追放?俺にとっては解放だ!~自惚れ勇者パーティに付き合いきれなくなった俺、捨てられた女神を助けてジョブ【楽園創造者】を授かり人生を謳歌する~

和成ソウイチ

文字の大きさ
上 下
11 / 77

第11話 ラクターからのプレゼント

しおりを挟む
 レオンさんの応急処置を済ませ、俺たちは一度、野盗の洞窟を出た。
 洞窟前に転がるごちゃごちゃした諸々を、俺は腕を組んで見つめた。
 改めて考えると、自分が監禁されていた場所に住むって、あまりいい気分じゃないよな。

「レオンさん。ここの洞窟で本当にいい? 何なら、もっと良さそうな別の場所を探すけど」
「いえ、そこまでしていただくわけには」

 首を振るレオンさん。遠慮なのか、楽園を創ることにまだ半信半疑なのか。
 まあ仕方ない。
【楽園創造者】の力は、どうやら世界で俺だけが持っているものらしい。
 見たことも聞いたこともない力なら、疑うのも無理はない。俺だって逆に立場ならそうする。

 けど、もう助けると決めたからな。
 少々面倒なことになろうとも、最後まで見届けるさ。

 レオンさんは辺りを見回した。

「この場所は水源も近いですし、街道までの道も険しくありません。しばらく行き来して、危険な動物や魔物に遭遇しませんでしたし」
「当然」

 リーニャが横から割り込んで、胸を張る。

「下等な魔物がリーニャたちの縄張りを荒らすの、ぜったい許さないから。皆で全部倒してた」
「はあ……」
「む。信じてない?」
「いえそんな!」

 慌てて否定するレオンさん。ま、これも無理ないか。パッと見、リーニャは可憐なケモ耳美少女だもんな。
 まさか野盗を瞬殺した上、あわや食っちまいそうになったなんて、すぐには信じられないだろう。

 とにかく、場所はここで決まり。あとは――。

「アルマディア」

 呼びかけると、すぐに『はい』と返事があった。

「確認だが、例えば一度【楽園創造者】の力で創った楽園に手を加えることはできるのか?」
『可能です。追加で新しいモノを創造したり、新たに力を加えたりできます。もちろん、一から楽園を創り直すことも問題ありません』
「よし」

 俺はうなずいた。

 楽園創造はイメージが大事。
 だが俺は建築の専門家じゃない。ましてや、研究者が暮らす家など理解の外だ。
 だからまずは、できるところからやる。
 レオンさんにとって、住みやすい場所にするのだ。

 ――楽園創造。

 俺の身体から神力があふれる。一晩ぐっすり休んだおかげか、今までで一番の力を実感した。
 洞窟周辺を、綺麗な円形光がすっぽりと包む。

 すると、みるみるうちに洞窟前の光景が変わっていった。椅子代わりに転がっていた石やら木柵やら不格好なかまどやらが、次々と光に飲まれて姿を消していく。
 凹凸が激しくぬかるんでいた地面は、綺麗な砂利道に。その両脇にはガーデニングが行き届いた、目に鮮やかな緑が。
 木製の扉で雑に蓋がされていた洞窟入り口は、まるで外国にある風変わりなホテルのようにお洒落な外観になった。そうそう、いつかネットで見たんだよ。こういう場所。
 ……ん?

「おおっ!?」

 レオンさんだけでなく、リーニャまで驚きの声をあげる。
 そして俺も。

「マジか」

 洞窟の上部。
 さっきまではただ土がこんもりと盛り上がった地形でしかなかったのに、そこに巨大な樹がにょきにょきと生えてきたのだ。
 まるで楽園の存在を誇示するかのように。

 あ、よく見たら枝になってる実、オルランシア族の聖地のものとよく似てる。
 そっか。あれが食べ物になるんだ。
 すげ。自分で創っておいてアレだが、これ一生街に出なくてよくない? 普通に最高なんだが。

 ――光が収まる。

「さて。レオンさん、中を確認してくれるか? 俺じゃ使い勝手がわからなくて――レオンさん?」

 口を開けたまま呆けている研究者の男を揺すって、我に返らせる。

「あの」

 信じられないという顔で、彼は言った。

「ここを本当に、僕たちの拠点として使ってよいので……?」
「ああ。ここは今日から、あんたたちの家だよ」

 レオンさん、また泣いた。

 しっかりした作りの玄関の前に立つ。
 突然、リーニャが扉に正拳突きをかました。

「お、おいこらリーニャ!?」
「頑丈。これなら外敵も安心。さすが主様」
「お、おう。だが次はやる前に声をかけてくれ」
「うにゃ」
『うふふっ』

 リーニャの一撃にもびくともしなかった扉を開け、中に入る。
 木の良い香りがふわりと漂う。

 正面に広いリビング、隣接してキッチン。その隣に風呂とトイレ。
 キッチンの反対側には合計三部屋。いわゆる三LDKだ。寝室と、子ども部屋と、書斎兼研究室ってトコか。
 窓がないのは唯一の欠点だが、通気口は設けているし、日々の暮らしには問題ないはずだ。
 普通に俺が住みたい。

