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番外編

番外編10ー2 アエラボ商会の実力(3)ー2

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「特別仕様のマジックバッグだと? それで、必要な魔力量はどのくらいだ?」

俺の胸ポケットに手を入れ、強引にマジックバッグを取り出した大男は、手にしたモノを見て下卑た笑みを浮かべながら質問する。

「た、確か、90は要る言った思います」
「なに、90だと!」

 大男は、まさか90だとは思っていなかったようで、マジックバッグを見て顔を顰め、仲間の男たちの魔力量を確認し、チッと舌打ちした。
 
 どうやら4人の魔力量を合計しても、90には手が届かなかったようだ。
 旧ホバーロフ王国の住民は、簡単な生活魔法は誰でも使えるが、平民の魔力量は平均して15程度だったと記憶している。
 貴族でも冒険者でも40を越えていれば相当優秀で、50を越えるのは侯爵以上の貴族くらいだろう。


 俺は猿轡をされ、目隠しされた馬車に強引に乗せられ拉致された。
 馬車で移動した時間を考えると、恐らくまだ首都ミルクの中だろう。
 連れてこられた場所は、貴族屋敷か商人屋敷の地下室のようで、不用品と思われるガラクタが、整理もされず乱雑に置かれていた。

 屋敷内に地下室がある家など珍しいはずだし、首都ミルクを囲む城壁工事をしている音や、重い城壁素材を運ぶ荷馬車の軋む音が、小さな格子窓から微かに聞こえるので、中心地ではなく倉庫街の一角に建つ屋敷だろう。

 ……どうやら商人屋敷の可能性の方が高いな。

 目的が本当にマジックバッグなのかも不明だし、犯人が誰なのかが判明するまで、ここで大人しく捕まっていればいい。
 俺には最強の相棒エクレアがいるから、商売のことでも考えながら待つことにしよう。


「バッセ王の出方次第だが、首都ミルク内に【覇王魔法学院】を設立するのもありだな。いや、そうじゃない。アエラボ商会が100%出資する【アエラボ高学院】にすべきだろう。
 公共事業を主とする【魔法陣学部】と、薬師と薬草栽培の専門家を目指す【薬学部】なんてどうだろう。卒業生は即戦力として使える」

 教育にはお金が掛かるが、ミルク公国で支店を広げるには、優秀な人材を確保する必要がある。それは商会にとって最も重要なことだしと呟きながら、俺は楽しく空想の翼を広げていく。

 旧ホバーロフ王国には、コルランドル王国の中級学校に相当するホバーロフ王立学園があったが、貴族や金持ち商人でなければ入学できず、平民が学ぶ場など無いに等しかった。
 高位貴族や王族は、王宮内で働く魔術師から魔法を学んでいたらしい。

「う~ん、この際だから【アエラボ中級学院】もつくって教育のレベルを上げれば、分裂した現ホバーロフ王国との間に、明らかに国力差ができるだろう。
 中級学院は、3年間学ぶ商学コースと教養コースを作り、優秀な卒業生はアエラボ商会関連施設に就職できる特典をつけるのもアリだ」

 捕らわれの身だが、学院設立のことを考えているとテンションが上がってきて、独り言の声も自然と明るくなってしまう。

 ……ミルク公国で最高峰の学院経営かぁ・・・今ならその資金も十分にあるしな。


「おい、死にたくなければ、さっさと出てこい!」

折角楽しいことを考えていたのに、無粋な大男の威張った声でテンションが下がってしまった。

「お前の魔力量はどのくらいだ?」

俺を拉致した大男の隣に立つ、如何にも貴族でございますって感じの50代くらいの男が、探るような目で俺を見ながら訊いてきた。

「わ、私は商人なのでございますで、はきりとは分か……分かりませんでがす。学生の時でしてば、40くらいござったましゅ……っぷ」

 ……いかん、自分で言いながら笑いが・・・


「40? 40と言ったのか? それじゃあ、お前は貴族か?」と、如何にもお貴族様の男が、嫌そうな顔をして探るような目で見ながら訊いてきた。

 旧ホバーロフ王国の常識だと、魔力量が40以上なのは高位貴族だけだが、コルランドル王国と交易が始まったミルク公国の貴族なら、そんな質問はしてこない気がする。
 
「貴族ないけど、コルランドル王国なれば、商人だっても普通くりゃっでぇ」

「はあ? 40が普通?・・・まあいい、私より少ないが、お前が魔力を流せば使えるだろう。死にたくなければ、このマジックバッグに魔力を流せ!」

 ……へえ、この男って、魔力量が50を越えているんだ。
 ……しかも、ドバイン運送の紋入りマジックバッグを、他にも持ってるんだ。
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