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第1話 追放? 俺にとっては解放だ!
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「スカウトはダサい。男はつまらん。つーことでラクター、お前はクビな」
金髪ツンツン頭の勇者スカルが、いかにも見下した口調で言った。
ラクターとは、俺――ラクター・パディントンのことだ。
ここは馴染みの酒場。スカルは特等席に座り、俺は立たされたままである。
スカルの取り巻き少女たちが俺を見てクスクスと笑っている。スカルの右隣が聖女エリス、左隣が賢者アリア。二人とも、スカル好みの美少女である。
俺の、仲間だった人たち。
「それだけの理由で、俺を追放するのか」
自分でも驚くほど無感情な声が出た。
しかしスカルはまったく気にも留めない。
「当たり前だろ。たいして強くもない、魔法が使えるわけでもない、頭がいいわけでもない。ただ俺たちの後をコソコソコソコソ付いてくるだけの無能じゃないか。その点、俺はお前にないものをすべて持ってる。ラクター、お前を仲間にしておく意味がどこにある?」
「そーそー」
取り巻きたちがうなずいた。
――スカルたちにとって俺は、体の良い荷物運び。
そして憂さ晴らしの相手だった。
たぶん、今このときもそうだ。
俺は知ってる。
スカルは昨日、王様に内緒で違法な賭博場で遊んで、大金をスッていた。
エリスは画家に描かせた自分の肖像画が気に入らなかったと話していた。
アリアは無茶な実験で研究所を損壊させて、所長から叱られてむくれていた。
俺は知ってる。尻拭いをしたのは、全部俺だから。
それなのに、こいつらはもう俺をいらないと言っている。
俺はスカルの表情を見た。
――ほら、謝るなら今のうちだぞ? お前が土下座して頼み込むなら、クビを撤回してやらんこともないぜ?
奴の微笑みは、そう語っている。
力もコネもないお前が勇者パーティから抜けられるはずがない。だからみっともない姿を見せて、俺たちを喜ばせろ――そう考えている顔だ。他の皆も。
確かに俺には勇者ほど圧倒的な力がない。
顔は十人並みだし、身長もこの世界じゃ平均くらい。
必死こいて習得した数々のスカウトスキルと、地道なコミュニケーションによる人脈。
あとはそう……子どもじみた信念があるだけだ。
「そうだな」
俺のつぶやきに、スカル、エリス、アリアが怪訝そうな表情をした。
俺は懐から一通の手紙を取り出し、スカルに手渡した。
「あん? なんだこれは」
「イリス姫殿下からの親書だよ。さっき親衛隊の人から預かった」
「なにお前が持ってんだよ。早く寄越せ」
手紙をひったくり、食い入るように中を見る。ちなみに、俺は中身をすでに読んでいた。
差出人名代わりのサインに、そう書いてあったから。
読み終えたスカルは上機嫌になっていた。
「ハッ! 見ろよラクター。姫様が俺たちを英雄として扱うと言ってる。だが残念だったな、お前の名前はどこにもねえよ」
「……」
「お前を用済みだと思っているのは俺たちだけじゃないってことだな! ハッハッハ!」
高笑いするスカルを俺は冷めた目で見ていた。
……やっぱり気付かなかったか。
姫様は手紙に簡単な暗号を仕込んでいた。『この暗号に気付けたのなら、それはラクター・パディントンのおかげです。もっと彼を大事にしてあげてください』――と。
あの純粋な姫様のことだ。暗号を仕込むなんて真似、本意でなかったに違いない。
だが、ストレートに叱責すれば、この勇者は何をするかわからない。
震える筆跡に、俺は姫様の葛藤を感じた。
――ありがとう、姫様。俺の名前を書かないでいてくれて。
おかげで踏ん切りがついた。
これまでずっと我慢してきた。
けど駄目だ。この勇者に、俺は付いていきたくない。
愛想が尽きた。完全に。
スカルは手紙を俺の前でヒラヒラさせながら、舐めるように言った。
「用済み扱いされたお前を連れてたら俺まで馬鹿にされる。お前、ホントにクビな? 可哀想なラクターくん?」
――その言葉を待ってたよ、勇者スカル。じゃあな。
俺は踵を返した。
背中から勇者パーティの高笑いが聞こえてくる。
酒場の扉を開け、大通りに出た俺は、その場で深呼吸した。
