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【64】小・中・大・特大
しおりを挟む『ご覧の通り、我々は非常に弱く、みすぼらしい存在です』
枯れ木人形の魔物が、とつとつと語る。
ディル君は、アムルちゃん親子ともどもお座り厳命したため、大人しく耳を傾けていた。
『他の魔物たちからも搾取され、虐げられ……ですが、この地に大聖女様が降り立ち、周辺の魔物たちを清めたことで、状況が変わりました』
「もしかしてその大聖女って……カナディア様?」
『やはりご存じでしたか』
枯れ木人形は深々と頭を下げる。
見た目は少しシュールだが、私は彼の言葉を無視できなくなった。
カナディア様が関係しているのなら、他人事ではない。
『もともと我らの邪気は微々たるモノだったようで、消滅を免れました。そして大聖女カナディア様のもと、ここで静かに暮らすことができるようになりました。ただ……』
くるり、と洞窟の奥を見る。
『我らは特性上、養分がなければいけていけません。加えて、身体は魔物のまま……。この洞窟の奥に広がる水場が、我らが生きていける唯一の場所なのです』
それが、酒造りの書物にあった『幻の毒沼』というわけね……。
私は枯れ木人形の肩(にあたるであろう部分)に優しく触れた。
微笑みをもって、力強く言う。
「騒がせてごめんね。そういうことなら大丈夫。私たちはあなたたちの暮らしを壊したいわけじゃないの。だから、安心して」
『ああ……ほ、本当ですか……?』
「うん。ウチの武闘派暴力集団は撤収させるから、安心してここで暮らしていいよ」
そう言うと、「お姉様!」とアムルちゃんがシュタッと手を挙げた。
「評価の撤回を要求しますわ!」
「聖女様! あんなに尽くしたのにそりゃないぜ!」
「このままでは商売ができません……」
「おもしろくないぞー主様」
黙れ、思慮浅き者どもよ。
「いいから黙って、従う!」
「えー」
「仲良く頬を膨らますな! 戻るよ、お城に! はい復唱!」
「戻りまーす」
小・中・大・特大のヒナ鳥どもが声を揃える。
『おお……なんと素晴らしい……! あのような怖ろしい人間たちを言葉だけで従えるとは……。貴女こそまさに、大聖女カナディア様の生まれ変わり……! ああ、ありがたい。ありがたい……!』
背後から聞こえる枯れ木人形の賛辞。祈り。
なぜに私、人間を叱って魔物から感謝されているのだろう。
早く帰ってヒビキの寝顔を見たい。
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