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7章 謳う魔法使いソラ
第46話 ソラの伝えたいこと
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「ソラの、秘密?」
「うん。あ……でも、ぜったいの秘密ってほど大げさなものじゃ、ないんだけど……」
もにょもにょするソラ。彼らしい。
しばらく胸元のルルを撫でていたソラは、意を決して告げた。
「実はボク……魔物だけじゃなくて、他の動物たちとか、人間以外の言葉がなんとなくわかるんだ……!」
「え……あ、うん」
一瞬、ユウキは反応に迷った。指先をこめかみに当てて考える仕草をしながら、首を傾げる。
「えと。知ってる、よ?」
「え!?」
「いやその、さっきからルルちゃんと親しげに話してるのを見てるし。レンの友達のスライム君とも話ができているみたいだったし。他の動物たちと意思疎通ができるのは、チロロからも聞いてるよ」
「う、うーん。ユウキはもう知ってた……あれ? あれ?」
ユウキとともに首を傾げるソラ。院長先生としても、これにはどう言葉を返すべきかわからない。
まさか本人的には内緒にしているつもりだったとは、驚いた。
これは、結構なぼんやりさんなのではとユウキは訝しむ。
深いため息をつくソラ。彼としては、勇気をこめた告白だったのだろう。なんだか気の毒になってきた。
ユウキが「ごめん」と謝ると、ソラは力なく首を横に振った。改めて語り出す。
「ボク、あんまり自分のことを話すのが得意じゃないから……家族院の皆にも、ボクが魔物や動物たちと話せるんだって、直接、言ったことはないんだ。……たぶん」
「レンもヒナタも、君が話せることを疑ってないみたいだけど……」
「うう。ボク、知らないうちに喋ってたのかなあ……それとも、喋ってたことも忘れてた……?」
落ち込んでいる。気の毒になって、ユウキはソラの頭を撫でた。スライムのルルも同じように慰めている。
ソラの悩んでいることを、噛み砕いてみる。
「つまりソラは、自分が他の家族と違う力を持っていることを、あまり表に出したくなかった――ってこと? だから自分から言うことはなかったけど、気がついたら能力を使ってて、自然と他の子たちにも伝わっていたと。それが、ショックだった?」
「うん……うん、そう。そうなんだ、ユウキ」
ソラは顔を上げた。
「やっぱりボクの思った通りだ。ユウキは、ボクのことわかってくれる」
「他の皆もきっと同じだよ。僕が特別なわけじゃないさ」
「そうだけど……そうじゃないっていうか……。ユウキ、ボクと同じ力を持ってるよね? それが嬉しかったというか……親近感というか……そう」
自分の中でひとつの結論にたどり着いた表情で、銀髪少年は言う。
「家族の中でボクだけだったら、隠さなきゃいけないって思い込んでたんだ。だからユウキがいてくれて、初めて隠さなくてもいいんだって、自分から思えた。うん……だから、ボクは嬉しいんだ」
ユウキはうなずきながら聞いていた。
正直に言うと、ソラの言うことは半分ほどしか理解できない。同じ力を持っているから親近感が持てた――というのはよくわかる。ただ、だから能力を隠さなくてもいいと思えた――というのは、ソラだけの、ソラが自分でつかんだ『答え』だろう。
ユウキは不思議な気持ちになった。
レンは、自分なりの哲学――家族の守り方について信念を持っている。
ソラもまた、タイプは違うけれどソラだけの考え方を持っている。
きっと、彼らから見ればユウキにもユウキだけの考え方があるのだろう。自分で気づかないだけで。
誰かと接するのって、仲良くなるのって、本当に面白いとユウキは思った。
ソラは安心したようにユウキを見つめている。院長として、微笑みで応えた。
「ソラ。魔物や動物と会話できるって素敵な能力だと思うよ。僕もこの力で、チロロやルルたちと話ができるのはすごく嬉しい」
「うん。うん」
「この力を皆にどう伝えるかは、ソラが決めていいと思うよ。伝えたとしても、これまでどおり言わなかったとしても、家族院の皆はソラを嫌いになったりしない。そこは、安心していいんじゃないかな?」
「ありがとう。ユウキ。……やっぱりユウキは院長先生にぴったりだね。ボクのこんな話、ちゃんと聞いてくれるんだもの。……あ、もしかしてユウキって、実はもっと年上だったり……」
「皆と同じ10歳です」
「今すごく想像が膨らんだのにー」
打ち解けた表情でソラが言う。ふたりは笑い合った。
「あ、もうひとつ伝えたいことがあったんだ」
ソラは胸元のルルを撫でる。
「ボク、癒やしの魔法が得意なんだ」
