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商団主ましろ
18 ホワイティ商団(2)
しおりを挟む 商団を立ち上げると宣言してから2か月。まあいろいろとあった。
先ず、叔父であり例の少年の父親である本店長が、息子を本店立ち入り禁止にしたから許してくれと言ってきたが、私は件の少年に罰を与えたりしていない。
自分の子供の不始末なら、親が責任を持って指導すればいいんじゃないと突き放した。
本店長が私に謝ったのは、別に私の養父母が何かした訳でもない。
本店に勤務している営業部や会計部、宝飾部の皆さんが、こぞって独立する私について行くから、本店を辞めさせてくれと言いだしたからだ。
しかも、噂を聞いた宝飾部門の職人さんたちまで、私と共に働きたいと願い出てしまった。
その筆頭が営業部長のアレンさんである。
彼は私の才能に惚れ込んでいて、私が考案する全ての商品を、大陸中に広めるのが夢だと常々語っていた。
辞めると言い出した皆さんは、私が【ソードメイル】だと思っている。
教えなくても、私が考案し作った製品や、突然小さなバッグから出てくる素材を見れば、普通では有り得ないと分かるらしい。
……そう言えば、二度手間になるのが面倒で、最近はマジックバッグから素材を出してたわ・・・
……まあ、叔父は威張ることが仕事で、商会の皆さんにはあまり好かれていなかったもんなぁ。
結局、商会長である父様は、本支店の店長クラスの者を全員集めて、私を条件付きで独立させるが、後継者候補は、今後15年の間にどれだけ商会に貢献できたかで決定すると断言した。
因みに、私に課された条件は、3年間で純利益を白金貨3枚(3千万トール)以上を出すという厳しいものだった。
条件を聞いた者たちは、絶対に無理だろうと囁き合う。
商業法では、商店・商団を設立した者が、3年間の決算で赤字を出さず、一度でも純利益を3千万トール以計上すれば、商会として登録できるとある。
だが現実は厳しく、3年連続で純利益が1千万トールを下回れば、商会としての認定が取り消される。
……この大陸全土で、商会を名乗っている店が15しかないのは、厳しい審査があるからだもんね。
「もちろん親子であっても、娘マシロにオリエンテ商会から金銭の援助は一切しないし、人員が移動する場合は派遣扱いとし、人件費は【ホワイティ商団】に払わせる。立ち上げの資金がオリエンテ商会から出されることもない」
どうせオリエンテ商会が援助して、娘の我が儘をきいてやるんだろうと思っていた者たちは、溺愛する娘に対するものとは思えない厳しい条件を聞き、顔色を変え愕然とした。
もしも己の子を次期後継者候補にしたいと思うなら、同じ条件で戦い、マシロ以上の実力を示す必要があるからだ。
そして、絶対に公言するなと厳命した上で、私が【ソードメイル】であることを教えた。決して【タラータリィ】であることは公言できない。
また、希少な【ソードメイル】である私は、シュメル連合国の保護対象であり、既に聖マーヤ高等大学の課程を終えていることも発表された。
……皆さんの落胆ぶりが凄かったと、会議に出席していた護衛リーダーのバラモンさんが教えてくれた。
会議の後、養父母は叔父夫妻を屋敷に呼び出し、これから話すことを漏らせば、親子ともども命はないものと思えと脅してから、同席している私の秘密を話し始めた。
「マシロは、この大陸に10人も居ないと言われている【ソードメイル】ではなく、この大陸で唯一の【タラータリィ】だ。
マシロは、空間・創造の2つの【原初能力】を使い、現在オリエンテ商会に莫大な利益をもたらしている。
そして・・・もう一つの【原初能力】は【聖】で、聖人候補だ」
父様の話を聞いた叔父夫妻は絶句し、顔面蒼白を通り越しハクハクと苦しそうで、上手く息が吸えなくなった。
【聖人】は、国王よりも地位が上であり、ご尊顔を拝することなどできない天界人として崇められている。
また、かすり傷の一つでも付けようものなら、天罰が下ると昔から信じられている存在である。
「国王はな、商会長の私より商才があり【原初能力】を3つも持つマシロに、この国の発展のため、どうかオリエンテ商会に留まって欲しいと頼んでいるんだ。
そんなマシロに敵対し追い出そうとする行為は、この国とマーヤ教会に敵対することと同じだ! オリエンテ商会にどれだけの損失を与えたのか、よく考えろ!」
これまで私に嫌がらせをしてきたのは、叔父の息子パーシルを後継者にと推す者たちで、主に叔父の妻であるマリーアンが先導した者たちだった。
もちろん、ぽっと出の私が気に入らないと思う親族も多いから、過去には誘拐未遂事件に関係していた親族もいた。
……なんだか私って、ばけもの扱い?
