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産業革命
46 使節団(2)
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秋季休暇中、できるだけ多くのブラックガイを採掘するため頑張った。
私しか場所の特定ができないから、買った3キロ✖6キロの土地を18分割し、今回は大河側のひと区画を採掘した。
腹が立つことに、目を凝らしてブラックガイを探すより、冗談で口ずさんだ歌を唄う方が場所の特定が簡単だった。
……大人になってからも「お宝お宝どこですか~、私の声が聞こえたら~、ピカリと光って教えてね~」を、ずっと唄うの? う~ん・・・
……よし、次に来た時は違う歌……いや、呪文を試してみよう。
採掘後、教会騎士団が20人と、心配性の父様がオリエンテ商会の護衛を10人付けてくれたから、襲撃されることもなく聖地マーヤに戻ることができた。
帰って直ぐに、可愛い孤児たちが暮らしている宿舎に行って、ホワイティ商会宝飾部で作った革紐のネックレスをお土産として配った。
女子のペンダントトップはアメジストで、男子は黒いオニキスにした。
「わーい、女神様の髪の色と同じだー」と、女の子たちは初の宝飾品に大喜び。
「女神様の瞳の色と同じだ」と、男の子たちは感動しながら何故か跪く。
いやいや、みんなちょっと大袈裟だって。そんなにキラキラした瞳で見るの止めて。うちの子を特定する身分証みたいなもんだから、それ。
「ますますマシロさまへの忠誠心が上がりましたね」って、スピカが怖いことを言う。
「マシロ様の許可が下りれば、男子には剣の手解きをして、見込みのある者は騎士として育てたいと騎士団長が仰っていました」
教会騎士は孤児だった者が多い。聖人の登場で護衛対象者が増えたから、人数を増やす必要があるとアステカが言う。
騎士団長は、マシロさまに対する忠誠心が異常に強いこの子たちを鍛えるのが最適だと言っているらしい。
……う~ん、人手不足になるのは困るけど、子供たちの未来の選択肢は多い方がいいよね。
◇◇ 第三皇子 イツキノ ◇◇
あれから直ぐに使節団メンバーと護衛10人を招集し、王都マセールを発った。
使節団のメンバーは、人事担当である総務副大臣と貴族学園高等部の学園長、原初能力専門研究所の所長と、私と私の側近を含めた5人だ。
今回の使節団の目的は、我が国の貴族がしでかした犯罪に対する謝罪と、何故卒業生がホワイティ商会への就職を希望したのかを調査するためだと、マーヤ教会に届け出ている。
叶うことなら天聖ソワレ様にお会いし、王族代表でありミリアーノの父である私が直接謝罪し、必ず真の襲撃犯を捕らえると約束したい。
被害に遭ったマシロ・オリエンテには、心からの謝罪と慰謝料を渡したい。
もしも原初能力学園を1年で卒業していても、ホワイティ商会本店は聖地マーヤに在るらしいから、そこに行けば会える可能性は高いだろう。
もしも、もしも彼女が娘のミリアーノだったとしても、私のことを覚えている可能性は低いと思う。
覚えていれば、とっくに私の元に戻ってきたはずだ。
……それでも、私の顔を見て奇跡的に思い出すチャンスだってあるかもしれないと期待してしまう。
「調査書を見ると、ホワイティ商会の商会長は13歳らしいが、そんな子供が商会を経営できるとは思えない。
おそらく、オリエンテ商会の商会長である父親や母親が、実質的に経営しているのだろう。
そんないい加減な商会に、卒業生の多くが取り込まれるとは情けない。
きっと設立間もない商会だから、あり得ない給料額を提示したのでしょう。
まあ1・2年もすれば、自分の判断が間違っていたと後悔し、頭を下げて役人試験を受けるはずですイツキノ様」
聖地までの道すがら、総務副大臣はホワイティ商会に対する不満や不信感をずっと口にしている。
