追放?俺にとっては解放だ!~自惚れ勇者パーティに付き合いきれなくなった俺、捨てられた女神を助けてジョブ【楽園創造者】を授かり人生を謳歌する~

和成ソウイチ

文字の大きさ
上 下
29 / 77

第29話 大精霊ルウ

しおりを挟む
 ――いやー、うん。一言、すげえわ。それしか出てこない。
 どっちかって言うと、これまで他人の見た目をどうこう言うのが苦手だった俺でもさ、さすがにコレは、アレだよ。
 特に胸が。

「すげ」
『ラクター様?』

 女神アルマディアの一言で我に返る。たぶん、さっきまで俺が考えていたことは筒抜けだろう。事実だから仕方ないけどさ、でもやっぱり仕方ないじゃんアレは!

 気を取り直して、について。

 カリファ大神木の大精霊は、女性の姿をしていた。
 腰くらいまである薄緑色の髪に、大神木のオーラを表したような金色のメッシュが入っている。
 おっとりした印象を与える目。瞳の色は水色だ。
 白磁の肌に、大神木の幹と同じ色合いの茶色系貫頭衣を身につけている。本来はゆったりしたシルエットの衣装なのだが、大精霊の身体のメリハリがすごすぎて逆にゆったりとは見ていられない姿になっている。
 特に胸が。

「すげ」
「主様、あの精霊の胸、すごく重そうだね。リーニャ、速く動きたいから自分の胸は今くらいがいい。主様はどう?」

 隣に寄り添ったリーニャがドストレートな上に返答に困る質問をぶつけてきた。
 まだ白い目で見られた方が追い詰められずに済んだかもしれない。
 あと胸を押しつけるな。

『イリス姫様がここにいたら、ショックで泣いてしまうかもしれません』
「姫様の名誉のために言うが、あの人もじゅうぶん魅力的だからな? 頼むから俺とともに黙れ」

 ――大精霊がゆっくりとこちらに歩いてくる。
 表情に敵意はない……どころか、まるで子どもでも見るような慈愛の微笑みを浮かべている。

 俺は短く息を吐いた。頭ん中のアレコレを一度蹴り出し、改めてたずねる。

「あんたが、この大神木に宿る大精霊か?」
「はい~。ようこそ~、いらっしゃいましたぁ」

 膝から崩れ落ちるかと思った。

 な、なんて眠くなるような喋り方だ。
 今の俺はGP枯渇でバテてる分、かなりこたえる。

「わたしは、ルウと申します~。どうぞルウとお呼びください~……あら? 同じかしら?」
「お、俺はラクター。ラクター・パディントンだ。こっちはリーニャ。神獣オルランシアの現おさだ」
「にゃ。リーニャだよ」
「にゃ~」

 ……つ、疲れる。なんだこの悠久の時を感じるようなのんびりした雰囲気は。

 いや、むしろぴったりなのか。
 大神木がいつからここにあるのか知らないが、少なくとも俺やリーニャよりもはるかに長生きだろう。ひとつの場所に根付いて遙かな時を森とともに生きる――時間感覚が人間と違うのもありうる話だ。

 ルウと名乗った大精霊は、微笑みを絶やすことなく、その場でしとやかに礼をした。

「こうしてお話しするのは、初めてですね~。よろしくお願いいたします、~」
『こちらこそ。今は訳あって、このラクター・パディントン様とともに在ります。以後、お見知りおきください』

 アルマディアが丁寧に礼を返す。
 女神の存在を俺の中から看破したことといい、すでに名前を知っていた上に呼び捨てにしたことといい、実は結構な大物なのか。この大精霊。

 ――気がつくと、魂動物を含めた生き物たちが周囲に集まってきていた。
 大精霊ルウは、側に寄ってきた魂動物の頭を優しく撫でた。その様子はまるで一種の宗教絵画のようだ。
 彼女は分け隔てなく一匹一匹の頭を撫でていき――って、おい待て。この場にいる全員の頭を撫でて回る気か!?

「ちょっと待ってくれ、ルウ! ストップ、ストップだ」
「はい~?」
「先に質問したい。俺たちがここに来た目的にも関係している」

 本題を切り出す。ルウの表情は変わらない。

「今、カリファの聖森林全体に起きている異変。あんたは心当たりがあるか?」
「はい~」
「……」
「……」
「……ん? それだけ?」
「はい~?」
「……。次。あんたはこの大神木の具現化だと思う。あんた自身にも、なにか異変が起きているのか?」
「はい~」
「……」
「……」

 俺は心の中でアルマディアに語りかけた。

 ――おい。もしかして全部この調子で一つひとつ聞いていかないといけないのか?