「あ、しまった」

 三和土たたきで靴を脱ぎかけ、頭を抱える。
 しまったな、つい転生前の感覚で間取りをイメージしてしまった。この世界の人たち、屋内で靴を脱ぐ習慣なかったわ。

「ごめんレオンさん。ここの段差、また後で埋めるから……って、レオンさん?」
「こ、これはすごい……。いったい、どういう仕組みになっているのでしょう」

 言うなり、室内に駆け込むレオンさん。
 リビングで天を仰ぎ、

「天井に照明器具! これは魔法なのでしょうか!?」

 次いでキッチンで蛇口をおっかなびっくり操作し、

「水が出る! これも魔法なのですか!?」

 そして風呂場に行き、

「個人所有の浴場!? こ、ここは貴族の館ですか!?」

 と叫んだ。風呂場なのでちょっと声がこもってたね。

「ラクター君! 本当に、本当にここに住んでいいですか!? 僕には、何も払えるものがないのに……本当に!?」

 息切らして戻ってきたレオンさんに、俺は苦笑した。

「お代は結構。それが、俺自身で決めた力の使い方だからね」

しおりを挟む
感想 18

あなたにおすすめの小説

(完結)魔王討伐後にパーティー追放されたFランク魔法剣士は、超レア能力【全スキル】を覚えてゲスすぎる勇者達をザマアしつつ世界を救います

しまうま弁当
ファンタジー
魔王討伐直後にクリードは勇者ライオスからパーティーから出て行けといわれるのだった。クリードはパーティー内ではつねにFランクと呼ばれ戦闘にも参加させてもらえず場美雑言は当たり前でクリードはもう勇者パーティーから出て行きたいと常々考えていたので、いい機会だと思って出て行く事にした。だがラストダンジョンから脱出に必要なリアーの羽はライオス達は分けてくれなかったので、仕方なく一階層づつ上っていく事を決めたのだった。だがなぜか後ろから勇者パーティー内で唯一のヒロインであるミリーが追いかけてきて一緒に脱出しようと言ってくれたのだった。切羽詰まっていると感じたクリードはミリーと一緒に脱出を図ろうとするが、後ろから追いかけてきたメンバーに石にされてしまったのだった。

ザコ魔法使いの僕がダンジョンで1人ぼっち!魔獣に襲われても石化した僕は無敵状態!経験値が溜まり続けて気づいた時には最強魔導士に!?

さかいおさむ
ファンタジー
戦士は【スキル】と呼ばれる能力を持っている。 僕はスキルレベル1のザコ魔法使いだ。 そんな僕がある日、ダンジョン攻略に向かう戦士団に入ることに…… パーティに置いていかれ僕は1人ダンジョンに取り残される。 全身ケガだらけでもう助からないだろう…… 諦めたその時、手に入れた宝を装備すると無敵の石化状態に!? 頑張って攻撃してくる魔獣には申し訳ないがダメージは皆無。経験値だけが溜まっていく。 気づけば全魔法がレベル100!? そろそろ反撃開始してもいいですか? 内気な最強魔法使いの僕が美女たちと冒険しながら人助け!

大器晩成エンチャンター~Sランク冒険者パーティから追放されてしまったが、追放後の成長度合いが凄くて世界最強になる

遠野紫
ファンタジー
「な、なんでだよ……今まで一緒に頑張って来たろ……?」 「頑張って来たのは俺たちだよ……お前はお荷物だ。サザン、お前にはパーティから抜けてもらう」 S級冒険者パーティのエンチャンターであるサザンは或る時、パーティリーダーから追放を言い渡されてしまう。 村の仲良し四人で結成したパーティだったが、サザンだけはなぜか実力が伸びなかったのだ。他のメンバーに追いつくために日々努力を重ねたサザンだったが結局報われることは無く追放されてしまった。 しかしサザンはレアスキル『大器晩成』を持っていたため、ある時突然その強さが解放されたのだった。 とてつもない成長率を手にしたサザンの最強エンチャンターへの道が今始まる。