自分がホワイティ商会の化けの皮を剝がしてやると言って、今回の使節団入りを希望したと聞いているが、マシロ・オリエンテがミリアーノかもしれないと思っている私には、耳障りな話ではある。
「いや、此処だけの話、マシロ・オリエンテは【ソードメイル】らしい」
謝罪する側がこうも悪意に満ちているのは良くないので、皆が知らない情報を出して失礼な態度をとらせないようにする必要がある。
他のメンバーには、我が国の貴族がマシロ・オリエンテと教会騎士団に対し、とんでもない犯罪行為をし犯したことを伝えていない。
真犯人が誰なのか不明な今、情報を出すと更なる危険に曝す可能性がでてくる。
「な、なんですと! ソードメイル? はあ?」
想像もしていなかったことを告げられ、原初能力専門研究所の所長は困惑と同時に嫌な顔をした。
そもそもソードメイルなんて者は、能力者の多い我が国でも現在は父上しか居ないのだ。
2年前に亡くなった先王の妹は、水と芸術の2つの能力を持つソードメイルだったが、我が国では王族以外、ソードメイルを輩出していない。
「私の得た情報では、ホワイティ商会の商会長は養女らしいですが、イツキノ様、彼女の能力は何と何でしょうか? 友人はその情報を伏せて教えてくれません」
貴族学園高等部園長の親友は、聖マーヤ高等大学の副学長をしている。
日頃から親交を深めているにも関わらず、マシロ・オリエンテの情報は、2月以降何も出てこないのだと言って首を捻る。
「情報が出てこない? う~ん、極秘事項ではないと思うが、彼女は【空間】と【創造】の持ち主らしい」
「ええぇーっ!」
私の話を聞いた全員が驚き、そして口を閉じた。
マセール王国は建国以来、原初能力【炎・動力・空間】持ちの貴族に対し、他国の者との婚姻を禁止し優位性を保ってきた。
我が国の貴族以外では有り得ない組み合わせの能力だと気付いたメンバーは、何かを思い出したようで、困惑した表情のまま私に視線を向けた。
「最愛の娘ミリアーノが生きていたら、マシロ・オリエンテと同じ歳になっているはずだ」
私しか場所の特定ができないから、買った3キロ✖6キロの土地を18分割し、今回は大河側のひと区画を採掘した。
腹が立つことに、目を凝らしてブラックガイを探すより、冗談で口ずさんだ歌を唄う方が場所の特定が簡単だった。
……大人になってからも「お宝お宝どこですか~、私の声が聞こえたら~、ピカリと光って教えてね~」を、ずっと唄うの? う~ん・・・
……よし、次に来た時は違う歌……いや、呪文を試してみよう。
採掘後、教会騎士団が20人と、心配性の父様がオリエンテ商会の護衛を10人付けてくれたから、襲撃されることもなく聖地マーヤに戻ることができた。
帰って直ぐに、可愛い孤児たちが暮らしている宿舎に行って、ホワイティ商会宝飾部で作った革紐のネックレスをお土産として配った。
女子のペンダントトップはアメジストで、男子は黒いオニキスにした。
「わーい、女神様の髪の色と同じだー」と、女の子たちは初の宝飾品に大喜び。
「女神様の瞳の色と同じだ」と、男の子たちは感動しながら何故か跪く。
いやいや、みんなちょっと大袈裟だって。そんなにキラキラした瞳で見るの止めて。うちの子を特定する身分証みたいなもんだから、それ。
「ますますマシロさまへの忠誠心が上がりましたね」って、スピカが怖いことを言う。
「マシロ様の許可が下りれば、男子には剣の手解きをして、見込みのある者は騎士として育てたいと騎士団長が仰っていました」
教会騎士は孤児だった者が多い。聖人の登場で護衛対象者が増えたから、人数を増やす必要があるとアステカが言う。
騎士団長は、マシロさまに対する忠誠心が異常に強いこの子たちを鍛えるのが最適だと言っているらしい。
……う~ん、人手不足になるのは困るけど、子供たちの未来の選択肢は多い方がいいよね。
◇◇ 第三皇子 イツキノ ◇◇
