キャラ交換で大商人を目指します

番外編

番外編４ー１ 新しい商売（３）

　あれから実験を何度か繰り返した結果、ブラックドラゴンの幼体１頭で充填できるのは、変異種魔石４個なら１日、５個なら２日と判明した。
　ただし、充填後にブラックドラゴンの魔力が回復するには最低３日が必要だった。
　
　驚いたことに、ブラックドラゴンの魔力で充填した魔石は、古代魔術具を使用してコーチャー山脈の魔力を充填した魔石より、1.5倍の量の魔力が充填できた。
　カルタック教授が挑戦していた魔術具は見事に起動し、新しい温水魔術具を世に出す日も近いだろう。

　温水魔術具は、高級ホテルや浴場から依頼されて作った魔術具だった。
　これまで湯を沸かしていたのは、魔術師ギルドに所属する貴族の魔術師だったが、来年から派遣料を倍額にすると言われ、覇王学園に泣きついてきたのだ。

　……どういう経緯であっても、便利な魔術具が誕生するのは大歓迎だ。　　

　今週からは、個人の家に設置する温水魔術具の開発に全力を注いでいる。
　中級魔獣クラスの魔石でも起動できれば、絶対に爆売れするはずだと滅茶苦茶張り切っているから、体を壊さないよう寝泊まり厳禁を徹底させよう。

　
　因みに、グレードラゴンのカラ魔石を充填するには、１個でも２日必要だった。
　上級種の魔石なら１時間で大丈夫かと思ったら、ブラックドラゴンの魔力に耐えられなかったのか５分で魔石がバラバラになった。
　
　いろいろ試した結果、モンブラン商会で扱う上級種のカラ魔石の充填は、グレードラゴンで作ったマジックバッグに、役に立たないと思っていたブラックドラゴンの割れた魔石の欠片を入れるのが最良だと結論が出た。

　レイム領で黒焦げになったブラックドラゴンから取り出した魔石は、２センチから５センチくらいの大きさにバラバラに割れてたいたが、捨てなくて良かった。
　20個くらいに割れていたので、モンブラン商会の各支店で扱えるだろう。


　ブラックドラゴンの翼素材を片面だけ使用した専用マジックバッグを渡したセイガさんは、ぶつぶつ言いながらも先日から特別役員としてアエラボ商会【公共事業部】で勤務を始めてくれた。
　セイガさんは、主に王宮や領主からの依頼に対応してくれる。

　デルさんは、学園都市の公共施設を担当しているが、覇王学園から高価な魔術具を購入した隣国からの依頼も担当している。
　時々、勇者学園で冒険者育成にも協力してくれるので、悠々自適な田舎暮らしは・・・まだ暫く出来そうにない気がする。




　早いもので、いつの間にか冬期休暇が近付いてきた。
　変異種のカラ魔石に魔力を充填する【公共事業部】は、予想以上に順調だ。
　アエラボ商会は事業拡大に伴い、本店を中級地区に移動させ、これまでの建物はドバイン運送本部にした。

　上級種のカラ魔石に魔力を充填する部門を開設したモンブラン商会では、覇王軍第二部隊の任期を終えた魔法部卒業の元隊員が頑張っている。
　覇王学園が小型温水魔術具を売り出したせいで、会頭から忙し過ぎると苦情というか嬉しい悲鳴を聞かされた。

　モンブラン商会のカラ魔石充填の売上に対し、純利益の半分を復興税として10年間、領主に納めるよう覇王が命じたと正式発表され、各領主から礼状が届いた。
　冒険者ギルドで魔石の充填を頼む分には課税されないが、充填完了まで３週間以上待つことになる。
　
【公共事業部】には出資者がいないので、売上の３分の１は俺個人に入ってくる。
　その収入で先週、こちらでも家族が暮らせるよう中古の家を購入した。
　元は商家で、従業員用の小部屋もあり部屋数だけは多い。
　掃除が大変そうだから、贅沢だけどメイドさんも雇ってみた。

　……ようやく家族とゆっくり過ごせそうだ。