もしかしたらマセール王国の王孫かもって話もあるから、私に何かあれば、国際問題にもなる。
そのことは、叔父であろうと口にすることはできない。
なんと面倒な存在なんだろうと、己の置かれた立ち位置に溜息が出る。
父様もシュメル王もマーヤ教会も、マセール王国から暗殺者が来たから、私から会ってみたいと言い出さない限り、マセール王国の王族に会わせるつもりはないようだ。
いよいよ独立の環境が整ってきた。とは言っても、オリエンテ商会からは独立資金を出して貰うことはできない。
この時代には株式会社という概念もないので、思案した結果、出資者になってくれる人を探すことにした。
「勿論いいぞ。金を持っていても使い道もないし、可愛い教え子の頼みじゃからのう」
最初に頼んだお爺ちゃん先生は、ぽんと300万トールを笑顔で出してくれた。ホワイティ商団の顧問もお願いし、快く了承してもらえた。ありがとう。
よし、次は王宮に乗り込むことにしよう。
先ず、叔父であり例の少年の父親である本店長が、息子を本店立ち入り禁止にしたから許してくれと言ってきたが、私は件の少年に罰を与えたりしていない。
自分の子供の不始末なら、親が責任を持って指導すればいいんじゃないと突き放した。
本店長が私に謝ったのは、別に私の養父母が何かした訳でもない。
本店に勤務している営業部や会計部、宝飾部の皆さんが、こぞって独立する私について行くから、本店を辞めさせてくれと言いだしたからだ。
しかも、噂を聞いた宝飾部門の職人さんたちまで、私と共に働きたいと願い出てしまった。
その筆頭が営業部長のアレンさんである。
彼は私の才能に惚れ込んでいて、私が考案する全ての商品を、大陸中に広めるのが夢だと常々語っていた。
辞めると言い出した皆さんは、私が【ソードメイル】だと思っている。
教えなくても、私が考案し作った製品や、突然小さなバッグから出てくる素材を見れば、普通では有り得ないと分かるらしい。
……そう言えば、二度手間になるのが面倒で、最近はマジックバッグから素材を出してたわ・・・
……まあ、叔父は威張ることが仕事で、商会の皆さんにはあまり好かれていなかったもんなぁ。
結局、商会長である父様は、本支店の店長クラスの者を全員集めて、私を条件付きで独立させるが、後継者候補は、今後15年の間にどれだけ商会に貢献できたかで決定すると断言した。
因みに、私に課された条件は、3年間で純利益を白金貨3枚(3千万トール)以上を出すという厳しいものだった。
条件を聞いた者たちは、絶対に無理だろうと囁き合う。
商業法では、商店・商団を設立した者が、3年間の決算で赤字を出さず、一度でも純利益を3千万トール以計上すれば、商会として登録できるとある。
だが現実は厳しく、3年連続で純利益が1千万トールを下回れば、商会としての認定が取り消される。
……この大陸全土で、商会を名乗っている店が15しかないのは、厳しい審査があるからだもんね。
「もちろん親子であっても、娘マシロにオリエンテ商会から金銭の援助は一切しないし、人員が移動する場合は派遣扱いとし、人件費は【ホワイティ商団】に払わせる。立ち上げの資金がオリエンテ商会から出されることもない」
どうせオリエンテ商会が援助して、娘の我が儘をきいてやるんだろうと思っていた者たちは、溺愛する娘に対するものとは思えない厳しい条件を聞き、顔色を変え愕然とした。
もしも己の子を次期後継者候補にしたいと思うなら、同じ条件で戦い、マシロ以上の実力を示す必要があるからだ。
そして、絶対に公言するなと厳命した上で、私が【ソードメイル】であることを教えた。決して【タラータリィ】であることは公言できない。
また、希少な【ソードメイル】である私は、シュメル連合国の保護対象であり、既に聖マーヤ高等大学の課程を終えていることも発表された。
……皆さんの落胆ぶりが凄かったと、会議に出席していた護衛リーダーのバラモンさんが教えてくれた。
会議の後、養父母は叔父夫妻を屋敷に呼び出し、これから話すことを漏らせば、親子ともども命はないものと思えと脅してから、同席している私の秘密を話し始めた。
「マシロは、この大陸に10人も居ないと言われている【ソードメイル】ではなく、この大陸で唯一の【タラータリィ】だ。
マシロは、空間・創造の2つの【原初能力】を使い、現在オリエンテ商会に莫大な利益をもたらしている。
そして・・・もう一つの【原初能力】は【聖】で、聖人候補だ」
父様の話を聞いた叔父夫妻は絶句し、顔面蒼白を通り越しハクハクと苦しそうで、上手く息が吸えなくなった。
【聖人】は、国王よりも地位が上であり、ご尊顔を拝することなどできない天界人として崇められている。
また、かすり傷の一つでも付けようものなら、天罰が下ると昔から信じられている存在である。
「国王はな、商会長の私より商才があり【原初能力】を3つも持つマシロに、この国の発展のため、どうかオリエンテ商会に留まって欲しいと頼んでいるんだ。
そんなマシロに敵対し追い出そうとする行為は、この国とマーヤ教会に敵対することと同じだ! オリエンテ商会にどれだけの損失を与えたのか、よく考えろ!」
これまで私に嫌がらせをしてきたのは、叔父の息子パーシルを後継者にと推す者たちで、主に叔父の妻であるマリーアンが先導した者たちだった。
もちろん、ぽっと出の私が気に入らないと思う親族も多いから、過去には誘拐未遂事件に関係していた親族もいた。
……なんだか私って、ばけもの扱い?
もしかしたらマセール王国の王孫かもって話もあるから、私に何かあれば、国際問題にもなる。
そのことは、叔父であろうと口にすることはできない。
なんと面倒な存在なんだろうと、己の置かれた立ち位置に溜息が出る。
父様もシュメル王もマーヤ教会も、マセール王国から暗殺者が来たから、私から会ってみたいと言い出さない限り、マセール王国の王族に会わせるつもりはないようだ。
いよいよ独立の環境が整ってきた。とは言っても、オリエンテ商会からは独立資金を出して貰うことはできない。
この時代には株式会社という概念もないので、思案した結果、出資者になってくれる人を探すことにした。
「勿論いいぞ。金を持っていても使い道もないし、可愛い教え子の頼みじゃからのう」
最初に頼んだお爺ちゃん先生は、ぽんと300万トールを笑顔で出してくれた。ホワイティ商団の顧問もお願いし、快く了承してもらえた。ありがとう。
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