あれから直ぐに使節団メンバーと護衛10人を招集し、王都マセールを発った。
使節団のメンバーは、人事担当である総務副大臣と貴族学園高等部の学園長、原初能力専門研究所の所長と、私と私の側近を含めた5人だ。
今回の使節団の目的は、我が国の貴族がしでかした犯罪に対する謝罪と、何故卒業生がホワイティ商会への就職を希望したのかを調査するためだと、マーヤ教会に届け出ている。
叶うことなら天聖ソワレ様にお会いし、王族代表でありミリアーノの父である私が直接謝罪し、必ず真の襲撃犯を捕らえると約束したい。
被害に遭ったマシロ・オリエンテには、心からの謝罪と慰謝料を渡したい。
もしも原初能力学園を1年で卒業していても、ホワイティ商会本店は聖地マーヤに在るらしいから、そこに行けば会える可能性は高いだろう。
もしも、もしも彼女が娘のミリアーノだったとしても、私のことを覚えている可能性は低いと思う。
覚えていれば、とっくに私の元に戻ってきたはずだ。
……それでも、私の顔を見て奇跡的に思い出すチャンスだってあるかもしれないと期待してしまう。
「調査書を見ると、ホワイティ商会の商会長は13歳らしいが、そんな子供が商会を経営できるとは思えない。
おそらく、オリエンテ商会の商会長である父親や母親が、実質的に経営しているのだろう。
そんないい加減な商会に、卒業生の多くが取り込まれるとは情けない。
きっと設立間もない商会だから、あり得ない給料額を提示したのでしょう。
まあ1・2年もすれば、自分の判断が間違っていたと後悔し、頭を下げて役人試験を受けるはずですイツキノ様」
聖地までの道すがら、総務副大臣はホワイティ商会に対する不満や不信感をずっと口にしている。
自分がホワイティ商会の化けの皮を剝がしてやると言って、今回の使節団入りを希望したと聞いているが、マシロ・オリエンテがミリアーノかもしれないと思っている私には、耳障りな話ではある。
「いや、此処だけの話、マシロ・オリエンテは【ソードメイル】らしい」
謝罪する側がこうも悪意に満ちているのは良くないので、皆が知らない情報を出して失礼な態度をとらせないようにする必要がある。
他のメンバーには、我が国の貴族がマシロ・オリエンテと教会騎士団に対し、とんでもない犯罪行為をし犯したことを伝えていない。
真犯人が誰なのか不明な今、情報を出すと更なる危険に曝す可能性がでてくる。
「な、なんですと! ソードメイル? はあ?」
想像もしていなかったことを告げられ、原初能力専門研究所の所長は困惑と同時に嫌な顔をした。
そもそもソードメイルなんて者は、能力者の多い我が国でも現在は父上しか居ないのだ。
2年前に亡くなった先王の妹は、水と芸術の2つの能力を持つソードメイルだったが、我が国では王族以外、ソードメイルを輩出していない。
「私の得た情報では、ホワイティ商会の商会長は養女らしいですが、イツキノ様、彼女の能力は何と何でしょうか? 友人はその情報を伏せて教えてくれません」
貴族学園高等部園長の親友は、聖マーヤ高等大学の副学長をしている。
日頃から親交を深めているにも関わらず、マシロ・オリエンテの情報は、2月以降何も出てこないのだと言って首を捻る。
「情報が出てこない? う~ん、極秘事項ではないと思うが、彼女は【空間】と【創造】の持ち主らしい」
「ええぇーっ!」
私の話を聞いた全員が驚き、そして口を閉じた。
マセール王国は建国以来、原初能力【炎・動力・空間】持ちの貴族に対し、他国の者との婚姻を禁止し優位性を保ってきた。
我が国の貴族以外では有り得ない組み合わせの能力だと気付いたメンバーは、何かを思い出したようで、困惑した表情のまま私に視線を向けた。
「最愛の娘ミリアーノが生きていたら、マシロ・オリエンテと同じ歳になっているはずだ」
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