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番外編

番外編6ー2 勇者学園編入試験(5)

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 最終試験は、大きな問題もなく順調に進んでいった。
 ランクの高い冒険者から対戦すると、段々と見劣りしていくんじゃないかと思っていたけど、実際に見てみると、ランクの高い冒険者でも魔法攻撃が得意という訳ではなかった。

 ……だからこそ、勇者学園に入学して学ぼうとするんだ。

 魔法の練習はしていたけど、私には魔獣と戦った経験が2回しかない。
 1回目は母さんと薬草採取に出掛けた時で、2回目は今年の夏季休暇中【宵闇の狼】に指導依頼を出し、セイロン山で一週間だけ魔獣討伐をした時だ。
 だから現在の冒険者ランクDは、薬草採取で得たランクである。


「次、最終組前へ」とギルマスの大きな声が響いた。

「的であるビッグベアーもどきを全壊できた者は2人、半壊できた者は12人だ。
 この14人は既に合格を決めている。
 今回の編入試験に合格できる人数は15人の予定だから、残りの枠は1つだ。
 最終組の2人が半壊できなければ、合格できなかった者の中で、一番魔力量が多い者が合格者となる」

 壊れた的を魔法陣を使って作り直していたボンテンクお兄ちゃんが、皆の前に出て編入試験の合格人数枠を言う。

 ……あと1人。

 私は的の前に立ち、大きく深呼吸し気合を入れる。
 的のビッグベアーは実物の大きさと同じで、高さは3メートルくらいある。
 強固とは言っても、魔術師試験で使われるような硬さではなく剣が通る固さだ。
 土魔法が得意そうなエボデルなら、巨大な土の塊を作って頭上に落とせば、簡単に破壊できるだろう。

 ……負けたくない。後悔もしたくない。
 ……よし、全力でいこう。

「ローゼリー、魔力を借りてもいいかしら」
『もちろんよメイリ。あんなヤツに絶対に負けたくないわ』

 最初にいちゃもんつけられた時から、契約妖精のローゼリーは怒っていた。だから私のお願いを快く了承してくれる。
 姿を消したまま私の肩に座り、小さな両手を肩について魔力を流し始める。


「スタート!」とギルマスが競技開始を告げた。

 私は安全策をとり、得意な魔法陣の詠唱を開始する。
 隣のエボデルは、自信があるのか私を見て鼻で笑うと、土魔法を使って拳大の大きさの土の塊を飛ばし始める。
 派手な……とまではいかないドスという音が隣の的から聞こえる。

 ……ダメよ! 落ち着いて集中よ!

 的の下に魔法陣が現れ、マサルーノお兄ちゃんが教えてくれた魔法陣が発動を開始する。
 自分の的にだけ意識を集中し、両手を的に向け魔力を全力で注ぎ込む。
 すると的のビッグベアーが、地面から突き出てきた氷の剣に貫かれ、足元からドシャーッと崩れていく。

 ……やった! 成功だわ。

「はあ?」と、納得できないのか見学席から変な声があがる。
「魔法陣だと?」と、この後で対戦する予定のエボデルの知人らしき在学生が、私の後ろで叫んだ。
「やったー!」と喜んでくれるのは、合格を決めているレフィルとユリーカね。


 自分の魔法陣が成功し、ほっと息を吐いて隣の的を見たら、ぜんぜん崩れてなかった。 
 飛ばしているのが石ではなく土の塊なので、的に食いこんではいるが破壊力は低く、飛ばしている塊も当たっているのは半分くらいに見える。

 エボデルは私が破壊した的を見て「クソがー!」と叫ぶと、がむしゃらに攻撃をしていく。
 でも2分後、審判をしていたノエルお姉さまが「そこまで!」と、試験終了を告げた。

「納得できない! この女はズルしたんだ。こんなガキが魔法陣を使えるはずがない」

「そうだ。この場に居る誰かが、魔法陣を発動させたに違いない!」

エボデルに続き、エボデルの知人学生まで私の前に来て、大声で異議を唱える。

「メイリさんの攻撃がどうであろうと、エボデルが時間内に的を半分以上破壊できなかった事実は変わらないわ。
 そんなに気に入らないなら、予定通りアナタがメイリさんと対戦してみればいいでしょう? 明日から停学処分を受けるベルギアスさん?」

黒く微笑みながら登場したミレーヌ様が、エボデルを呼び捨てにし、文句を言った在学生に私との対戦を勧め、再び煽っていく。
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