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【60】素材探し的な流れ
しおりを挟むお姉様、お酒になりませんか?
「私に液体化しろと?」
「まあ、お姉様ったら。面白い」
寝てるヒビキを慮ってか、くすくすと控えめに笑うアムルちゃん。
よかった。どうやら怒らせたわけではないようだ。
カナデてめーちょっとデキるからってイキがってんじゃねー酒にすんぞ、と言われたわけではないのだ。
人生最高の恐怖を味わうところだった。危ない。よかった。
……で? 改めてどういう意味?
「お姉様を顕彰するため、お姉様のお名前を冠したお酒――いわゆる御神酒を作りたいと思うのです」
「いちおう言っておくけど、私は神様じゃないからね? しかも宗教観――」
「ギルドで振る舞えば宣伝効果は抜群ですわ」
聞いちゃいない。
まあ、でも言いたいことはわかった。
つまり、私の名前で商品開発したいというわけだ。
――なんと大それたことを。
「いや、あのねアムルちゃん。私は別にそこまでしなくてもいいかなあって思うの」
「? お姉様はお酒が大好きだとうかがったのですが」
「……む」
「なんでも、先日の宴では近隣酒場の酒瓶を軒並み空にしたとか」
「……あぅ」
「お父様がギルドや商会の方々とお話をしたときに、お姉様の名前を冠したお酒を名物として売り出せば損失分を補填できると説得したそうで」
「……がふ……っ」
外堀が埋まっている、だと!?
お父様、やり手。
というかね、みんな気づいて。
酒蔵を空にするような女をなぜ酒の名前にまで持ち上げるのか。
むしろ酒場の敵ではないでしょうか。そうでしょう? ごめんなさい。
「まあお父様も、このお城に来るまでは半分冗談のつもりだったようですが」
「おい聖職者」
「お姉様がお休みになられている間に書庫を拝見したとき、ちょうどよい酒造りの本が偶然見つかりまして」
「どうして……」
「両親とも乗り気です」
アムルちゃんの言葉を受けて、ふと、振り返る。
寝室の扉に、完全武装したお父様、お母様、そしてディル君がニッコニコでポーズを取っていた。
ああ……その装備ってことはつまり。
どこかに乗り込むのね。素材探し的な流れなのね。
「どうして……こうなった」
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