聖女の死後は引き受けた ~転生した私、新米女神の生前の身体でこっそり生きる~

和成ソウイチ

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【44】皆さんご一緒に

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 ――稲作とは何て素晴らしい作業だろう。
 お米を神聖なものとしてお供えする意味がよくわかる。
 年中行事を通して稲の生長、四季の移り変わり、命の連鎖に感謝する。心が洗われるようだ。

 つまり――。

「平穏こそ至高。長閑な時間こそ我が命なんだよ」
「じゃあそろそろ行きますか」
「いやだー!」

 稲が丈夫だったなら、しがみついて動かなかったかもしれない。

 主に対して雑な扱いをするディル君。ニコニコ顔ですんごく楽しそうなので、間違いなくすんごく楽しんでいるのだろう。ちくしょうめ。

 私は大きな大きなため息をついた。
 たくましく育った稲たちを名残惜しく見遣りながら、立ち上がる。

「ディル君、まずは一階にあるっている呪われた品を見せてくれる?」
「お、そっちから攻めますか」
「お客様が来るって言うのに、客間が呪われてたら洒落にならないでしょ」

 城内に戻る。
 まずは、先日転移魔法を設置した部屋へと行く。玄関ホールに隣接した、静かな部屋だ。

 改めて見回すと、掃除し甲斐がありそうな雰囲気。
 壁一面の本棚、複数の丸テーブルと、その上に乗った数々のモニュメント。分厚い本の何冊かは、床に散乱している。
 板張りの床は、よく見るとうっすら白い埃が積もっている。
 空中にも小さな埃。窓から差し込む光を反射してキラキラ光っている。
 窓の外にはでっかい滝が――。

「滝!?」
「ああ、そこの窓、空間を歪ませて外光を取り込んでるみたいですね。滝はどっかの滝でしょう」

 アバウト!

「……で? 呪われた品ってどこにあるの?」
「えーと。あ、ここの書物全部ですね」
「もう一度」
「ここの書物全部ですね」

 はい。
 皆さんご一緒に。

『ここの書物全部ですね』
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