追放?俺にとっては解放だ!~自惚れ勇者パーティに付き合いきれなくなった俺、捨てられた女神を助けてジョブ【楽園創造者】を授かり人生を謳歌する~

和成ソウイチ

文字の大きさ
上 下
26 / 77

第26話 洞窟の魂たち

しおりを挟む
 光こぼれる洞窟の楽園。
 亡骸たちが土に還ったその場所で、俺の想定外の出来事が起こりつつあった。

「みんな……って」

 つぶやいた直後、地面にポツポツと光の玉が湧き出した。
 どんどん増える。
 俺はとっさに構えを取ろうとするが、GP減少の影響でうまく身体が動かせない。

 リーニャを見た。すぐ隣で俺に寄り添う神獣少女は、落ち着いた様子で楽園の変化を眺めている。耳の動きも、尻尾の動きも、実にリラックスしている。むしろ、楽しそうとさえ言える。

 光の数は、およそ二十から三十ほど。
 敵意は感じない。

『なるほど』

 アルマディアがひとり納得したようにつぶやいた。俺は心の中で説明を求める。

『彼らは、戻ってきたのです。自らの意志で。ラクター様に力を貸すために』

 戻ってきた?
 首を傾げる俺の前で、光が形を変えていく。

 あるものは犬の姿に。
 あるものは熊の姿に。
 あるものはワシの姿に。

 まるでクリスマスのイルミネーションのように、様々な動物の輪郭だけを形作る。

『何者かによって理不尽に斃された動物たち。ほとんどのものはラクター様の『楽園創造』によって肉体と魂が浄化されましたが、一部のものたちが自ら進んで、魂のみ降臨してきたようです』
「リーニャ言った。主様の声に応えるの、リーニャだけじゃないって。ここの皆、主様の力になりたいって言って、帰ってきた」

 アルマディアとリーニャの言葉を、俺はどう受け止めて良いのかわからない。
 少なくとも、俺は彼らからの見返りを期待して楽園を創造したわけじゃない。魂だけになってまで、この場に戻ってくるのはやり過ぎだと――このときは正直、思った。

 だが、光の輪郭だけになった動物たちが俺の周りに集まり、じっと俺を見上げてくる姿を見て、少し、考えが変わる。
 こいつらの強い想いを感じるのだ。

「主様。ここに集まった子たち、皆、一族の中でも特に誇り高いやつ。主様とともに再び立ち上がることは、この子たちにとって、とても強い喜び。生きている証」
「……。なるほど。魂のみになっても、まだ自らの信念に沿って立つ、か。そりゃ、否が応でもリスペクトしなきゃな」

 俺は肩の力を抜いた。

「どうせ今の俺は役立たずだ。お前たち、俺に力を貸してくれ。お前たちをこんな目に遭わせた奴を見つけ出し、一矢報いてやろうぜ。俺たちはただ殺されるためだけに生まれたんじゃねえってな」

 二、三十体の動物たちが呼応した。遠吠えのように喉を天に向けるやつ、興奮のあまり飛び跳ねるやつ、何度も翼をはためかせるやつ。
 魂だけになったせいか、声も音も聞こえない。だが、こいつらの熱い想いは伝わってきた。

『イリス姫がこの光景を見たら、あなた様をさらに尊敬されるでしょうね』
「こんなときに、相変わらずのセリフを吐くなよ」

 魂動物の一体が俺に近づく。大きな虎のような姿だ。どうやら乗れと言っているらしい。不思議なことに、輪郭だけになっても広い背中は健在だった。
 魂虎にまたがる。絨毯のような柔らかい感触だった。

 俺は洞窟の奥を見据えた。

「さあ、行くぞ」
「出発!」

 かたわらで、リーニャが参謀よろしく手を突き出す。
 俺とリーニャを中心に据え、魂動物の一団が進軍を開始した。

 ――道案内は、小柄ですばしっこい魂動物たちの役目。
 彼らは先行し、匂いや気配を感じながら俺たちに様子を伝えてくる。
 元スカウトの俺にとって、馴染みのある光景だ。……ま、さすがに洞窟の壁面を垂直に登る芸当は彼らならではだが。ちょっとすげえ。

 俺には彼らの言葉はわからない。代わりにリーニャが魂動物たちの指揮を執る。
 普段が家猫か番犬みたいな姿の分、新鮮だ。神獣オルランシアの名は伊達ではない。

 洞窟は、思ったよりも入り組んでいる。
 最初は地下水の通り道だったのか――と思ったが、どうも違う。起伏が激しい上に、洞窟の幅も高さも場所によってまちまちだ。
 この洞窟、いったいどうやってできたんだ……。

 ――どのくらい進んだか。
 ふと、魂動物たちの動きがゆっくりになった。

『ラクター様。近いです』
「ああ。俺も何となく感じるよ。すげー嫌な気配だ」
『同意です。しかし不可解なのは、気配に混じって神力も強くなっていることです。お気づきですか? 先ほどから、ラクター様のGP回復速度が急上昇しています』

