに倒せない。 危うく死にかけたティムは森の中をさまよっているうちにある隠しダンジョンを発見する。 『【煌世主の意志】を感知しました。EXスキル【オートスキップ】が覚醒します』 いきなり現れたウィンドウに驚きつつもティムは試しに【オートスキップ】を使ってみることに。 すると、いつの間にか自分のレベルが∞になって……。 これは、やがて【種族の支配者(キング・オブ・オーバーロード)】と呼ばれる男が、最弱の村人から最強種族の『半神』へと至り、世界を救ってしまうお話である。

Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!

仁徳
ファンタジー
シロウ・オルダーは、Sランク昇進をきっかけに赤いバラという冒険者チームから『スキル非所持の無能』とを侮蔑され、パーティーから追放される。 しかし彼は、異世界の知識を利用して新な魔法を生み出すスキル【魔学者】を使用できるが、彼はそのスキルを隠し、無能を演じていただけだった。 そうとは知らずに、彼を追放した赤いバラは、今までシロウのサポートのお陰で強くなっていたことを知らずに、ダンジョンに挑む。だが、初めての敗北を経験したり、その後借金を背負ったり地位と名声を失っていく。 一方自由になったシロウは、新な町での冒険者活動で活躍し、一目置かれる存在となりながら、追放したマリーを助けたことで惚れられてしまう。手料理を振る舞ったり、背中を流したり、それはまるで押しかけ女房だった! これは、チート能力を手に入れてしまったことで、無能を演じたシロウがパーティーを追放され、その後ソロとして活躍して無双すると、他のパーティーから追放されたエルフや魔族といった様々な追放少女が集まり、いつの間にかハーレムパーティーを結成している物語!

処理中です...