雑用係の回復術士、【魔力無限】なのに専属ギルドから戦力外通告を受けて追放される〜ケモ耳少女とエルフでダンジョン攻略始めたら『伝説』になった〜

霞杏檎
ファンタジー
祝【コミカライズ決定】!! 「使えん者はいらん……よって、正式にお前には戦力外通告を申し立てる。即刻、このギルドから立ち去って貰おう!! 」 回復術士なのにギルド内で雑用係に成り下がっていたフールは自身が専属で働いていたギルドから、何も活躍がないと言う理由で戦力外通告を受けて、追放されてしまう。 フールは回復術士でありながら自己主張の低さ、そして『単体回復魔法しか使えない』と言う能力上の理由からギルドメンバーからは舐められ、S級ギルドパーティのリーダーであるダレンからも馬鹿にされる存在だった。 しかし、奴らは知らない、フールが【魔力無限】の能力を持っていることを…… 途方に暮れている道中で見つけたダンジョン。そこで傷ついた”ケモ耳銀髪美少女”セシリアを助けたことによって彼女はフールの能力を知ることになる。 フールに助けてもらったセシリアはフールの事を気に入り、パーティの前衛として共に冒険することを決めるのであった。 フールとセシリアは共にダンジョン攻略をしながら自由に生きていくことを始めた一方で、フールのダンジョン攻略の噂を聞いたギルドをはじめ、ダレンはフールを引き戻そうとするが、フールの意思が変わることはなかった…… これは雑用係に成り下がった【最強】回復術士フールと"ケモ耳美少女"達が『伝説』のパーティだと語られるまでを描いた冒険の物語である! (160話で完結予定) 元タイトル 「雑用係の回復術士、【魔力無限】なのに専属ギルドから戦力外通告を受けて追放される〜でも、ケモ耳少女とエルフでダンジョン攻略始めたら『伝説』になった。噂を聞いたギルドが戻ってこいと言ってるがお断りします〜」

隠して忘れていたギフト『ステータスカスタム』で能力を魔改造 〜自由自在にカスタマイズしたら有り得ないほど最強になった俺〜

桜井正宗
ファンタジー
 能力(スキル)を隠して、その事を忘れていた帝国出身の錬金術師スローンは、無能扱いで大手ギルド『クレセントムーン』を追放された。追放後、隠していた能力を思い出しスキルを習得すると『ステータスカスタム』が発現する。これは、自身や相手のステータスを魔改造【カスタム】できる最強の能力だった。  スローンは、偶然出会った『大聖女フィラ』と共にステータスをいじりまくって最強のステータスを手に入れる。その後、超高難易度のクエストを難なくクリア、無双しまくっていく。その噂が広がると元ギルドから戻って来いと頭を下げられるが、もう遅い。  真の仲間と共にスローンは、各地で暴れ回る。究極のスローライフを手に入れる為に。

スキル間違いの『双剣士』~一族の恥だと追放されたが、追放先でスキルが覚醒。気が付いたら最強双剣士に~

きょろ
ファンタジー
この世界では5歳になる全ての者に『スキル』が与えられる――。 洗礼の儀によってスキル『片手剣』を手にしたグリム・レオハートは、王国で最も有名な名家の長男。 レオハート家は代々、女神様より剣の才能を与えられる事が多い剣聖一族であり、グリムの父は王国最強と謳われる程の剣聖であった。 しかし、そんなレオハート家の長男にも関わらずグリムは全く剣の才能が伸びなかった。 スキルを手にしてから早5年――。 「貴様は一族の恥だ。最早息子でも何でもない」 突如そう父に告げられたグリムは、家族からも王国からも追放され、人が寄り付かない辺境の森へと飛ばされてしまった。 森のモンスターに襲われ絶対絶命の危機に陥ったグリム。ふと辺りを見ると、そこには過去に辺境の森に飛ばされたであろう者達の骨が沢山散らばっていた。 それを見つけたグリムは全てを諦め、最後に潔く己の墓を建てたのだった。 「どうせならこの森で1番派手にしようか――」 そこから更に8年――。 18歳になったグリムは何故か辺境の森で最強の『双剣士』となっていた。 「やべ、また力込め過ぎた……。双剣じゃやっぱ強すぎるな。こりゃ1本は飾りで十分だ」 最強となったグリムの所へ、ある日1体の珍しいモンスターが現れた。 そして、このモンスターとの出会いがグレイの運命を大きく動かす事となる――。

竜騎士の俺は勇者達によって無能者とされて王国から追放されました、俺にこんな事をしてきた勇者達はしっかりお返しをしてやります

しまうま弁当
ファンタジー
ホルキス王家に仕えていた竜騎士のジャンはある日大勇者クレシーと大賢者ラズバーによって追放を言い渡されたのだった。 納得できないジャンは必死に勇者クレシーに訴えたが、ジャンの意見は聞き入れられずにそのまま国外追放となってしまう。 ジャンは必ずクレシーとラズバーにこのお返しをすると誓ったのだった。 そしてジャンは国外にでるために国境の町カリーナに向かったのだが、国境の町カリーナが攻撃されてジャンも巻き込まれてしまったのだった。 竜騎士ジャンの無双活劇が今始まります。

異世界に召喚されたが「間違っちゃった」と身勝手な女神に追放されてしまったので、おまけで貰ったスキルで凡人の俺は頑張って生き残ります!

椿紅颯
ファンタジー
神乃勇人(こうのゆうと)はある日、女神ルミナによって異世界へと転移させられる。 しかしまさかのまさか、それは誤転移ということだった。 身勝手な女神により、たった一人だけ仲間外れにされた挙句の果てに粗雑に扱われ、ほぼ投げ捨てられるようなかたちで異世界の地へと下ろされてしまう。 そんな踏んだり蹴ったりな、凡人主人公がおりなす異世界ファンタジー!

処理中です...