『根掘り葉掘りですね。木の精霊だけに』

 ――お前にもし身体が残っていたらはたき倒していたところだ。

 いかん。ペースが乱れて頭が働かない。
 GP枯渇の後遺症がまだ残っているか。
 とりあえず、まずはどこかで休ませてもらうのが先かもしれない。

「お疲れのようですね~」

 気がつくと、すぐ目の前までルウが近づいていた。
 並んで立つと、俺と目線がほぼ一緒。本体もでかいが、精霊状態でも上背がある。

「そうだな。まずはどこか休めるところが――むぐっ!?」
「どうぞ~」

 おっとりとした口調のまま、ルウは俺を抱きしめた。
 とんでもない凶器とも言えそうな胸に、俺の頭を押しつける。

 反射的に離れようとした俺だが、できなかった。
 ルウの力が強いわけではない。少し腕を伸ばせば簡単に振りほどけるだろう。
 だが――なんだ、これは。
 まるで温泉に浮かんでいるような、圧倒的な心地よさ。
 一気に意識が持っていかれそうになる。

『GP、急速に回復。これは、睡眠を上回る回復力です。……ラクター様、聞こえていますか?』
「……」

 やべぇ、の一言すら口にできない。

 半分遠のいた意識の片隅で、アルマディアがリーニャへ呼びかける声を聞く。

『リーニャ、身体能力とは素早く動けることだけではありません。覚えておくとよいでしょう。これこそ人間を癒やし、とりこにする力……包容力です』
「おお、包容力!」
「ほうようりょく~」

 ――今のアホなやり取りで完全に気が抜けた俺は、本日二度目のブラックアウトを味わった。

 
しおりを挟む
感想 18

あなたにおすすめの小説

ザコ魔法使いの僕がダンジョンで1人ぼっち!魔獣に襲われても石化した僕は無敵状態!経験値が溜まり続けて気づいた時には最強魔導士に!?

さかいおさむ
ファンタジー
戦士は【スキル】と呼ばれる能力を持っている。 僕はスキルレベル1のザコ魔法使いだ。 そんな僕がある日、ダンジョン攻略に向かう戦士団に入ることに…… パーティに置いていかれ僕は1人ダンジョンに取り残される。 全身ケガだらけでもう助からないだろう…… 諦めたその時、手に入れた宝を装備すると無敵の石化状態に!? 頑張って攻撃してくる魔獣には申し訳ないがダメージは皆無。経験値だけが溜まっていく。 気づけば全魔法がレベル100!? そろそろ反撃開始してもいいですか? 内気な最強魔法使いの僕が美女たちと冒険しながら人助け!

隠して忘れていたギフト『ステータスカスタム』で能力を魔改造 〜自由自在にカスタマイズしたら有り得ないほど最強になった俺〜

桜井正宗
ファンタジー
 能力(スキル)を隠して、その事を忘れていた帝国出身の錬金術師スローンは、無能扱いで大手ギルド『クレセントムーン』を追放された。追放後、隠していた能力を思い出しスキルを習得すると『ステータスカスタム』が発現する。これは、自身や相手のステータスを魔改造【カスタム】できる最強の能力だった。  スローンは、偶然出会った『大聖女フィラ』と共にステータスをいじりまくって最強のステータスを手に入れる。その後、超高難易度のクエストを難なくクリア、無双しまくっていく。その噂が広がると元ギルドから戻って来いと頭を下げられるが、もう遅い。  真の仲間と共にスローンは、各地で暴れ回る。究極のスローライフを手に入れる為に。

竜騎士の俺は勇者達によって無能者とされて王国から追放されました、俺にこんな事をしてきた勇者達はしっかりお返しをしてやります

しまうま弁当
ファンタジー
ホルキス王家に仕えていた竜騎士のジャンはある日大勇者クレシーと大賢者ラズバーによって追放を言い渡されたのだった。 納得できないジャンは必死に勇者クレシーに訴えたが、ジャンの意見は聞き入れられずにそのまま国外追放となってしまう。 ジャンは必ずクレシーとラズバーにこのお返しをすると誓ったのだった。 そしてジャンは国外にでるために国境の町カリーナに向かったのだが、国境の町カリーナが攻撃されてジャンも巻き込まれてしまったのだった。 竜騎士ジャンの無双活劇が今始まります。

(完結)魔王討伐後にパーティー追放されたFランク魔法剣士は、超レア能力【全スキル】を覚えてゲスすぎる勇者達をザマアしつつ世界を救います

しまうま弁当
ファンタジー
魔王討伐直後にクリードは勇者ライオスからパーティーから出て行けといわれるのだった。クリードはパーティー内ではつねにFランクと呼ばれ戦闘にも参加させてもらえず場美雑言は当たり前でクリードはもう勇者パーティーから出て行きたいと常々考えていたので、いい機会だと思って出て行く事にした。だがラストダンジョンから脱出に必要なリアーの羽はライオス達は分けてくれなかったので、仕方なく一階層づつ上っていく事を決めたのだった。だがなぜか後ろから勇者パーティー内で唯一のヒロインであるミリーが追いかけてきて一緒に脱出しようと言ってくれたのだった。切羽詰まっていると感じたクリードはミリーと一緒に脱出を図ろうとするが、後ろから追いかけてきたメンバーに石にされてしまったのだった。

Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!

