追放?俺にとっては解放だ!~自惚れ勇者パーティに付き合いきれなくなった俺、捨てられた女神を助けてジョブ【楽園創造者】を授かり人生を謳歌する~

和成ソウイチ

文字の大きさ
上 下
37 / 77

第37話 誕生、カリファ聖王国の王

しおりを挟む

 アリアの治療を終えたルウが、俺の手を取る。

「ラクター、どうぞこちらへ~」
「なんだ。どこへ連れていくつもりだ」
「こんな立派な聖域が完成したのですから、ぜひあなたがそこに立つべきです~」

 そう言って、俺を窪地から引っ張り上げる。
 斜面を登り切った俺は、復活・生長した森の偉容に改めて感心した。

 広い荒れ地に過ぎなかった場所に、巨大な樹が鎮座していた。周囲の樹々が寄り集まり、一本の巨木になっているのだ。大神木ほどではないにしろ、じゅうぶんに圧巻だ。

 そこでルウが言った言葉を思い出す。

「聖域? ここが?」
『ラクター様の力によって生まれた新しい楽園、ということなのでしょう』

 アルマディアが感慨深く言う。

『私の【楽園創造者】の力ではなし得なかったかもしれません。ついに私の想像さえ超えたのですね。ラクター様』
「いや、さすがにそれは言い過ぎだ。もともとカリファ聖森林には、これだけのポテンシャルがあったってことだろ」

 肩をすくめて答える。

 ルウが大木の幹に手を当てると、大神木のように人の乗れる葉が降りてくる。とても便利だ。俺は彼女を褒めた。

「さすが。この森のことならルウにお任せだな」
「いえいえ~。今のわたしはラクターの力でここにいますから~。このくらいのことは、ラクターでも簡単ですよ~」

 のほほんとのたまう。本当かよ……。

 葉っぱに乗り込む。音もなく上昇を始める。
 巨木はビル五階分ほどの高さがあった。上に行くほど幹が太くなる不思議な構造をしている。
 これまたでかいに到着。ルウに促されるまま中に入る。

 ――ここは要塞かと思った。

 入り口もでかければ内部もでかかった。学校の体育館か、それ以上の広さがある。
 幹から生えた枝がなんとも上手い具合に絡まり合い、大小いくつもの部屋を形作っていた。
 内部の壁際には窓のように穴が空いている。それも等間隔に、四方をカバーするように、だ。ご丁寧にも身を隠せる場所まである。
 壁となっている幹の表面を叩く。ひどく硬かった。

「主様! 主様! きた、きたよ!」

 例によって好奇心で辺りを駆け回っていたリーニャが、外を指差し叫ぶ。
 直後、窓から何羽もの鳥が飛び込んできた。猿のような生き物も枝を伝って入ってくる。
 こいつら、見覚えがある。大神木の結界に保護されていた動物たちじゃないか。

「ついてきたのか……」
「ラクター」

 ルウが要塞部屋の中心に立つ。カリファ聖森林全体を守護する大精霊は、俺を迎え入れるように両手を広げた。

「ここは現在いまから、あなたの王国です~」
「は? なにを言ってるんだ、ルウ」

 ルウの微笑みが深くなる。彼女の隣にリーニャも立った。ふたりの真っ直ぐな視線が俺に向けられる。

「ラクターの働きによって、カリファ聖森林をむしばんでいた元凶は断たれました~。あなたは、この森に生きるすべての者にとって救い主なのです~。皆を代表して、お礼を言わせてください。本当にありがとう~、~」
「まあ取り返しが付かなくなる前に解決できてよかったよ――って、『王』だと?」

 はい~、といつもの間延びした声でうなずくルウ。

「ここにいる森の動物たち全員の希望です~。ここはあなたの王国で、あなたは王国の主となりました~」
「なりました、ってお前な」

 軽い。冗談で言ってるのかといぶかしむ。

 すると、要塞内にいる動物たちが一斉に鳴き声を上げたり、床を叩いたりし始めた。全方位から音の圧を受け、圧倒される。
 ひときわ大きな一羽の鳥――なんと翼が三対もある――が、なにかをくわえて俺の元へ飛んでくる。細い茎の先に、琥珀色の綺麗な花がついている。まるで工芸品のようだ。

「それは~、大神木の頂上でのみ咲く『大神木の新花しんか』です~。森に生きるものたちにとってそれは『王たる証』なのですよ~」

 戸惑っていると、アルマディアが声をかけてきた。

『間違いなく本物です。そして新花をくわえたあれは、神獣オルランシア族に次ぐ力を持つ神鳥の一族。唯一、大神木の頂上まで飛び上がることができるものたちです。彼らが新花を摘んで手ずから持ってきたことは、ルウの言うとおり、ラクター様が王として認められた確かな証拠と言えるでしょう』

