聖女の死後は引き受けた ~転生した私、新米女神の生前の身体でこっそり生きる~

和成ソウイチ

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【98】え、今?

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 数分後。
 パーさん、あっけなくお縄。
 簀巻き同然の、ちょっと過剰なほどに拘束されたパーさんが、文字通りテントの真ん中に投げ捨てられる。

 周囲にはディル君を始め、殺気を漲らせたレギエーラの人たち。
 私を護るように並ぶカラーズ。
 そして私は、一番上座に座ってパーさんを見下ろすという形だ。

 正直、かなり居心地が悪い。
 これって敵の大将を捕まえて尋問する図じゃないですかね。
 こんな大事にしたくないんだけど……。

「さて。主様を恐怖のどん底に陥れた罪、何か申し開きはあるか。パーよ」

 いや別に恐怖のどん底とまでは。ちょっと驚いただけなんだけど――という私のつぶやきは、もちろん黙殺。
 怒れる人々を前に臆することなく、パーさんは私をじっと見上げて言った。

「我の名前は魔王パーレグズィギスゥトゥである。よくよく練習してくれ」
「私、この状況でその台詞が言えるパーさんホントスゴイと思う」
「照れるではないか」
「ごめん、まあまあ褒めてない」

 主様、とディル君が声をかける。

「この男の処断、いかがされますか? 死刑は前提として、国外追放が妥当かと思いますが」
「いや前提も順番もおかしいでしょ。そもそもパーさん、よく戻ってこれたね。どうやったの?」

 ふふ……とパーさんが笑う。

「我が伴侶の顔を見るためなら、たとえ大空に散ったとしても舞い戻るのが魔王の本懐」

 危うくキモいと言いかけてしまう。

 しかし、実際に無傷で舞い戻ったのだから、あながち魔王の力も冗談ではなさそうだ。
 そう考えると、簀巻き貧血男の存在感が不気味に増す。
 若干引き気味になっていた私に気づき、アムルちゃんが挙手をする。

「こうしてはいかがでしょう。これから間もなく個人戦と集団戦の優勝者が誕生します。その者たちとこのキッッッモい男を対戦させるのです」

 聞き間違えようもなく断言しちゃったよ、この子。

「集団リンチに遭えば、いかにキッッッモいパーと言えど己の愚かさを悔い改めるでしょう」
「ふふ。面白い。我が想いの強さをそなたたちに見せる良い機会だ。受けて立とう」
「集団リンチという単語は聞こえていますか?」

 アムルちゃんの方が不安になっている。
 パーさん恐るべし。

「舞い戻った我の想いの丈、今こそ存分に謳おうではないか。いざ行かん会場へ――ふんっ、ふぐ。むおっ!? 動けん! なぜ我は簀巻きになっているのだ!」
「え、今?」

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