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【71】私は騙されない
しおりを挟む「ほら皆。そんなに落ち込まないで。ひとつひとつ覚えていこう。ね?」
『せ、聖女様ぁ……! 申し訳ございません……!』
さめざめと泣きながら謝る金髪メイド×十二。
台詞までぴったり一致している。すごい。
――感心している場合ではないね。
私とアムルちゃんの聖なる魔力で人化に成功したカラーズだけど、中身まで変わったわけではないようだ。 彼女らは元々弱い種族。力も弱いし動きも速くない。
結果、姿は聖女だけど中身はポンコツという残念美少女ができあがってしまった。
しかも十二人。
ただ、能力がないわけではない。
彼女らの元となった枯れ木人形は、離れていても個体同士で意思や記憶の共有ができる特殊能力がある。その力はカラーズとなった今も健在だ。
それが逆に災いして、『ひとりが苦手なことは皆苦手』というなかなか困った事態になっている――というわけである。
それでも、私はカラーズたちを叱る気になれない。
元はといえば、私が無理矢理人間の姿にしてしまったようなものだ。ここで彼女らを見捨てれば無責任だと思った。女神カナディア様に顔向けできない。
苦手なことはひとつひとつ克服していけばいい。
元は魔物だったんだから、最初から人間の暮らしが上手なわけはないのだ。
ゆっくり覚えていけばいい。
それに正直言いまして、自分の顔に向かって叱るなんてなかなかヘビィな拷問だと思うのです私。
いかがですか皆さん。
鏡に向かって小言を言う自分なんて想像するだけで鳥肌が立ちますよ私。
――ごほん。
私はカラーズと一緒に食堂の片付けをし、簡単な食事の作り方を改めて教えた。
これも一種のスローライフだろう。
この城は私の魔力がある限り、自由にモノを生み出せる。お皿割っても気にしない、気にしない。
私もディル君も、多少食べなくても死なないしね。
「あれ? そういえばどこに行った、弟わんこ」
「主様!」
姿が見えないと思っていたディル君が、食堂に走ってきた。
ガスマスク片手に、喜色満面の表情で声を上げる。
「お喜びください! 酒造りの環境が整いましたよ!」
『おめでとうございます聖女様!』
『おめでとうございます聖女様!』
『おめでとうございます聖――』
「落ち着いて私は騙されない」
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