 しかるべき格を持った者が、しかるべき品を授ける。
 権威なんて苦手だし避けてきた俺だが……これが彼らにとって最大級の敬意の表れだということはわかる。
 俺は肩の力を抜いた。

 すると、リーニャが神鳥の隣にやってくる。

「貸して。主様を王様にするの、リーニャがやる」

 この役目は絶対に譲らんと言わんばかりのリーニャに、神鳥は大神木の新花を託す。心なしか、神鳥は苦笑しているように見えた。
 新花を受け取ったリーニャが、俺の前に立つ。長く細い茎を俺の首に回し、ネックレスのように結びつける。

 不思議な感覚がした。まるで長年愛用しているような『しっくりくる』感じ。俺は自分の中にある神力が、大神木の新花と共鳴したのだと悟った。
 ……でもこれ、すぐに落としてしまわないかな。いい加工方法がないか、レオンさんにまた聞いてみるか。

「にゃふふ。ばっちり似合ってる。主様」

 目の前に嬉しそうなリーニャの顔がある。俺も笑って、神獣少女の頭を撫でた。
 新しい王の誕生です~と暢気に拍手するルウ。アルマディアが鼻息荒く告げる。

『それでは、新しい王国の名をラクター・パディントン超神王国としましょう』
「おいやめろ。後で絶対後悔するやつだろソレ。頼むからやめろください」
『仕方ありませんね。ではカリファ聖王国はいかがでしょう』

 笑ってやがる。初めから決めてた上でからかったな、こいつ。

「では~、新たな王に盛大な祝福を~」

 ルウの音頭で再び湧き上がる動物たちの声。力いっぱい抱きついてくるリーニャ。
 俺は頭をかきながら思った。

 まさか、こういう結果になるなんてな。
 転生前は社畜、転生後も底辺扱いだった俺が――皆から望まれて王様になる、か。
 人生、わからないものだよ。ホントに。

 祝福してくれる皆を見回す。
 ふと――俺は振り返った。
 要塞出入り口から、地上を見る。

 意識を取り戻したアリアが地面にへたり込んだまま、まぶしそうに俺を見上げていた。
 

しおりを挟む
感想 18

あなたにおすすめの小説

(完結)魔王討伐後にパーティー追放されたFランク魔法剣士は、超レア能力【全スキル】を覚えてゲスすぎる勇者達をザマアしつつ世界を救います

しまうま弁当
ファンタジー
魔王討伐直後にクリードは勇者ライオスからパーティーから出て行けといわれるのだった。クリードはパーティー内ではつねにFランクと呼ばれ戦闘にも参加させてもらえず場美雑言は当たり前でクリードはもう勇者パーティーから出て行きたいと常々考えていたので、いい機会だと思って出て行く事にした。だがラストダンジョンから脱出に必要なリアーの羽はライオス達は分けてくれなかったので、仕方なく一階層づつ上っていく事を決めたのだった。だがなぜか後ろから勇者パーティー内で唯一のヒロインであるミリーが追いかけてきて一緒に脱出しようと言ってくれたのだった。切羽詰まっていると感じたクリードはミリーと一緒に脱出を図ろうとするが、後ろから追いかけてきたメンバーに石にされてしまったのだった。

大器晩成エンチャンター~Sランク冒険者パーティから追放されてしまったが、追放後の成長度合いが凄くて世界最強になる

遠野紫
ファンタジー
「な、なんでだよ……今まで一緒に頑張って来たろ……?」 「頑張って来たのは俺たちだよ……お前はお荷物だ。サザン、お前にはパーティから抜けてもらう」 S級冒険者パーティのエンチャンターであるサザンは或る時、パーティリーダーから追放を言い渡されてしまう。 村の仲良し四人で結成したパーティだったが、サザンだけはなぜか実力が伸びなかったのだ。他のメンバーに追いつくために日々努力を重ねたサザンだったが結局報われることは無く追放されてしまった。 しかしサザンはレアスキル『大器晩成』を持っていたため、ある時突然その強さが解放されたのだった。 とてつもない成長率を手にしたサザンの最強エンチャンターへの道が今始まる。

