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【9】社畜ご飯
しおりを挟むディル君が軽やかに立ち去った後。
私はキッチンの流しの前で腕を組んでいた。
「魔力次第で自由にいろんなものを……って、そもそも魔力って何?」
MPか? それともオーラ的なものをイメージすればいいのか? MPってどう見ればいいんだ?
「……ステータスオープン」
しーん……。
ラノベとかでお決まりのフレーズを言ってみたけど、何の変化もなし。
ちょっと恥ずかしい。
「ま、いいや。とにかく欲しいものを色々イメージしてみよう」
切り替える。一度は死んでますからね。転生してますからね。こちとら少々のことでは騒ぎません。
「えっとそれじゃあ……土鍋!」
ごっとん。
目の前に良い感じサイズの鍋が現れた。細かいことに、一人分用のお鍋。
「……」
さすがに三度見くらいした。
……ええ、少々の事では騒ぎません。
次、次。
包丁やまな板、お箸にスプーンなどなども同じ要領で降ってくる。
あとは。
「鳥もも肉!」
ぽす。
「白菜!」
ぱさ。
「にんにく! みじんぎり!」
ぽちゃ。
「水! みりん! お味噌! バター!」
こ、こ、こ、こん。
わざわざ小さな器に小分けにして出てきた。キッチンよ、おぬしデキるな。
「お鍋に鶏肉、にんにく、水、みりんを入れて……火」
しゅぼ!
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コトコト……。
「白菜投入! さらに煮て」
グツグツ……。
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ふははは、どうだ! このお手軽素材、お手軽手順! これぞ終電帰宅で死にかけでも作れる簡単お鍋だぁー!
「何で転生してまで社畜ご飯作ってんだ私はぁあああー!!」
結局騒いだ。
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