腹の底から湧き上がってくる感情がある。頬がムズムズした。
俺は思わず、その場でガッツポーズを取った。
「よぉっし、これで奴らから解放された! 俺は――自由だ!」
金髪ツンツン頭の勇者スカルが、いかにも見下した口調で言った。
ラクターとは、俺――ラクター・パディントンのことだ。
ここは馴染みの酒場。スカルは特等席に座り、俺は立たされたままである。
スカルの取り巻き少女たちが俺を見てクスクスと笑っている。スカルの右隣が聖女エリス、左隣が賢者アリア。二人とも、スカル好みの美少女である。
俺の、仲間だった人たち。
「それだけの理由で、俺を追放するのか」
自分でも驚くほど無感情な声が出た。
しかしスカルはまったく気にも留めない。
「当たり前だろ。たいして強くもない、魔法が使えるわけでもない、頭がいいわけでもない。ただ俺たちの後をコソコソコソコソ付いてくるだけの無能じゃないか。その点、俺はお前にないものをすべて持ってる。ラクター、お前を仲間にしておく意味がどこにある?」
「そーそー」
取り巻きたちがうなずいた。
――スカルたちにとって俺は、体の良い荷物運び。
そして憂さ晴らしの相手だった。
たぶん、今このときもそうだ。
俺は知ってる。
スカルは昨日、王様に内緒で違法な賭博場で遊んで、大金をスッていた。
エリスは画家に描かせた自分の肖像画が気に入らなかったと話していた。
アリアは無茶な実験で研究所を損壊させて、所長から叱られてむくれていた。
俺は知ってる。尻拭いをしたのは、全部俺だから。
それなのに、こいつらはもう俺をいらないと言っている。
俺はスカルの表情を見た。
――ほら、謝るなら今のうちだぞ? お前が土下座して頼み込むなら、クビを撤回してやらんこともないぜ?
奴の微笑みは、そう語っている。
力もコネもないお前が勇者パーティから抜けられるはずがない。だからみっともない姿を見せて、俺たちを喜ばせろ――そう考えている顔だ。他の皆も。
確かに俺には勇者ほど圧倒的な力がない。
顔は十人並みだし、身長もこの世界じゃ平均くらい。
必死こいて習得した数々のスカウトスキルと、地道なコミュニケーションによる人脈。
あとはそう……子どもじみた信念があるだけだ。
「そうだな」
俺のつぶやきに、スカル、エリス、アリアが怪訝そうな表情をした。
俺は懐から一通の手紙を取り出し、スカルに手渡した。
「あん? なんだこれは」
「イリス姫殿下からの親書だよ。さっき親衛隊の人から預かった」
「なにお前が持ってんだよ。早く寄越せ」
手紙をひったくり、食い入るように中を見る。ちなみに、俺は中身をすでに読んでいた。
差出人名代わりのサインに、そう書いてあったから。
読み終えたスカルは上機嫌になっていた。
「ハッ! 見ろよラクター。姫様が俺たちを英雄として扱うと言ってる。だが残念だったな、お前の名前はどこにもねえよ」
「……」
「お前を用済みだと思っているのは俺たちだけじゃないってことだな! ハッハッハ!」
高笑いするスカルを俺は冷めた目で見ていた。
……やっぱり気付かなかったか。
姫様は手紙に簡単な暗号を仕込んでいた。『この暗号に気付けたのなら、それはラクター・パディントンのおかげです。もっと彼を大事にしてあげてください』――と。
あの純粋な姫様のことだ。暗号を仕込むなんて真似、本意でなかったに違いない。
だが、ストレートに叱責すれば、この勇者は何をするかわからない。
震える筆跡に、俺は姫様の葛藤を感じた。
――ありがとう、姫様。俺の名前を書かないでいてくれて。
おかげで踏ん切りがついた。
これまでずっと我慢してきた。
けど駄目だ。この勇者に、俺は付いていきたくない。
愛想が尽きた。完全に。
スカルは手紙を俺の前でヒラヒラさせながら、舐めるように言った。
「用済み扱いされたお前を連れてたら俺まで馬鹿にされる。お前、ホントにクビな? 可哀想なラクターくん?」
――その言葉を待ってたよ、勇者スカル。じゃあな。
俺は踵を返した。
背中から勇者パーティの高笑いが聞こえてくる。
酒場の扉を開け、大通りに出た俺は、その場で深呼吸した。
腹の底から湧き上がってくる感情がある。頬がムズムズした。
俺は思わず、その場でガッツポーズを取った。
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