雑用係の回復術士、【魔力無限】なのに専属ギルドから戦力外通告を受けて追放される〜ケモ耳少女とエルフでダンジョン攻略始めたら『伝説』になった〜

霞杏檎
ファンタジー
祝【コミカライズ決定】!! 「使えん者はいらん……よって、正式にお前には戦力外通告を申し立てる。即刻、このギルドから立ち去って貰おう!! 」 回復術士なのにギルド内で雑用係に成り下がっていたフールは自身が専属で働いていたギルドから、何も活躍がないと言う理由で戦力外通告を受けて、追放されてしまう。 フールは回復術士でありながら自己主張の低さ、そして『単体回復魔法しか使えない』と言う能力上の理由からギルドメンバーからは舐められ、S級ギルドパーティのリーダーであるダレンからも馬鹿にされる存在だった。 しかし、奴らは知らない、フールが【魔力無限】の能力を持っていることを…… 途方に暮れている道中で見つけたダンジョン。そこで傷ついた”ケモ耳銀髪美少女”セシリアを助けたことによって彼女はフールの能力を知ることになる。 フールに助けてもらったセシリアはフールの事を気に入り、パーティの前衛として共に冒険することを決めるのであった。 フールとセシリアは共にダンジョン攻略をしながら自由に生きていくことを始めた一方で、フールのダンジョン攻略の噂を聞いたギルドをはじめ、ダレンはフールを引き戻そうとするが、フールの意思が変わることはなかった…… これは雑用係に成り下がった【最強】回復術士フールと"ケモ耳美少女"達が『伝説』のパーティだと語られるまでを描いた冒険の物語である! (160話で完結予定) 元タイトル 「雑用係の回復術士、【魔力無限】なのに専属ギルドから戦力外通告を受けて追放される〜でも、ケモ耳少女とエルフでダンジョン攻略始めたら『伝説』になった。噂を聞いたギルドが戻ってこいと言ってるがお断りします〜」

隠して忘れていたギフト『ステータスカスタム』で能力を魔改造 〜自由自在にカスタマイズしたら有り得ないほど最強になった俺〜

桜井正宗
ファンタジー
 能力(スキル)を隠して、その事を忘れていた帝国出身の錬金術師スローンは、無能扱いで大手ギルド『クレセントムーン』を追放された。追放後、隠していた能力を思い出しスキルを習得すると『ステータスカスタム』が発現する。これは、自身や相手のステータスを魔改造【カスタム】できる最強の能力だった。  スローンは、偶然出会った『大聖女フィラ』と共にステータスをいじりまくって最強のステータスを手に入れる。その後、超高難易度のクエストを難なくクリア、無双しまくっていく。その噂が広がると元ギルドから戻って来いと頭を下げられるが、もう遅い。  真の仲間と共にスローンは、各地で暴れ回る。究極のスローライフを手に入れる為に。

S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります

内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品] 冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた! 物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。 職人ギルドから追放された美少女ソフィア。 逃亡中の魔法使いノエル。 騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。 彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。 カクヨムにて完結済み。 ( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )

竜騎士の俺は勇者達によって無能者とされて王国から追放されました、俺にこんな事をしてきた勇者達はしっかりお返しをしてやります

しまうま弁当
ファンタジー
ホルキス王家に仕えていた竜騎士のジャンはある日大勇者クレシーと大賢者ラズバーによって追放を言い渡されたのだった。 納得できないジャンは必死に勇者クレシーに訴えたが、ジャンの意見は聞き入れられずにそのまま国外追放となってしまう。 ジャンは必ずクレシーとラズバーにこのお返しをすると誓ったのだった。 そしてジャンは国外にでるために国境の町カリーナに向かったのだが、国境の町カリーナが攻撃されてジャンも巻き込まれてしまったのだった。 竜騎士ジャンの無双活劇が今始まります。

ザコ魔法使いの僕がダンジョンで1人ぼっち!魔獣に襲われても石化した僕は無敵状態!経験値が溜まり続けて気づいた時には最強魔導士に!?

さかいおさむ
ファンタジー
戦士は【スキル】と呼ばれる能力を持っている。 僕はスキルレベル1のザコ魔法使いだ。 そんな僕がある日、ダンジョン攻略に向かう戦士団に入ることに…… パーティに置いていかれ僕は1人ダンジョンに取り残される。 全身ケガだらけでもう助からないだろう…… 諦めたその時、手に入れた宝を装備すると無敵の石化状態に!? 頑張って攻撃してくる魔獣には申し訳ないがダメージは皆無。経験値だけが溜まっていく。 気づけば全魔法がレベル100!? そろそろ反撃開始してもいいですか? 内気な最強魔法使いの僕が美女たちと冒険しながら人助け!

異世界に召喚されたが「間違っちゃった」と身勝手な女神に追放されてしまったので、おまけで貰ったスキルで凡人の俺は頑張って生き残ります!

椿紅颯
ファンタジー
神乃勇人(こうのゆうと)はある日、女神ルミナによって異世界へと転移させられる。 しかしまさかのまさか、それは誤転移ということだった。 身勝手な女神により、たった一人だけ仲間外れにされた挙句の果てに粗雑に扱われ、ほぼ投げ捨てられるようなかたちで異世界の地へと下ろされてしまう。 そんな踏んだり蹴ったりな、凡人主人公がおりなす異世界ファンタジー!

処理中です...