 言われてGPメーターを見る。
 確かに、最初はほとんどガス欠状態だったのが、三分の一くらいには回復している。
 俺は嫌な予感を振り払うように、わざと笑った。

「神様の力を持った化け物、ってか? そっちの世界にも不良はいるんだな」
『お気を付けください。ただの魔物ではありません』

 やがて俺たち一行の前に、急斜面が現れる。
 まるでドライアイスの煙のように禍々しい気配が上から降りてくる。さすがの魂動物たちも、進むのをためらっていた。

 彼らを叱咤するように、リーニャが先頭に立つ。耳も尻尾も警戒心全開で、斜面を登っていく。
 俺たちも続いた。

 斜面の天辺に到達する。慎重に、先の様子をうかがった。
 まず――広い。サッカーコートくらいはありそうだ。
 そして――明るい。地下洞窟のはずなのに、空間の広さが目視でわかる。

 明るさの理由は、空間の最奥部に居る『アレ』。
 ぱっと見じゃわかりにくいが、アレは間違いなく――。

「ドラゴン、か。しかも、身体のあちこちが青白く光ってやがる」
『ラクター様。ドラゴンの頭上をご覧ください』

 アルマディアが言う。緊迫した声だ。
 見ると、ドラゴンの上から何かが覆い被さっている。あれは……木の根っこ?

『間違いありません。大神木の根です。大神木が、あの奇妙なドラゴンを押さえつけているのです。ですが』

 俺たちの見ている前で、根の一部が枯れて折れる。

『限界が、近い』


しおりを挟む
感想 18

あなたにおすすめの小説

(完結)魔王討伐後にパーティー追放されたFランク魔法剣士は、超レア能力【全スキル】を覚えてゲスすぎる勇者達をザマアしつつ世界を救います

しまうま弁当
ファンタジー
魔王討伐直後にクリードは勇者ライオスからパーティーから出て行けといわれるのだった。クリードはパーティー内ではつねにFランクと呼ばれ戦闘にも参加させてもらえず場美雑言は当たり前でクリードはもう勇者パーティーから出て行きたいと常々考えていたので、いい機会だと思って出て行く事にした。だがラストダンジョンから脱出に必要なリアーの羽はライオス達は分けてくれなかったので、仕方なく一階層づつ上っていく事を決めたのだった。だがなぜか後ろから勇者パーティー内で唯一のヒロインであるミリーが追いかけてきて一緒に脱出しようと言ってくれたのだった。切羽詰まっていると感じたクリードはミリーと一緒に脱出を図ろうとするが、後ろから追いかけてきたメンバーに石にされてしまったのだった。

ザコ魔法使いの僕がダンジョンで1人ぼっち!魔獣に襲われても石化した僕は無敵状態!経験値が溜まり続けて気づいた時には最強魔導士に!?

さかいおさむ
ファンタジー
戦士は【スキル】と呼ばれる能力を持っている。 僕はスキルレベル1のザコ魔法使いだ。 そんな僕がある日、ダンジョン攻略に向かう戦士団に入ることに…… パーティに置いていかれ僕は1人ダンジョンに取り残される。 全身ケガだらけでもう助からないだろう…… 諦めたその時、手に入れた宝を装備すると無敵の石化状態に!? 頑張って攻撃してくる魔獣には申し訳ないがダメージは皆無。経験値だけが溜まっていく。 気づけば全魔法がレベル100!? そろそろ反撃開始してもいいですか? 内気な最強魔法使いの僕が美女たちと冒険しながら人助け!

隠して忘れていたギフト『ステータスカスタム』で能力を魔改造 〜自由自在にカスタマイズしたら有り得ないほど最強になった俺〜

桜井正宗
ファンタジー
 能力(スキル)を隠して、その事を忘れていた帝国出身の錬金術師スローンは、無能扱いで大手ギルド『クレセントムーン』を追放された。追放後、隠していた能力を思い出しスキルを習得すると『ステータスカスタム』が発現する。これは、自身や相手のステータスを魔改造【カスタム】できる最強の能力だった。  スローンは、偶然出会った『大聖女フィラ』と共にステータスをいじりまくって最強のステータスを手に入れる。その後、超高難易度のクエストを難なくクリア、無双しまくっていく。その噂が広がると元ギルドから戻って来いと頭を下げられるが、もう遅い。  真の仲間と共にスローンは、各地で暴れ回る。究極のスローライフを手に入れる為に。

大器晩成エンチャンター~Sランク冒険者パーティから追放されてしまったが、追放後の成長度合いが凄くて世界最強になる

遠野紫
ファンタジー
「な、なんでだよ……今まで一緒に頑張って来たろ……?」 「頑張って来たのは俺たちだよ……お前はお荷物だ。サザン、お前にはパーティから抜けてもらう」 S級冒険者パーティのエンチャンターであるサザンは或る時、パーティリーダーから追放を言い渡されてしまう。 村の仲良し四人で結成したパーティだったが、サザンだけはなぜか実力が伸びなかったのだ。他のメンバーに追いつくために日々努力を重ねたサザンだったが結局報われることは無く追放されてしまった。 しかしサザンはレアスキル『大器晩成』を持っていたため、ある時突然その強さが解放されたのだった。 とてつもない成長率を手にしたサザンの最強エンチャンターへの道が今始まる。

