聖女の死後は引き受けた ~転生した私、新米女神の生前の身体でこっそり生きる~

和成ソウイチ

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【99】よく弾いただろう!

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 ――そして個人戦決勝。

 急遽、優勝者と戦うことになったパーさんは、実に堂々と舞台に上がった。
 観客席中のブーイングもどこ吹く風である。
 個人的には、この時点で強い。
 もしやこの人、無敵の人ではなかろうか。

 一方の対戦者。この人は何と女性だった。
 私より年上に見えるが、アムルちゃんのお母様に負けず劣らず全身を鍛えていらっしゃる。
 肉体美――というものだろうか。見ているだけでドキドキするほどの力強さと美しさを感じる。
 素人の私から見ても、隙が無い。さすが猛者の中の猛者。
 二人の体格差は明確。全身から醸し出す強さもまるで違う。

 しかも――。

「……うわぁ」

 私は思わずつぶやく。
 対戦者の女戦士さん。明らかに怒っている。激怒という単語も生易しいくらいだ。
 顔には青筋が浮かび、二の腕には血管が浮き出ている。
 試合開始と同時に叩っ切ってやるという気持ちがありありと伝わってくる。

「どうしてあそこまで怒っているんだろう……」
「それは当然ですわ、お姉様」

 アムルちゃんが隣で鼻を鳴らす。

「わたくしたちのお姉様、この街の神にも等しいお姉様に、あのような不埒な真似をしたのです。参加者は皆、はらわた煮えくり返っているのですわ。のぞき見していたことも伝えておきましたから、怒りに火が点いているのです」

 最後の情報は伝えなくてもよかったのではと思う。

 関係者席から、ディル君が試合開始の合図を送る。待て、なぜ君が。

『それでは――くたばれ!!』

 そんな私情まみれの審判見たことない。

 私がディル君を睨むと同時に、試合が動く。
 女戦士さんが凄まじい勢いで突進する。目にも留まらぬとはこのこと――。

「甘いわああああっ!!」

 気合い一発。
 パーさんの全身から黒い魔力が溢れ出す。

「我は魔王パーレグズィギスゥトゥ! 我の魔力で、人間の一撃なぞ弾き飛ばしてくれよう!!」

 さあ来い――と構えたパーさんのところへ、躊躇いなく振り下ろされる大剣。

 いけない。
 あの魔力は確かに強力。
 弾かれる――!

「はああああああっ!!」

 二人の叫びが重なる。
 直後――甲高い音を立てて弾かれた。

 パーさんが。

 まるで昔流行ったスーパーボールのように、闘技場のあっちこっちの壁に激突しては跳ね返った。
 そして最後は頭から壁に突き刺さって止まる。

 しん……と静まり返った会場。

 そこへ響く、くぐもったパーさんの声。

「ふはははっ。どうだ、よく弾いただろう!」
「いやアナタが弾かれるのかよっ!!」

 
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