仁徳
ファンタジー
シロウ・オルダーは、Sランク昇進をきっかけに赤いバラという冒険者チームから『スキル非所持の無能』とを侮蔑され、パーティーから追放される。 しかし彼は、異世界の知識を利用して新な魔法を生み出すスキル【魔学者】を使用できるが、彼はそのスキルを隠し、無能を演じていただけだった。 そうとは知らずに、彼を追放した赤いバラは、今までシロウのサポートのお陰で強くなっていたことを知らずに、ダンジョンに挑む。だが、初めての敗北を経験したり、その後借金を背負ったり地位と名声を失っていく。 一方自由になったシロウは、新な町での冒険者活動で活躍し、一目置かれる存在となりながら、追放したマリーを助けたことで惚れられてしまう。手料理を振る舞ったり、背中を流したり、それはまるで押しかけ女房だった! これは、チート能力を手に入れてしまったことで、無能を演じたシロウがパーティーを追放され、その後ソロとして活躍して無双すると、他のパーティーから追放されたエルフや魔族といった様々な追放少女が集まり、いつの間にかハーレムパーティーを結成している物語!

スキルで最強神を召喚して、無双してしまうんだが〜パーティーを追放された勇者は、召喚した神達と共に無双する。神達が強すぎて困ってます〜

東雲ハヤブサ
ファンタジー
勇者に選ばれたライ・サーベルズは、他にも選ばれた五人の勇者とパーティーを組んでいた。 ところが、勇者達の実略は凄まじく、ライでは到底敵う相手ではなかった。 「おい雑魚、これを持っていけ」 ライがそう言われるのは日常茶飯事であり、荷物持ちや雑用などをさせられる始末だ。 ある日、洞窟に六人でいると、ライがきっかけで他の勇者の怒りを買ってしまう。  怒りが頂点に達した他の勇者は、胸ぐらを掴まれた後壁に投げつけた。 いつものことだと、流して終わりにしようと思っていた。  だがなんと、邪魔なライを始末してしまおうと話が進んでしまい、次々に攻撃を仕掛けられることとなった。 ハーシュはライを守ろうとするが、他の勇者に気絶させられてしまう。 勇者達は、ただ痛ぶるように攻撃を加えていき、瀕死の状態で洞窟に置いていってしまった。 自分の弱さを呪い、本当に死を覚悟した瞬間、視界に突如文字が現れてスキル《神族召喚》と書かれていた。 今頃そんなスキル手を入れてどうするんだと、心の中でつぶやくライ。 だが、死ぬ記念に使ってやろうじゃないかと考え、スキルを発動した。 その時だった。 目の前が眩く光り出し、気付けば一人の女が立っていた。 その女は、瀕死状態のライを最も簡単に回復させ、ライの命を救って。 ライはそのあと、その女が神達を統一する三大神の一人であることを知った。 そして、このスキルを発動すれば神を自由に召喚出来るらしく、他の三大神も召喚するがうまく進むわけもなく......。 これは、雑魚と呼ばれ続けた勇者が、強き勇者へとなる物語である。 ※小説家になろうにて掲載中

元勇者パーティーの雑用係だけど、実は最強だった〜無能と罵られ追放されたので、真の実力を隠してスローライフします〜

一ノ瀬 彩音
ファンタジー
元勇者パーティーで雑用係をしていたが、追放されてしまった。 しかし彼は本当は最強でしかも、真の実力を隠していた! 今は辺境の小さな村でひっそりと暮らしている。 そうしていると……? ※第3回HJ小説大賞一次通過作品です!

王宮で汚職を告発したら逆に指名手配されて殺されかけたけど、たまたま出会ったメイドロボに転生者の技術力を借りて反撃します

有賀冬馬
ファンタジー
王国貴族ヘンリー・レンは大臣と宰相の汚職を告発したが、逆に濡れ衣を着せられてしまい、追われる身になってしまう。 妻は宰相側に寝返り、ヘンリーは女性不信になってしまう。 さらに差し向けられた追手によって左腕切断、毒、呪い状態という満身創痍で、命からがら雪山に逃げ込む。 そこで力尽き、倒れたヘンリーを助けたのは、奇妙なメイド型アンドロイドだった。 そのアンドロイドは、かつて大賢者と呼ばれた転生者の技術で作られたメイドロボだったのだ。 現代知識チートと魔法の融合技術で作られた義手を与えられたヘンリーが、独立勢力となって王国の悪を蹴散らしていく!

処理中です...