スキル間違いの『双剣士』~一族の恥だと追放されたが、追放先でスキルが覚醒。気が付いたら最強双剣士に~

きょろ
ファンタジー
この世界では5歳になる全ての者に『スキル』が与えられる――。 洗礼の儀によってスキル『片手剣』を手にしたグリム・レオハートは、王国で最も有名な名家の長男。 レオハート家は代々、女神様より剣の才能を与えられる事が多い剣聖一族であり、グリムの父は王国最強と謳われる程の剣聖であった。 しかし、そんなレオハート家の長男にも関わらずグリムは全く剣の才能が伸びなかった。 スキルを手にしてから早5年――。 「貴様は一族の恥だ。最早息子でも何でもない」 突如そう父に告げられたグリムは、家族からも王国からも追放され、人が寄り付かない辺境の森へと飛ばされてしまった。 森のモンスターに襲われ絶対絶命の危機に陥ったグリム。ふと辺りを見ると、そこには過去に辺境の森に飛ばされたであろう者達の骨が沢山散らばっていた。 それを見つけたグリムは全てを諦め、最後に潔く己の墓を建てたのだった。 「どうせならこの森で1番派手にしようか――」 そこから更に8年――。 18歳になったグリムは何故か辺境の森で最強の『双剣士』となっていた。 「やべ、また力込め過ぎた……。双剣じゃやっぱ強すぎるな。こりゃ1本は飾りで十分だ」 最強となったグリムの所へ、ある日1体の珍しいモンスターが現れた。 そして、このモンスターとの出会いがグレイの運命を大きく動かす事となる――。

雑用係の回復術士、【魔力無限】なのに専属ギルドから戦力外通告を受けて追放される〜ケモ耳少女とエルフでダンジョン攻略始めたら『伝説』になった〜

霞杏檎
ファンタジー
祝【コミカライズ決定】!! 「使えん者はいらん……よって、正式にお前には戦力外通告を申し立てる。即刻、このギルドから立ち去って貰おう!! 」 回復術士なのにギルド内で雑用係に成り下がっていたフールは自身が専属で働いていたギルドから、何も活躍がないと言う理由で戦力外通告を受けて、追放されてしまう。 フールは回復術士でありながら自己主張の低さ、そして『単体回復魔法しか使えない』と言う能力上の理由からギルドメンバーからは舐められ、S級ギルドパーティのリーダーであるダレンからも馬鹿にされる存在だった。 しかし、奴らは知らない、フールが【魔力無限】の能力を持っていることを…… 途方に暮れている道中で見つけたダンジョン。そこで傷ついた”ケモ耳銀髪美少女”セシリアを助けたことによって彼女はフールの能力を知ることになる。 フールに助けてもらったセシリアはフールの事を気に入り、パーティの前衛として共に冒険することを決めるのであった。 フールとセシリアは共にダンジョン攻略をしながら自由に生きていくことを始めた一方で、フールのダンジョン攻略の噂を聞いたギルドをはじめ、ダレンはフールを引き戻そうとするが、フールの意思が変わることはなかった…… これは雑用係に成り下がった【最強】回復術士フールと"ケモ耳美少女"達が『伝説』のパーティだと語られるまでを描いた冒険の物語である! (160話で完結予定) 元タイトル 「雑用係の回復術士、【魔力無限】なのに専属ギルドから戦力外通告を受けて追放される〜でも、ケモ耳少女とエルフでダンジョン攻略始めたら『伝説』になった。噂を聞いたギルドが戻ってこいと言ってるがお断りします〜」

勇者PTを追放されたので獣娘たちに乗り換えて楽しく生きる

まったりー
ファンタジー
勇者を支援する為に召喚され、5年の間ユニークスキル【カードダス】で支援して来た主人公は、突然の冤罪を受け勇者PTを追放されてしまいました。 そんな主人公は、ギルドで出会った獣人のPTと仲良くなり、彼女たちの為にスキルを使う事を決め、獣人たちが暮らしやすい場所を作る為に奮闘する物語です。

異世界に召喚されたが「間違っちゃった」と身勝手な女神に追放されてしまったので、おまけで貰ったスキルで凡人の俺は頑張って生き残ります!

椿紅颯
ファンタジー
神乃勇人(こうのゆうと)はある日、女神ルミナによって異世界へと転移させられる。 しかしまさかのまさか、それは誤転移ということだった。 身勝手な女神により、たった一人だけ仲間外れにされた挙句の果てに粗雑に扱われ、ほぼ投げ捨てられるようなかたちで異世界の地へと下ろされてしまう。 そんな踏んだり蹴ったりな、凡人主人公がおりなす異世界ファンタジー!

処理中です...