「へえ――って、ん? 魔法?」
「うん。……うん?」
お互い、きょとんとした顔をつきあわせた。
「うん。あ……でも、ぜったいの秘密ってほど大げさなものじゃ、ないんだけど……」
もにょもにょするソラ。彼らしい。
しばらく胸元のルルを撫でていたソラは、意を決して告げた。
「実はボク……魔物だけじゃなくて、他の動物たちとか、人間以外の言葉がなんとなくわかるんだ……!」
「え……あ、うん」
一瞬、ユウキは反応に迷った。指先をこめかみに当てて考える仕草をしながら、首を傾げる。
「えと。知ってる、よ?」
「え!?」
「いやその、さっきからルルちゃんと親しげに話してるのを見てるし。レンの友達のスライム君とも話ができているみたいだったし。他の動物たちと意思疎通ができるのは、チロロからも聞いてるよ」
「う、うーん。ユウキはもう知ってた……あれ? あれ?」
ユウキとともに首を傾げるソラ。院長先生としても、これにはどう言葉を返すべきかわからない。
まさか本人的には内緒にしているつもりだったとは、驚いた。
これは、結構なぼんやりさんなのではとユウキは訝しむ。
深いため息をつくソラ。彼としては、勇気をこめた告白だったのだろう。なんだか気の毒になってきた。
ユウキが「ごめん」と謝ると、ソラは力なく首を横に振った。改めて語り出す。
「ボク、あんまり自分のことを話すのが得意じゃないから……家族院の皆にも、ボクが魔物や動物たちと話せるんだって、直接、言ったことはないんだ。……たぶん」
「レンもヒナタも、君が話せることを疑ってないみたいだけど……」
「うう。ボク、知らないうちに喋ってたのかなあ……それとも、喋ってたことも忘れてた……?」
落ち込んでいる。気の毒になって、ユウキはソラの頭を撫でた。スライムのルルも同じように慰めている。
ソラの悩んでいることを、噛み砕いてみる。
「つまりソラは、自分が他の家族と違う力を持っていることを、あまり表に出したくなかった――ってこと? だから自分から言うことはなかったけど、気がついたら能力を使ってて、自然と他の子たちにも伝わっていたと。それが、ショックだった?」
「うん……うん、そう。そうなんだ、ユウキ」
ソラは顔を上げた。
「やっぱりボクの思った通りだ。ユウキは、ボクのことわかってくれる」
「他の皆もきっと同じだよ。僕が特別なわけじゃないさ」
「そうだけど……そうじゃないっていうか……。ユウキ、ボクと同じ力を持ってるよね? それが嬉しかったというか……親近感というか……そう」
自分の中でひとつの結論にたどり着いた表情で、銀髪少年は言う。
「家族の中でボクだけだったら、隠さなきゃいけないって思い込んでたんだ。だからユウキがいてくれて、初めて隠さなくてもいいんだって、自分から思えた。うん……だから、ボクは嬉しいんだ」
ユウキはうなずきながら聞いていた。
正直に言うと、ソラの言うことは半分ほどしか理解できない。同じ力を持っているから親近感が持てた――というのはよくわかる。ただ、だから能力を隠さなくてもいいと思えた――というのは、ソラだけの、ソラが自分でつかんだ『答え』だろう。
ユウキは不思議な気持ちになった。
レンは、自分なりの哲学――家族の守り方について信念を持っている。
ソラもまた、タイプは違うけれどソラだけの考え方を持っている。
きっと、彼らから見ればユウキにもユウキだけの考え方があるのだろう。自分で気づかないだけで。
誰かと接するのって、仲良くなるのって、本当に面白いとユウキは思った。
ソラは安心したようにユウキを見つめている。院長として、微笑みで応えた。
「ソラ。魔物や動物と会話できるって素敵な能力だと思うよ。僕もこの力で、チロロやルルたちと話ができるのはすごく嬉しい」
「うん。うん」
「この力を皆にどう伝えるかは、ソラが決めていいと思うよ。伝えたとしても、これまでどおり言わなかったとしても、家族院の皆はソラを嫌いになったりしない。そこは、安心していいんじゃないかな?」
「ありがとう。ユウキ。……やっぱりユウキは院長先生にぴったりだね。ボクのこんな話、ちゃんと聞いてくれるんだもの。……あ、もしかしてユウキって、実はもっと年上だったり……」
「皆と同じ10歳です」
「今すごく想像が膨らんだのにー」
打ち解けた表情でソラが言う。ふたりは笑い合った。
「あ、もうひとつ伝えたいことがあったんだ」
ソラは胸元のルルを撫でる。
「ボク、癒やしの魔法が得意なんだ」
「へえ――って、ん? 魔法?」
「うん。……うん?」
お互い、きょとんとした顔をつきあわせた。
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